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高知ワークショップ

10月25日(土曜日)、高知へインディアンビーズの基礎技術の講習会の講師として行く。

去年の11月、群馬での初猟に行く資金が乏しかったので、東京でビーズワークのワークショップを企画した。その際、思った以上に反響が大きく、関東のみならず、日本各地から問い合わせがあった。その時に関西地区の方に他地区での開催を約束したので、それを守るため、半年に一回ワークショップを企画することにした。

第二回は関西。しかしこれは参加人数が規程に満たず、中止。
それでもうやる気は無くなっていたのだけど、高知での取引先、WHOLさんのオーナー、岡林さんの熱心な招致を受け、WHOLさん主催ということで高知にて開催することになった。
これでまあ約束は守れたと思うし、仕事も抜本的に見直していったお陰か、ワークショップに時間を割ける状況では無くなって来た。なので取引先の社員への研修等のワークショップを除いて、個人で参加可能なものは今回で終了。今後の予定はありません。

去年、その第一回のワークショップ寸前の2007年11月の日記に「ワークショップに臨んで」という決意表明の様な日記があったのだけど、そこには、

”ワークショップをやることで、「正しいインディアンビーズを作るもの」の育成をしようと思う。
ようやく発芽したインディアンビーズの芽が、インディアン達の文化の搾取になってしまわない様に。
ネイティブ系=インディアンという間違った解釈を打ち破るために。
ここから、本当のインディアン達が製作したものへ興味を持ってもらえる様に。”

と書かれていた。

だが、今回のワークショップに臨んでは、肩の力が抜けていたのか、そういう意気込みの様なものがまったく無かった。
東京でのワークショップの際は、意気込みにも係らず、実際のところは目標とするところについてはあまり触れられなかったと思う。しかし、参加者からは「あまりいい加減な意識でつくれるものでは無いと思いました」という声が後で寄せられた。また、その際の打ち上げ会の参加者達は現在でも時々会って、親交を深めて自分の制作に役立てていると報告を受けている。
この事から、あまり声を枯らして目標の様なものを連呼するよりは、自然にただやるだけで何か通じるものがあるんだ、と気付かされた。
だから今回の高知も終わった後で「いやあ、やっぱり岡居さんに任せます」という感想が多かったのは欲得を超えて嬉しかった。


ワークショップは、インディアンビーズの基礎技術を一日で習得してもらおうというもの。当然当日で一気に詰め込むのは無理なので、事前に僕が制作した教科書を見て、家で予習をしておいてもらう。授業では、言葉で伝わりにくい部分を、僕が実際に作業するのを見て頂いて、次に各自席に戻ってやってもらう。それを僕が巡回して見てゆくというもの。
もちろん最初は出来なくて当然。テキストで出来る様になるなら、ワークショップは必要無いから。
今回の参加者達も、テキストだけで完璧に出来た人は居なかったけど、実際に見て頂いて、各自のトラブルに対して、ちょっとしたコツやアドバイス、勘違いを指摘してあげただけで、全員が基礎技術を身につける事が出来た。
二回目ということで時間配分も良く、和やかにすすめることが出来て余裕があった。そういう意味ではワークショップが今回で終了というのも寂しい気はする。

遠方から来て下さった参加者もいらしたが、皆に喜んで帰宅の途についてもらえたようで、何より嬉しかった。


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h101508は一回目のグレイニングを終了。現在漬け込み中。
今週はこれと同時に先年、群馬県水上町で僕も参加した猟で獲れた大鹿を乾燥させていたものの戻しも開始。さらにもう一頭も戻した。

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現在、大阪の新店舗、NUUさんの初回納品分の制作中。
今週中頃終了予定。その後、FUNNY新店舗、「阪急西宮ガーデンズ店(仮称)」オリジナル商品の制作。
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by oglala-beads | 2008-10-26 19:31

The Buck

Buckとは牡鹿のことです。
先週書いた猟隊の解体場兼犬小屋に行った際、大小二頭の鹿の皮をもらって帰って来た。
一頭は僕が行く数日前に交通事故で死んだ牝をとっておいてくれたもの。これは前回工程表に少し書いたh100808。冷凍してあったので、マダニも少なく、今週ドレッシング(鞣し液ー脳漿又は全卵ーへの漬け込み)も終了して、なんとソフトニングも一回で終わらせた。今日この雑記を書いた後、軽石で表面を擦って、後はまたいつかスモークをかけて終了である。

このスモークが問題なんです。工房は住宅密集地の一軒家なので、煙を出せないでしょう。なのでスモークチップのブロック状のでやるのだけど、大体一頭で4本使うので、一本のスモーク材が400円弱として、1600円かかります。安いといえば安い。でもね、数こなすと結構な出費なんです。これが目下の頭痛の種。これを解決したいがために引っ越しを考えている様なものです。今、ちょっと考えているのが、農家が収穫後にモミガラを肥料として使う為に焼くんですが、その際のエントツに革を着けさせてもらえないか・・・。先だって稲刈りを手伝いに行った際に燃やしてたのを見て、理想的な煙の量と匂いと煙突の太さだったので頼みたかったのだけど、よう言わず。籾殻スモークなんて日本っぽくて良いでしょう。

スモーク材に関しては地域性が出ますね。日本は昔から桜でのスモークが多かった様です。僕もナラ系か桜のどちらかを使っています。桜は匂いが強いので、ソフトニングやドレッシングで匂いが出てしまった革に使うと効果的。ナラは色の出が強いのでこちらが僕はメイン。
アメリカでも地域によって使われていた木材は様々で、ラコタ族を含む大草原地域の部族でも力が強かった部族は松で濃い目に。勢力が弱かったり、松の植生から離れて暮らしていた部族はセージで薄い色に仕上げていた様に思います。
これは何かの本に書かれていたのではなく、僕個人の考察なので、この話を何かに使う人は裏付けを自分でとって下さい。

だいぶ脱線しましたね。本当はスモークの話なんぞを書くつもりは無かったのですが。
脱線ついでに書くと、スモークした後の灰も鞣しに使えるんです。強アルカリである灰を使って脱毛を促進させたり、グレインを剥がれやすくしたりといった作業に使います。またまた脱線しますが、それを元にして、現在では水酸化ナトリウムや水酸化カリウムだったかカルシウムだったかの劇薬が使われている訳です。
このテクニックは木の種類によってやり方が変わります。木には「硬い木」と「柔らかい木」があり、それによってテクニックが若干変わります。また灰を使わないテクニックもあります。
灰を使わないテクニックは一番しんどく、体力にものを言わせた正面突破の様な感じですが、実はラコタも僕もそのやり方なのです。違うのは、ラコタの中でも松を使えた部族は灰を使ったテクニックもやっていたと思うし、煙の量が多いので色の濃い革が多かったはず。一方でセージで燻製をしていた部族は煙の量が少なく色づきも悪かったはずだし、灰を使ったテクニックは使っていなかったはず・・・灰を使った革は腰が無くてゴムみたいにフニャフニャで灰を使わないものは腰があって傷だらけのものが多い・・・

なんだか話がゴチャゴチャしてきましたが、要はブレインタンはその部族の環境によって性質がすごく変わるということ。だから日本のアーバン・アボ族の僕の革も、僕の環境で大きく変わるもの。先に言った様に、モミガラを使うのなら協力してくれる農家との付き合いが欠かせません。そんな風に、環境のみならず、要は自分がどんな生き方をしているか、というのがブレインタンにはハッキリと現れるんです。面白いでしょう。


スモークの話で脱線しまくりましたが、その猟隊の犬小屋に行った際、ちょうどその朝に獲れたという大きな牡鹿の解体を手伝いました。で、その革が前回の日記の行程に載せた未ナンバリングの皮。
ともかく毛穴と同じ数に近いマダニが生きてうごめいている皮で、塩をパラパラとかけて様子を見ていると、塩から逃れようと、毛の間から無数のダニがゴソゴソと這い出して来る。

え?そりゃあ、僕だって気持ち悪いですよ。逃げ出したいですよ。ダニっていう名前からして小さいものだと思っている人も多いかと思うけど、とんでもない。小さい物でも1ミリ以上あるし、大きいものは親指の爪よりでかいです。それが小さな手足をゴソゴソ動かしている様は寒気しますよ。
マダニは沢山の病気を仲介します。アメリカではマダニの事を「ライム」って呼ぶくらいにライム病が恐れられているし、日本でも先日タツさんが「ヒロさん、テレビでダニの病気のことやってるけど、怖いんだね!何人も死んでいるらしいね!気をつけてね!俺も気をつけよう!」ってメールくれました。これ、日本赤斑症の事ですね。
でも、僕が逃げ出したところで、自分でやらないだけで、誰かにそれを依頼することになるだけ。そうやって汚い事が嫌で人に全部任せて、綺麗事ですませている自分が嫌で始めた鞣しなんだから、逃げ出す訳にはいかんでしょう。
ということでダニに関しては最大の防御努力をしていますし、恐れている場合でも無いのです。今では素手で捕まえて握り潰す程の勢いです。

さて、数千匹どころか、数万匹居たダニ。前回書いた様に、一匹たりとも生かして手元から出す訳にはいかない。そこで密閉容器の中に皮ごと塩漬けにした。4〜5日そのままにしておいて、表面のダニが死んでいるのを確認して、大きなタライに移して水を張る。つまり強食塩水が出来上がる。さらにこの強食塩水に2日程漬けて、その間に生きているダニが居ないかを確認。結果的に全滅に成功。一頭の鹿の革を使う為にケタ外れの大量殺戮をしてしまった。いや、綺麗事は言うまい。死んだダニは下水道へ。

ダニが落ちたところで、フレッシングにかかる。つまり皮についている肉や脂肪を削ぎ落とす。

それが終わって、やっと、この皮の大きさを計る。内心「まあ、大きいとは言っても、暖かい姫路で獲れた鹿だし、丹波や和田山、群馬に比べたら小さいだろう。120センチもあったら良い方か」と思いながらメジャーをあててみてビックリ。なんと140センチあった。しかもトリミングしたので、今までの鹿よりも計測範囲が狭いのに!(通常、僕の計測は頭のすぐ下の首から尻尾の付け根まで。この鹿は肩に近い首から先を僕がトリミングしたので通常の皮より小さい)
今までの最高記録は群馬の128センチ。兵庫県の鹿に限定すれば、124が最高だった。それが140センチ!通常のトリミング前の状態なら150いっていただろう。

すごい大きい!まさにThe Buckだ。駆除した40年以上の猟歴のNさんも「いや、この辺りでは始めてみたわ。」と言っていた。

この牡鹿の頭部だが、これもまた非常に立派な角だった。この猟隊は猟収入を犬の世話代にあてているから、それなりの金額がつきそうだけど、滅多に無い立派なスケルトンになると思うので、興味ある人は、他の買い手がつく前に、連絡下さい。話をつけます。

このThe Buckのナンバーはh101508。現在水に漬け込み中。

それにしても、僕は鹿専門ハンターだし、「岡居は男だ!」ってんでThe Buckなんて呼ばれる様にならないかな・・・そんなあだ名がつく様になったら嬉しいなと思ってる。
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by oglala-beads | 2008-10-19 10:50

猟犬

僕が目標にしているのは団体での猟である巻き狩りではなく、一人で山に入る忍び猟。
何故かというと、出来たら鹿以外は獲りたくないから。団体で入ると、そうも言ってられない。
タツメに入れば、勢子が追い出した獲物は撃たなければならない。
もちろん、今後考えは変わるかもしれないし、今は鹿が必要だから鹿以外を獲りたくないけど、後々猪なんかが必要になれば獲ると思う。さらに駆除となるとまた話も変わって来るだろう。
実はもう一つ理由があって、それは猟犬。今季は多分2〜3の猟隊にお世話になると思うのだけど(兵庫県は猟人口が日本一多いらしく、最初からの単独猟は安全面や縄張り等の面で難しい)、先日、そのうちの一つの猟隊の犬を見に行って、正直なところ、すごく引いてしまった。その猟隊のメンバーはすごく良い人達で、昨日(土曜日)も僕がつく予定の勢子の若者が工房に来て、誰が何と言ってもスラッグ以外使わない、等、意気投合した。
また、その猟隊のフィールドは僕の現住所から近く、また山小屋を持っているので、その気になれば猟期の間、山小屋に泊まらせてもらうことも可能だ。
しかしどうも、そこの犬達が苦手で・・・。噛ませ犬なのだろう、初対面の僕に吠えかかるのは分かるんだけど、同時に喉元に向かって飛びついて来る。目が違う。犬というよりも猛獣だ。血に飢えさせている道具という印象だった。山に入ればまた変わるらしい。制御出来るか出来ないかの問題ではなく、そういった犬の使い方に対する善悪とかでもない。その証拠にそこの犬達と人間との絶対の信頼関係は常に寝起きを共にしている愛玩犬よりも強いかもしれない。単に、自分がどうこの犬達と接すれば良いのか分からないのだ。この猟隊に入るという事はこの犬達の世話も時間を見付けてしに来ることになる。
他の猟隊に関しては、一つは地元猟友会だが、他の二つに比べて積極的に話を聞かせてくれるということがないので分からない。もう一つは親しくさせて頂いている方の猟隊で、その方が飼っている犬を使う。この犬達はまだ感覚が「犬」に近く、一緒に山に入るイメージが湧いて違和感が無い。

思えば、自分は狩りの世界にまだ映画「ダンス・ウィズ・ウルブス」でのバッファロー狩りの様な牧歌的な想いをひきづっていたのかもしれない。命のやり取りをやわらかいオブラートに包んで、今流行りの「生きる事について、死について、他の生き物の命を奪う事について」といった自己満足な思想に浸っていただけなのかもしれないと、犬達を見ていて思った。自分の入って行く世界の真の姿を犬達に見せつけられて、かなりショックだったが今では回復して覚悟が出来ている。

いや、言い方を変えよう。あの犬達の姿は、そのまま、これからの自分の姿なのだ。
昔のラコタの、死をも恐れない戦士達の姿は、あの犬達と同じものだっただろう。
昔、ラコタには、仲間内からも恐れ敬われていたBlack war bonnet集団というのがあったという。そのまま、あの犬達と姿が重なった。

ところで、今季のTシャツのバックプリントでもお馴染みの、円形に配列された羽根の模様。あれ(すべてのあの図形がそうではないが)はそのBlack war bonnet集団のトレードマークです。それを身につけることはその覚悟のあらわれでもあります。
そういう意思で身につけるか、ファッションかは、現代ではまったく自由ですが。

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毛皮にする予定だったh030908fが失敗し、革に。グレイニングを終えて現在ドレッシング中。「革にするには無理があるなあ」と見込んだ通り、グレイン(ギン)を剥がすと穴だらけになった。膝掛けにでもしようか。

新たに二枚革を仕入れた。二枚とも、その猟隊が駆除でとった鹿だ。
一頭はナンバリングがh100808。もう一頭は未ナンバリング。こちらは丁度訪ねた朝に獲れた鹿で、解体も手伝った。プロの解体師による解体で、まさに魔法の様な信じられない速度で、あっという間に精肉されて、しかも皮にも肉にも傷一つ無くて驚いた。

それは良かったのだが、未ナンバリングの方は軽く塩を振ってもらってビニールに入れて持って帰ったのだが、数千匹と居た巨大なマダニはやはり中途半端に振りかけただけの塩では死なず、ほとんどが生きていた。いつもの様に冷凍で貰うとすべて死んでいるのだが、あいにくうちにはまだ大型冷凍庫が無く、仕方無いので塩を毛皮の上に数センチ盛り上げて容器の中に放り込んでおいた。今で3日ほど経つが、さすがに全部のダニが死んだ様だ。
生きたまま排水溝に流してしまうと、そこを通路にしている野良猫に移って運んでしまうし、作業場である庭先に落とせばコロに移る可能性が高い。また、下水に流すと、ネズミがダニを運ぶかもしれないと想像されるので、まさに正確に全滅させる必要があるので必死だ。

あと、塩の使い方は本当に難しいんだな、と実感した。その猟隊は中途半端に誰かから「塩をかけるといい」と聞きかじっていた様で、一応鞣し用の塩を仕入れてパラパラと振りかけていたのだけど、かけかたが「これだけの量をかけている」とはいうものの、鞣しの保存には全く足りない量だった。本来は、肉面に2センチ弱盛り上げて皮全体を埋め尽くす程の量が必要だ。それに比べると本当にパラパラ程度で、結果的に肉が皮にこびりついてしまって、ちゃんと戻したのにフレッシングが難儀だった。
また、どうも塩が多くかかっていた所はタンパク質が変容するのだろう、脱毛がひどく早かった。一方では毛皮の毛穴を引き締めるのにも塩を使うので、これはドライにするかウェットにするかということだと思う。まさにそう、ビニールに入れていたのでウェットだったのだ。
今回、毛皮用の皮が失敗したのは、おそらく塩の扱いに失敗してタンパク質を変容させてしまったからだろうと、今回の新しい皮の結果から考察出来た。毛皮にはドライソルト技法という事だろう。

h100808・・・なんともうグレイニング完了。塩の影響か。それを思うと塩をかけるのも良いかもしれない(笑)。現在ドレッシング中。
未ナンバリング・・・ウェットソルトでダニを駆除中。これもグレイニングが容易になるか楽しみだ。
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by oglala-beads | 2008-10-12 10:15

アンティーク・ヴェネチアン・ポーチ


本日、作業日誌にデッドストックのアンティーク・イタリアン(ヴェネチアン)ビーズで作った、新作ポーチを掲載しました。これはいわゆる一点物扱いの商品であり、追加生産等には応じられません。OGLALA-WEB上での販売ですが、卸にも対応しております。今後、時間を見付けて、こういった作品制作を増やしていきたいです。
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写真では白が綺麗に出過ぎて、チェコとの違いが伝わらないかな?出来れば工房で、手に取って購入して欲しいです。

このポーチを作った最初のきっかけは、数年前にアメリカの企業からイタリアン・グラス・ビーズのデッドストックの年代物の引き合いが来た事でした。アンティークのイタリアンはストックしているビーズ屋もアメリカには数件ありますが、過去のインディアン達のクラフトをほどいて販売しているものが多く、僕は伝統文化の保護的観点からあまりそういったものには手を出さずにいました。
恐らく二度と無いチャンスに、資金が無かったにも関わらず、結構な量を仕入れました。それ以来、イタリアンで無いと駄目、といえる商品に何度も挑戦して来ました。しかしながら、その度に上手くいかずに作ってはほどく、の繰り返しでした。
どうしてもビーズに使われてしまって、「これだったら現代物のチェコで良かったんでないか?」というものしか出来ませんでした。
以来、「いつか・・・」と思いながらもアンティーク・イタリアンという必然性が出ている作品を生み出す事が出来ず、仕舞い込んだ状態でした。

「アンティーク・イタリアンである必然性」の基準は、各作者によって違います。インディアンや白人等の、ある程度以上の腕を持った作家でアンティーク・イタリアンを使う人達にも、その解釈は色々あります。
恐らく、僕の基準は彼らの中でも最も厳しいものではないか、と思います。

1、他のビーズを使っても同じ雰囲気になるものは不可。
2、アンティーク調になってしまうものは不可。
3、アンティーク・イタリアン(ヴェネチアン)独自の色の世界観を出す。

この3つです。
実際にやってみると分かりますが、これは三つとも、とても難しいことです。1と3はほぼ近い意味の様ですが、これも実際にやってみると別の事項であることが分かります。また、2ですが、実際にアンティーク調にするのも、技量が無いと難しいのですが、そういったレプリカを作る事には個人的に価値を感じないので、むしろオリジナルが作られた当時の姿に近いものを作るというのを大切な基準に据えた訳です。

使いたいけど、使えないという状況を打破した一つのきっかけが、FUNNYのIMP店の担当者用に作ったモカシンでした。リクエストとして「チェコの白は綺麗すぎる。もっと汚い白がベースで、ラコタの伝統柄バリバリのものが欲しい」というものでした。そこで深く考える事をせずに、ラコタの意匠をそのままに取り込んで制作したところ、割合上手くいき、なんとなく感じるところがありました。
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次に、担当者のそのモカシンを見たIMPのお客様から「同じものを」というリクエストが入り、全く同じものを制作しました。ところがなかなか上手くいかず、相当な苦労をしました。何故苦労したのか、何故上手くいかなかったのかを考えていくうちに、なんとなくイタリアンとチェコの違い、いや、むしろ個々の違いではなく、使う上での作者側の都合での違いが分かってきました。

それは簡単に言うと、チェコはチェコの使い方があり、ヴェネチアンにはヴェネチアンの使い方があるので、どちから一方の技法やノウハウは、もう一方には通じない、という事でした。

分かりやすく例を挙げると、例えばチェコビーズでポーチを制作する場合、大きさに応じて革自体にグラフの様に縦線と横線をチャコペンで入れて、その升目通りに決まった数のビーズを入れていきます。もちろんチェコビーズにも色によってもロットによっても大きさや形にばらつきがあるので、升目と個数はあくまでガイドラインであり、実際のところは一定していません。しかし、まあ、大体の基準としてこの升目はチェコの場合大切です。
ヴェネチアンの場合、この升目がまったく意味を成しません。あらかじめ個数を計算して模様が、どれ位の大きさのものを入れたら良いかということを、チェコの様には計算出来ないのです。それをやろうと思ったら、一回試しにビーズをやってみて、大体の検討をつけた後、やったビーズをほどいてもう一度やり直す、といった作業が必要でした。
しかもその作業は、全く同じ物を作るということであっても、一つ毎にやらなければ駄目でした。

そういった意味で、二度目のモカシンが上手くいかなかったわけです。
また、「一点物」でなければならない必然性も分かって頂けると思います。

さらに、こういった違いが分かった上で考えると、歴史的に見ても第二ビーズ・ピリオド(居留地生活が始まってから現代まで)以降、柄が複雑化していった理由の一つに、それまではヴェネチアン主体だったビーズにチェコが入って来た事もあったことが分かります。もちろん、第二ビーズ・ピリオドは居留地入りして以降であり、制作に時間を取れる様になったことや、対外的に販売する様になって、市場のリクエストに応えていったこと、またトレードで入って来たコーカサス・ラグの影響も通説通り大きいと思いますが、チェコビーズ以降、制作のスタイルが全く変わって、通常女が作る物だった幾何学模様を男が作り出した事も納得出来ます。

上は一つの例であり、その他にも僕が「ヴェネチアンの必然性」に掲げた各項目をクリアするためには、本当に色々なヴェネチアン独自のノウハウが必要でした。そのすべてを会得した訳ではないので、今後も本当に苦労が予想されます。しかし、作りたい物は沢山あるので、今後も適時、ヴェネチアンの商品を発表してゆきたいと思います。


このポーチですが、10月7日(火曜日)からOGLALA-WEBで販売を開始したいと思います。
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by oglala-beads | 2008-10-05 14:41 | 仕事関連