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ダブル・マック

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ここ最近、気温はそれほどでも無いのに、体感気温がとても冷たく、先日ついにダブル・マッキーノを出した。その下はワッフル素材の綿の長袖で、その下がアクリル。こうやって着ると静電気が随分と軽減される。
重い、と非実用的に言われるダブル・マッキーノだが、僕はそうは思わない。このままで山に登って倒木を引きずり降ろすこともある。
ウールだから呼吸してくれるので、下手な蓄熱素材のジャケットよりも暖まった体温を逃がしてくれる。それでも暑くなりすぎた時には、「まあ、ちょっと休めよ」とジャケットに言われている気になって、倒木に腰を下ろす。
すると、さっきまでは見えていなかった微細な動物の通いに気付く。それを双眼鏡で眺めているうちに、まわりに野鳥の混成群が群れていた。

下山したら、雪まみれのダブル・マックを工房に吊るし、ダルマストーブに新聞紙と乾いた小枝を入れる。そしてそれらがある程度燃えてきた頃に、被さる様に、外周に次の太さの枝を立てかけておく。
昔、まだラコタ族が居留地に入っていなかった頃、炎は出来るだけ煙を出さない様に焚かれた。僕も自分なりにそれを実践している。今ではほとんど煙突から煙を出さずに火を焚く事も出来る。
コツは、不完全燃焼をおこさせない事で、その為には火をつけるまでの最初の準備がとても大切だ。
特に、酸素の入り口、酸素の出口に気を使う。

さあ、今日も準備が出来た。ライター・シースに入れた100円ライター。いつも使っているから、とても良い味が出ている。市販の鹿革ではこういう雰囲気にはならない。僕の誇りだ。

ダルマストーブにかけたヤカンが沸き、それで入れたウバを呑み終える頃、湯気をあげていたマッキーノの袖口の泥が、もう、半ば乾いていた。


*写真のライター・シースは販売用のものです(通常のラインナップのものではなく、イタリアン・アンティーク・ビーズで制作した特別版です。詳しくはこちら)。











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by oglala-beads | 2012-02-11 22:05

遺伝子

毎朝カンジキを履いて山にあがり、雪を掘り返して薪を集める生活のお陰で、随分と身体が丈夫になってきたのを感じる。風邪をひきかけてもすぐに治るし、足腰が強く安定感がある。少し前まで抱えていた目眩やバランス感覚の欠如等もすっかり治ってしまった。
もともと僕は虚弱体質なので、人の倍無理をしないと人並みの事が出来ない。遺伝子的には劣悪のうちに入るだろう。
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今までうちの村では見た事もない、非常に大きなオスジカを見た。ところどころ吹きだまりのになった急斜面を避けようともせず、もの凄いパワーで直登して姿を消した。
雪崩の一番危険な状況だし、その山自体、雪崩の危険が村で一番大きい。でも、そういった事は分かっているのに、その鹿を単純に欲しいと思った。自分の命がかかっている事も分かっている積もりだが全く問題ではなかった。大人になってから、自分の命がこれほど軽かった瞬間は初めてだ。夕暮れが迫っていたのに、一晩中雪明かりの下で追う積もりで用意した。言い出すと聞かないことを知っているので、配偶者はぼんやりと僕を見ていた。そんなタイミングでめずらしく実家の母から電話がかかった。なんとなく水をさされた気になって、翌朝に追跡を開始することにして備えた。

夢の中で、ずっと冷静な自分が問いかけをしてきた。
今年必要な鹿はもう獲ったのに、更に必要なのか。
良い遺伝子を残すために、西洋では一番大きな鹿は獲らないというマナーがあるという、あれだけ大きな鹿はうちの村には少ない、残すべきではないのか。
こう追うと、こう逃げる、おそらく最終的にはここに逃げられる、もう既に地図無しでも頭に入っているうちの村の山を、冷静な自分が目の前に映し出す。わざと危険な箇所を命がけで逃げてゆく鹿の姿が見える。今の自分の技術と体力で追いきれるだろうか。
とどめになったのは、あんたは獲るために猟を始めたのか、という一言だった。獲りたいからじゃないだろう、皮が必要だから、お客さんに、どうやって死んだ鹿か説明出来る事を大切に思ったから、つまり、材料の死を、自分で引き受けてお客さんに安心して身に着けてもらうために始めた猟じゃないのか。どんなものでも獲りたいから獲るんじゃあ、自分が嫌うレジャー・ハンターじゃないか。

目覚まし時計が鳴る。「行くんか?」とコロがトイレについてくる。「いや、やめとくわ」。ストーブに火を入れて、暖まるまでと布団にもぐりこんだ。コロが枕元で顔にしがみついて溜め息をついた。

<追記>
入る予定だった尾根を今見て来たら、思いっきり雪崩れてました。竹や小さい杉桧は折れ曲がってました。








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by oglala-beads | 2012-02-10 13:55

雪崩

先月おろしたばかりの大きな革を、もう使い切ってしまった。
年間20頭あれば充分かと、今年は25頭分の皮を確保して安心していたが、もしかしたら足りないかもしれない。
そんな折り、夜に村に降りてきて摂食している、独り者の大きなメスが年末頃から出ていた。「いつか限界を越えたら驚かさそう」と放置していたが、予想出来ていたこととはいえ、ここ数日昼間でも人前に出る様になったので、いっそ獲る事にして、昨日山に入った。

前夜の足跡をつけると、他愛も無く発見出来た。ところが気付かれてしまい、腰以上に積もった雪の中、追いかけっこが始まる。
随分と追った時、鹿が袋小路になった沢に入った。しめた、吹きだまりで身動きがとれなくなるはず。
案の定、吹きだまりにジャンプして、そのまま腹這いになって隠れている鹿に5mまで接近して鉄砲を構えたが、2倍率のピストル・スコープの照準に重なった頸椎は、ここ数日何も食べていないのか、痩せ細った峰になってしまっている。
急に撃つ気が失せた。
鹿を安全な方向に追える様、谷の底に移動して下から鹿の足下めがけてスラッグを一発撃つ。
弾かれた様に飛んで逃げていった。
これで人の怖さを学習出来ただろう。
次に里に降りてきたときは、遠慮無く引き金を引かせてもらう。

再び尾根に上がり、もと来た足跡を辿って降りようとした時、谷を挟んだ隣の尾根が雪崩れた。おそらく鹿と僕とで斜面の下手に向かって派手に鬼ごっこをやったので、ストッパーが無くなったのだろう。ちょっとゾッとした。

下山して、雪崩のメカニズムについて勉強する必要があるな、と検索を始めた。同時に古書で安くなっている専門書を漁る。
結果的に、雪山の恐ろしさを、自分の事として認識することになった。今までも色々な本や言い伝えで雪崩の恐ろしさについては見聞きしていたはずだったが、所詮は活字上の知識であって、経験によって渇望されたものとは知識として入る場所が違うらしい。

ところで、うちの家はハザードマップの、雪崩警戒区域に入っている。それが、急傾斜の裏山ではなく、家の正面の、なだらか(とはいっても45度近い)な広い斜面から、道路をまたいで家まで雪が押し寄せる、ということになっている。
それがどうしても理解出来なかったのだが、インターネットで開示されている情報を読み進めていって、なるほど、と理解出来た。それは自分の、急傾斜は雪が少ない、という経験による知識とも合致した。

その上で考えるに、今日の屋根の雪下ろしは非常に危険だろうと思われた。山も、あちらこちらで小規模な雪崩の跡がある。
そんな中、急に村の雪かきの日役が入り、消防消火栓や、高齢者世帯の雪かきに回った。最後にお寺の小屋根の雪下ろしということになったのだが、何人かが止めるのも聞かず、数人が屋根に登って、見ている間に一人が4mほどの高さから落下した。

雪崩から身を守るには、ビーコン等各種装備を持って山に入る事等、色々と書かれてはいたが、単独猟の僕の場合、とれる選択肢は二つしか無いことが分かった。
一つは、雪崩の危険性の薄い場所のみにすること。
もう一つは、雪山に入らないこと、だ。
特に、僕は実際に毎回山に一緒に入って、獲り方では無く、山の怖さ、歩き方を教えてくれる師匠が居ない。毎回、動物の跡を追う事で歩きやすい場所を学習してるので、動物が僕の師匠ではある。
そんな僕が、不用意に雪山に入る事など、自惚れ以外の何ものでもない。
幸い、もともと、雪が降ってからの皮は薄くなってしまって使えないので、猟は雪が降るまで、と決めていた。
徐々に勉強していって、安全に雪山を歩ける様になるまでは、決して危険な場所に近づかない事を誓った。



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by oglala-beads | 2012-02-04 17:56

大雪

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こっちに来てから一番沢山、雪が積もった。場所によっては僕の背丈を越えている。山を背にした東向きは、二階に雪が届いている。一階の窓は完全に塞がってしまった。これだけ積もったら、屋根から落ちても、窒息が心配だけど、怪我することはまず無いだろう。

雪国に住むのが夢だったから、どこか喜んでいるところもあるのだけど、家が古く、材も傷んでいるから怖くもある。隣近所は「岡居さんとこは昔の作りだで、丈夫だぁ」と、何もせんでええと言ってくれるのだけど、心配で庇だけでも雪を降ろしたり、雪に埋もれた一階を掘り出したりと、なんだかんだで一日雪に振り回された。

腰が強い僕も、何だか重い感じがする。そのせいか、公衆浴場嫌いな僕も、ちょっと温泉が恋しい。


数日前に、新店舗用の商品を徹夜で作って、2日休みをとった。その間に山仕事をしたり、久々に鉄砲をもって山に入ろうかと思ったのだが、大雪で結局、雪かき以外何も出来なかった。朝からウィスキーのお湯割りを呑みながらコタツでCSの映画を観て、除雪車が来たらスコップを持って外に出る、という一日の過ごし方は、僕はとても好きだ。普段だと配偶者はチョコチョコ動き回っているし、僕も家族サービスを考えるのだけど、天候がこうだと、動きが制限されてくれるので僕はとても有り難い。
山にしたって、入りたいから入るのでは無く、こういう時の各群れの居場所や、脱落しそうな個体が居ないかの確認であって、個人的には家族みんなで布団で寝ながら本を読んでいる時が一番幸せだ。本来僕は活動的では無い。


一ヶ月かけて、鏡に向かって射撃の新しい姿勢を作り上げた。途中何度も最初からやり直したりして、結果的に外から見れば、どこが変わったの?という感じなのだけど、内的(筋肉と関節と、バランスの状態)にみれば大きく変わった。
的に対する脚の向きと幅を決めたら目を閉じて、足の裏、腰の落とし、捻り、膝、骨盤への肘の乗る位置、肩、左手に載る鉄砲の位置、右肩に当たる鉄砲の尻、背中の反り、前腕の角度、アゴ骨に当たるストックの位置、等々を感覚で確認していって、目を開いたら、常に鏡の上についている的のセンターに、ピッタリと照準が来ている様になった。

今日からメニューを変更して、窓の外、約70m強の位置に貼った的紙の黒点部分、直径9.5cmの円から約一分間、照準が逸れない様に構えるというものにした。
自分で考えた課題なのだけど、これをやるにあたって、ともかく筋肉によってコントロールするのではなく、骨によって安定した土台を作り、できるだけ関節を動かさない様にするのみに筋肉を使う様にしなければならないので、その状態を一分間というのは、実際にやってみると、これは内面的な自己鍛錬に他ならないと感じた。
照準が揺れる原因の一番大きなのは呼吸で、次が筋肉の緊張、バランスの崩れ、鼓動と続く様に思うのだけど、それらは体調や普段の運動や生活習慣が非常に大きく反映され、例えば飲酒した後にそういった練習をしてしまうと(実際には酒が入ると練習しない)バランスの崩れを筋肉で補おうとした分、身体がそれを覚えてしまい、その時は上手くいっても、次の日から徐々に崩れていく。
心の乱れ、イライラやストレスや時間的制約等が非常に大きく影響する。
でも、そういったものを淘汰させるのは非常に難しい訳で、それならば、それに打ち克つ精神力が必要になってくる。
禅の様で、武道の様でもある。
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by oglala-beads | 2012-02-02 22:02