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ドイツ系

群馬の鹿を漬け込み始めてから、20日が過ぎた。土曜日にグレイニングをしてみたのだが、まだまだ。首界隈はびくともしない。かなり頭よりで皮を切ったので、多少はトリミングをするとして、また前回編み出したナイフ・グレイニングをやるとしても、ともかく毛が落ちてくれない事にはどうにもならない。
これは水上の鹿が特別やりにくいと言う訳では無く、12月15日に始めた丹波の鹿が同じペースで進んでいるので、単に水温の問題と、この時期の鹿の毛根の深さの問題だ。
配偶者の鹿のみ、睨んだ通りに早く漬かりきろうとしている。

群馬の鹿と丹波の鹿には、そう大きな違いは見受けられない。同時期の鹿同士で比較すると、厚さも毛の色も同じ位だ。大きさは、特に横幅が群馬の方が相当大きいのだが、これは多分ベルクマンの法則によるものだろう。
ところが、ひとつだけ群馬の鹿には、僕が今まで経験した事の無いものがあった。それは身体の数カ所についている傷だ。長さは大体5センチより上。かなりの切り傷だ。首と腕と尻にあった。これは今まで、丹波の鹿には見た事の無かったものだ。アメリカの鹿には、クーガーやグリズリー(?)等につけられた引っ掻き傷があるのをよく見る。ただ、今回の傷はそれとは明らかに違う。動物に襲われてついた傷は、数本のラインであるのに対して、一本のラインで、しかもちょっと深いのか、鈍い刃物の傷の様に幅も広い。恐らく、雄同士の闘いによって、角で傷つけられたものではなかろうか。この鹿は撃った小野さんによれば、ハーレムの中の最大の雄だったそうだ。
ただ一つ不思議なのは、そういった傷は鹿の絶対数が多い丹波でもあっても良いと思われるのに、丹波の鹿では見た事がないのだ。
この傷は一体何なのだろう。

ところで、今回の鹿は、柳川瀬さんが「非常に大きい鹿です。最大です」と仰っていただけあって、本当に群馬のものと見間違う程の大きさだ。しかも毛の感じが他と違って群馬のものと同じ色とたてがみの長さがある。
タツさんや水上の猟師さんは、こういった色が黒くて巨体を持つ鹿を「ドイツ系」と呼んで通常の鹿と区別している。見た目だけでなく、肉の味や匂い、解体した感じも違うそうだ。
だとしたら、この丹波の鹿もドイツ系なのだろうか。
昔、西洋のハンターが猟のため、ヨーロッパのアカジカを輸入して東京界隈で放したと聞く。それが交雑していったものがドイツ系だろうと思うのだが、もしかしたら、その交雑種が丹波にまでも来ているのだろうか。
僕自身、淡路島、紀伊半島で異常に真っ黒で巨大な鹿を何度か目撃している。神々しい程の存在だ。
あれは一体、どういった種類なのだろう。
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by oglala-beads | 2007-12-30 17:51 | 革なめし関連

冬の楽しみ

灯油が随分と値上がりしたが、工房では灯油ストーブも時々使用する。もっと田舎に越したら薪ストーブを使おうと思うのだが、それでも灯油ストーブ特有の暖かさというものもある。
工房で使用している灯油ストーブは、パーフェクション750デラックスと、アラジン 39型ブルーフレームヒーター。パーフェクションはもらいものだし、アラジンは実家で昔から使っていたものだが、いずれも現在ではプレミアがついて結構高い値段で取引されている様だ。
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さて、寒くなって灯油ストーブを使う様になったら、是非やりたいと思っていた事が幾つかあった。一つは熊の脂の抽出。一つはニカワの製作。
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ニカワの製作は数日前に試しでやってみた。鞣しの際にどうしても使えない部分の革を切り取って置いておいたものを、鍋でひたすら煮るのだ。沸騰しない程度の温度が良いので、灯油ストーブの上で鍋で煮るのが丁度良い。残念ながら今回はどのぐらいのタイミングで引き上げたら良いかが分からずに早めに固めにかかってしまったので、作業自体は失敗だったのだが、それでも接着力の高いニカワが出来た。失敗とはいえ、染料を作るには良い位だと思われる。早速、現在製作中の「ライターシース、僕のワガママバージョン」に使った。
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・・・・・・

製品ラインナップにあるライターシースは100円ライターのケースで、最初は「誰が100円ライターのケースに1万円も出す?」という声もあったのだが、実際には今のOGLALAの美味しさが一杯に詰まった商品で、ブログ等を通じて直接お客さんを魅了した様で、今では一番お客さんからのオーダーの多い商品だ。
そんな自信作なのだが、実はコスト等を考えて導入しなかったテクニックや材料などもあった。それを、本当に僕自身の自己満足のために(笑)、全てを投入して作っているのが、このワガママバージョンだ。

正直、売れなくていい。本当言うと、手元に置いておきたい。

使用ビーズは12号の1800年台末期のアンティーク・ヴェネチアン。革は勿論僕が鞣したもの。内張りとなるローハイドも僕が作ったものだ。その2枚の革の貼り合わせに使ったのが、同じ革で作ったニカワなのだ。
本当は糸も鹿の腱を使いたかったのだが、実際の強度を考えると腱が使えるのは10号位の大きさのビーズまでで、12号ぐらいの小ささになるとNYMO(ビーズ専用のナイロン糸)の方が強いので見送った。

このライターケースは途中まで完成していて現在熟成中なのだけど、実際にやってみて思ったのは、「別にアンティークのヴェネチアンにこだわる必要は、僕は感じないな。チェコで充分じゃないかな?」ってこと。確かにアンティークヴェネチアンにしか無い色の深みはあるのだけど、それは単色で見た時であって、組み合わせによって、全体で見た時に深みを出す事は出来る。要は、組み合わせる感受性の無い人ほど、アンティークヴェネを有り難がる・・・・と、思うのだけど、それを分かった上で、使いたかったのだ。
本当に自己満足の極みのライターケースだ。価格も3万〜5万ほどはするだろう。

・・・・・・

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さて、もう一方の熊の脂の抽出は、先日台所で初めてやってみたところ、タツさんの指導もあって大成功だった。灯油ストーブでも出来そうだったので、昨日、工房でアラジンの火でやってみた。
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熊の脂は、傷や火傷等に非常に良く効く万能薬で、実際に僕も刃物のケガで二回お世話になったが、いずれも跡形も残らずに完治したし、その治りも早く特に何もしなかったが膿む事も無く経過は良好だった。
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また、クリームとして美容に非常に良いらしく、30cc入りで数千円と非常に高価なのだが(実際取れる量は僅かなので大変に貴重)デパートの特産品展などでは銀座や新地のママ達が我先にと買って行くと聞く。
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今回も大成功だったのだが、困った事に換気扇の無い工房に熊脂の匂いが充満してしまった。
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熊脂の匂いに興奮したのか、コロの鼻息が妙に荒い。

「今日、熊鍋しようか」。

で、夜は熊鍋をした。前回、自分でやったときは大失敗だった。その後、タツさんの作った熊鍋を食べ、水上で他の猟師さんが作ったのも食べて、今回は上手く作れる自信があった。要は肉を小さく切る事だったのだ。肉の量自体も、野生肉なのだから旨味の出る量が家畜肉に較べて多いので、普通の鍋と同じ基準で考えてはいけなかったのだ。そりゃあ、今まで見た事も食べた事も無かったのだから、仕方ないよね。

今回は非常に上手く出来た。本当に美味しかった!やり方は前回タツさんに聞いていた通りで、前回も同じやり方をしたのだけど、こうも違うか!とろける様な脂!髪の先まで暖まるのが分かる。味噌はタツさんが作った特製の達也味噌。これがすべてかも。で、最後にオジヤを作って、その上に南高梅干をのせた。これが異常に合う!素晴らしい!とても良い夜だった。

ところで、熊鍋は子づくりに良いそうで、タツさんの宿にも子宝に恵まれる様に来られる方もいらっしゃるそうで、実際に何年も出来なかった人が授かったりもしているらしい。
そのせいなのか、熊肉を少し食べたコロも、ダッチワイフ(抱き枕)を抱えて激しく腰を振っていた。

あやかりたいものだ。

ところで、熊の肉には合う人と合わない人がいるみたいで、宿によっては妊娠中や若い女性には出さないところもあるそうだ。鹿は喜んで食べるコロも、前までは絶対に熊は食べなかったのだけど、今回は食べていたのだが、途中で吐いていた。もう一度食べていたが。
僕は、もしかしたら合わないのかもしれなくて、熊を食べた後は風邪とまったく同じ症状が出る。実際に熱が出る。そういえば水上での三日目に熱を出したが、その前の夜に熊鍋を食べている。
そして、これは関係無いのだろうけど、僕の場合、何故か熊を食べるとものすごく神妙な気分になる。あまりふざけた話をしながら食べる気にはなかなかならない。最初は「美味い美味い」と上機嫌で酒も呑んで大笑いなのだが、次第に酒の量も落ちる。
おおげさかもしれないけど、本当に、神様が身体の中に入って、自分の肉となっていく様な、そんな感覚なのだ。

配偶者はというと、指の先まで真っ赤っかになって、「ビール最高!」とか言ってたし、寝る前は喉が渇くとしきりに水分をとっていたので、やはり実際に体温が上がるのだろう。

というところからして、熊鍋が子宝を招くというのは嘘では無い様だ。僕は男性側の精力とかの事情だと思っていたのだけど、そうではなくて、女性側が受胎しやすい状態になるのではないか。


そんな熊鍋、食べてみたい方は、タツさんの「子づくりの宿蛍雪の宿、尚文」へ。なんといってもタツさんの熊鍋は最高です。熊脂のお客さんへの販売も考えているそうですよ。

あと、我が家に遊びに来る方。僕の熊鍋が待ってます。タツさん直伝なので、本当、美味しいです。でも、茶化したり軽いノリの人には食べさせないから。

そうそう、熊鍋を食べた次の日は、肌の調子で驚きますよ。化粧のりが全然違うそうなのですが、僕ら男でも、朝に鏡を見たらびっくりします。「シワが無くなったぞ〜!」って(笑)。まあ、数日しかもたない魔法ですが。
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by oglala-beads | 2007-12-23 10:47

水上の鹿、丹波の鹿

またしても作業日誌をさぼっていたので、また書き始めました。
載せなきゃいけないものが結構溜まってしまってます。
てことで、作業日誌もよろしくお願いします。


12月に入ってすぐ、タツさんから小包が届いた。
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中には、タツさんが育てたナメコや、舞茸、味付けして下さったシシ肉やシシのモツなどと共に、今回の猟で獲れた熊の肉と脂、そして鹿の肉。更にはその鹿の皮が入っていた。冷凍して送ってくれる様に頼んでいたものだ。


ということで、早速鞣し開始。サイズを測ってみると、目測通り140センチジャスト。ただ、140「しかない」とは到底思えない程に重く、そして横幅があり、すごい迫力だ。
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横部分の肉を落とそうとすると、ビームの上を滑り落ちてしまうぐらいの大きさとサイズだった。
フレッシングを完了させて、ソーキング(水漬け)にかかったのだが、バケツには収まらなく、熊用のタライに入れた。
気温、水温が相当下がってしまったので、なかなか漬かりきらない。あまり水温が低い中に長時間漬けておくと、漬かりきる前に皮が痛んでしまうので、本来ならお湯を使うのだが、すぐに冷めてしまうし、今後の事もあり、毎回は出来ないので、普通に水道水を使っている。
つけ始めて今日で一週間を過ぎている。ちょうど今日試しにグレイニングをしてみたのだが、まだ所々準備OKといった感じで、あとさらに1週間はソーキングさせる必要がありそうだ。
皮の厚さは、今のところ、思った程では無い印象だ。だから一体何がこんなに重くしているのかがよく分からない。
心配した程は毛根は深くなく、逆にグレイン(ギン)層は相当薄い。全体になめしやすい皮というイメージがある。


また、先週は丹波姫もみじさんにおじゃまして、皮を二頭分と、取っておいて頂いていた背中の腱、そして前脚の腕の骨を2本もらって来た。
前脚の骨は、鞣しの際、スクレイパーにすることが出来る。肉だらけだったので、コロに掃除をお願いした。
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背中の腱は数十頭分あった。手間だっただろうに、有難い事だ。早速処理にかかるため、現在強制乾燥中だ。充分熟成させて、また水で戻して、掃除して再び乾燥させる。
皮は、今回は「岡居さん、非常に大きな鹿が入ったから、皮、取りに来て下さい」とわざわざ電話を頂いたぐらいなので、本当に大きなものだった。丹波では最大級だろう。
持って帰るとき、軽いなというイメージだったので、期待してなかったのだけど、家に帰って拡げたら130位に見える。計測すると、やはり130を少し越えるほどあった。しかし水上のものと10センチ弱程しか変わらないのが信じられない位、軽くて小さく感じる。やはり横幅なのだろうか。
この鹿は、昨日フレッシングにかかった。非常にやりやすい皮だった。30分程でほぼ全ての脂肪はおろか、メンブレンまで取り去る事が出来た。

今回もらったもう一頭の皮は、キメが細かく、首部分が無かったものの、程よい大きさで厚さも良く、やりやすそうだったので、前から「一頭自分で完全に鞣してみたい」と言っていた配偶者にやらしてみることにした。
ちょっと前までは血を見るのにも抵抗があって、僕が鞣しをやるのにも反対だったのが、よくここまで来たものだ。楽しそうにフレッシングにかかっていた。僕の6倍ぐらいかかっていたけど、それを見ていて、「あ〜、自分もこんなだったなあ」と感慨深かった。
一番難しい乳首の部分を一カ所小さな穴を開けただけでフレッシングを終わらせていた。

自分で鞣した革で、自分の手で自分のカバンでも作ってみたらいいんじゃないかな?と思っている。
素敵でしょう?

配偶者のこの鹿、首部分の付け根で切られていたため、他の鹿と同じ計測は出来ないのだけど、おそらく首が付いていたら、115センチぐらいある大型のメスの様だ。

さて、今回頂いた皮から、要望を出していた、トレーサビリティーがしっかりするようになった。
つまり、獲った人、獲った場所、獲った日時なんかがしっかりと分かる様になった。
これらの情報を、現在準備中のウェブに、鞣した鹿毎に番号をつけて掲載しようと思う。そしてOGLALAの商品にもタグ等を付けて、どの鹿を使ったか、番号を入れるつもりだ。


タツさんの指導を受けながら、配偶者に熊の脂の抽出を任せた。溶けている時はオレンジ色で、凝固したら乳白色の、良い脂が出来上がった。火傷や傷や荒れに良く効く薬になるのは勿論、美容にも非常によいそうで、新地のママさんなんかが使っていると聞く。僅かな量しか抽出されず、30ccで1500円以上と非常に高価だが、極僅かな量で結構伸びるので、案外長持ちする。
僕も、熊の鞣しの時や、ちょっと前に指を切ったときも、すぐに熊脂を使ったお陰で、特に膿む事もなくすぐに完治し、今では傷跡も分からなくなっている。さすがに切ってしまった神経は元には戻らず、今でも右手の小指の感覚は無いのだが。


昨日はタツさんに送ってもらったシシモツを食べた。焼き肉にしてみた。「これ喰ったら、ブタなんて喰えなくなる」って言っていたのが本当によく分かった。というのも、一緒にブタも食べたから(笑)。脂の質が違っていて、イノシシの後にブタを食べたら、家畜であるブタに申し訳ないので美味しく食べたけど、実際に気持ち悪くなってしまった。美味しく頂きたかったので、ブタは後日ということで置いておいて、本日美味しく頂いた。


新しい鹿の番号
水上 g120607
丹波 h121507
       h121507y(配偶者用)

前回の鹿の番号
h110407-120
h110407-110/1
h110407-110/2
h110407-90
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by oglala-beads | 2007-12-16 22:54 | 革なめし関連

猟の話〜最終回〜

「温泉宿のラーメン屋と鳥獣供養塔」



なんせお腹が減った。水上の温泉旅館街にあるラーメン屋に行く事に。途中気温は5度を下回っている。

「明日ぐらい、雪ですよ。きっと」

11月17日。関西では考えられない。

「いいですね〜、それぐらい雪が深いところ、憧れるなあ」

タツさんが黙ってニコニコしている。

「ああ、そっか。実際にそこに住んでいる人からしたら、冗談じゃないですよね」
「大変ですからね・・・・ああ、また始まるのか〜って感じ」
「今でもかなり積もるんですか?」
「去年は本当に雪が無かったんだけど、前の年は結構降りましたね。尚文のあるところはそれほどではないけど、もう少し上に行ったら、2階から出入り出来る位、すごいですよ。うちも昔は凄かったらしいし」

「お!?あれは!?イタチか!?」
「あ、テンですね〜!」
「本当だ!顔が白くて身体が黄色だった。居るんですね〜、結構」
「車で走ってると、ああやって結構出て来るんですよ」

1時間弱走って、水上到着。
行ったラーメン屋は、それこそ温泉宿のラーメン屋という風情だった。収容人数は多くも無く、少なくもなく。座敷があるのが変わっている。テーブル席には旅館の綿入れを着込んだ外湯帰りとおぼしきグループが座っていた。座敷に座り、タツさんが頼んだのと同じものを頼む。ややあって、次から次へと団体がやって来た。
「ちょっとタバコ吸って来ます」
「ああ、タバコ吸うの、ゴンだけだもんな。いいよ、ここですっちゃえよ」
「あ・・・・いや、いいっす。そとで吸って来ます」
ゴンちゃんと入れ替わりで、大きな団体が入って来た。コンパニオンの女の子を数人連れている。何故かチャイナドレスだ。雑踏の様にごった返す。落ち着くのにしばらく時間がかかる。

なんだかボーっとする。うるさいんだけど、コンパニオンを連れたスケベ親父達の団体を見ていると、妙に温かくなって来る。

温泉宿を舞台にした男と女の話に多くの傑作を残した、川端康成が生きていたら、こうした現代の温泉宿の男と女の情景をどう見るだろうか。きっと同じものを見た上で、お互いの中にある疲れを新たに見いだすのではなかろうか。
新たに・・・・・?いや、それは違うかもしれない。彼の「雪国」は僕の愛読書で、何度読み返したか分からない程だが、主人公の島村は、最初から自らの背負っている生活を見せている。そうした生活の疲れこそが悲劇的なラストを予感させる、雪国の静かさと相まって独自の情景を描き出していたのかもしれない。

ゴンちゃんが帰って来る。チャイナドレスの女の子を見て、
「ふう〜!可愛いなあ〜!いいなあ〜!」を連発している。確かに、2人ほど可愛らしい子が居た。
「でも、すごいのも居るよな」
「ああ・・・・居ますね」
ドレスのスリットは、なかなか驚く程上まである。これは酒を呑んでなくとも、生理的に訴えて来るところがある。

ふっと、目の前のタツさんとゴンちゃんを見る。その背中にはコンパニオンになんとか猥談を仕掛けようとしている温泉客達。
背景を知っているせいなのかもしれないが、なんだか非常に二人を孤独に感じた。孤独・・・・上手く表現出来ないのだけど、甘えの無さというのか、やはり生き死を握った事のある人だから?後ろに見えている人達の「疲れ」が、知らないもの同士を繋ぐ隙とか甘えと同種か、もしくは鍵になっているのに気がついた。それはゴンちゃんとタツさんといった対比出来る人間が目の前に居てこそ気付いた事だ。
ターさんや小野さんの姿を思いだしてみるが、やはり、同じ孤独を感じる。

なんだろう?ハンターの背負っている孤独?そして、同じテーブルに座っているからではなく、自分がハンター側に近い場所に居る事にも気付かされた。それは今回参加してなったとか、そういうものではなく、生まれついてのものなのかもしれない。

そういえば、ものごころついた時から、奇妙な違和感の様なものを、いつも団体の中で感じていた。最初は砂粒の様な小さな感覚だったのだが、気付けばつかみ所の無い影の様なものが自分の中にある。つつくと妙な寂しさの様なものを感じるのだけど、それを晴らすために人と交わろうとは思えない。むしろ一人になろうとする。

目の前の二人に、同じ影を見た思いがした。小野さんにも。ターさんにも。ユウ坊さんにも感じるのだが、彼の場合は、もっと違う何か大きなものを感じる。

同じ影を持つもの同士、寄り添って傷の舐め合いが出来るのかと言うと、それはもしかしたら出来るのかもしれないけど、多分出来たとしても、最終的に皆、一人でやっていくのだろう。

強いて言えば、自分の出す音しか聞こえない水の中から、コンパニオンや温泉客達が居る地上を見ている様な、そんな感覚があった。



とまあ、そんな小難しい事は置いておいても、ラーメン、本当、美味しかった!
タツさんは餃子にお酢をドバっとかけていたので、僕も真似をしたんだけど、それがまた最高だった。これから餃子には酢を沢山かけよう!



「さびいなあ・・・・」
利根川の清らかな源流をすくって空に投げ上げた様な、清らかで静かな夜空を見上げながらマンションへ帰る。



「ふう〜!」と、ゴンちゃんが水風呂にダイブする。
「この、変態め!・・・・あ、でもね・・・」
といって、タツさんが、案外身体を冷やしてから風呂を上がった方が、逆にいつまでも暖かいということを説明してくれた。
「身体が自分でなんとかしようとするんでしょうね。逆に暑い状態で上がってしまうと、身体が冷やそう冷やそうとするせいか、すぐに湯冷めするんですよ」
「なるほど、一度試してみようかな?」
「あ、でも、このバカみたいに飛び込んだりは真似しないでいいっすよ!」
「ふう〜!気持ちいい〜!」

「ゴンちゃんは、明日は?」
「小野さん達と猟に行きます。夜には帰ります」
「そうなんだ。そっかあ。獲れたらいいねえ」
「はい(笑)」

酒盛りもほどほどに、眠りにつく。

朝、起きたらゴンちゃんが出かけるところだった。タツさんはまだ寝ている。

「気をつけてね」
「ありがとうございます。じゃ、また」
「うん、また来年」

しばらくするとタツさんも起きて来た。水上を離れる前に、一緒に鳥獣供養塔に行く。タツさんのマンションのすぐ近くだ。
「このマンションだといつでもお参り出来るっていうのもあるんですよ。でも逆に、いつでもお参り出来るから、またでいいかっていう風にもなってしまうんだけど(笑)」
「ああ、なるほど(笑)」

静かに手を合わせて拝むんだけど、礼を言っていいのか、成仏を拝んで良いのか分からず、ただ手を合わせた。それを見越してか帰路にタツさんが、

「謝るんじゃなくて、感謝する。それでいいと思うんです」

とつぶやいた。



「じゃ、本当、お世話になりました。何から何まで」
と改札をくぐる。電車の扉は自動でなく、手動だった。神戸は美人が多いと言われるだけあって、乗り込んでくる女の子達はまあまあなんだけど、皆、妙な可愛らしさがある。
例えば、発車間際に乗って来た女の子。高校生ぐらいか。毛の手袋の端を口でくわえて外し、そのままで定期を出して改札をくぐって電車に乗って、僕の反対の席に腰を下ろし、手にハ〜っと息を吹きかけた。

来年、また来れるかどうかは、呼んでくれるかどうかではなく、自分が行くかどうかなんだろう。それだけのことを、タツさんは僕に見せてくれた。
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今から東京に行って、ビーズのワークショップだ。生徒達は皆、習おうとする意識の高い人達だ。気持ちを切り替えて、全力であたろう。でも、授業の最初に、
「あ、多分、僕、今、獣臭いと思うんです。狩り行って来たんで」とだけ言ってやろう。
この数日間を、ちょっと誇りたい気分だった。


終わり



その晩、タツさんからメールが来て、「あの後、こっちは大雪!尚文で20センチぐらい積もってるよ!本当、いい時に帰ったよ、ヒロさん!」
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by oglala-beads | 2007-12-08 11:59 | 2007年・水上(群馬)初猟

猟の話〜その13〜

「剥製屋さん」

次第に車窓の夜景は都会から山のものになってゆく。途中、コンビニの様なところに寄っては、「リップクリームないかな?」と探しまわるタツさん。

ゴンちゃんは一人で運転しているので、相当眠そうだ。
「あ〜、やばかったです」
「だろうねえ(笑)」

随分と走って、なんだか非常にディープなところへと入って行く。剥製屋さんに到着だ。
回りは相当暗い。
車を出ると、カラオケの音が聞こえて、車が結構停まっている。
「?」
「ああ、実は、この人、カラオケの先生なんですよ」
「え?そっちが本職なんですか?」
「・・・どうなんだろう?土建関連の方もやっていて、そっちが本職なのかな?」
「・・・・」
「今日の昼、飯食いに入ったソバ屋の、あの大きな樹の天板ね、あれもHさんがやったんですよ。尚文のはもちろんだし」
「へー、そうなんだ」
「もとはコケシを削っていたんですよ」
「あー、木地師だったんですか・・・・なんかすごい経歴ですね」
「あ、ヒロさん、ほら、こっちこっち。イノシシ飼ってるんですよ・・・この時間、奴らは何をしてるんだろう・・・・あ、寝てるなあ。まあ、飼われているイノシシだから、野生のとは違うか」

他にも沢山の動物が飼われているらしい。

「おじゃまします」と玄関を開けると、2匹のシーズー犬、2匹のシャム猫が迎えてくれた。
ああ、犬も猫も可愛い。そろそろ、里心というか、コロ心がついてきた(笑)
Hさんは留守だそうなんだけど、もうすぐ帰るからって事だった。
奥さんに、暖かい薪ストーブの傍とお茶と、自家製の沢庵をすすめられる。薪ストーブの暖かい火は、こういう寒い時には何よりのごちそうだ。そして猫や犬が膝の上に乗って来る。お茶を頂き、これまた絶品の沢庵。結構な量があったのが、本当にすぐに無くなった。前にも書いたけど、群馬は漬け物天国だ。

Hさんの帰宅を待つ間、そこここにある毛皮や剥製を見せて頂く。

実は、この剥製屋さん行き、今回の水上行きの重要な目的の一つだった。

僕が自分でアメリカから本を取り寄せて、見よう見まねで熊や鹿の鞣しをしているのは、このブログを見ている方ならご存知と思うんだけど、ともかく日本で師匠と呼べる人が居ない。白なめしの新田さんは、お会いしてすごくエキサイティングだったし、自信を与えてくれたし、これからお世話になる事が多いと思うんだけど、僕がやっている事とはまた少し違っている。
日本の動物や日本で入手しやすい材料、そしてその経路を教えてくれる師匠が居ない、ってことは結構大きい事で、多分それで断念してしまう人がほとんどだと思うのだけど、僕は本業のビーズも自分でなんとかして乗り越えたし、新田さんにも「君はそれがすごい」ってほめてもらったぐらい、正直、僕にとっては本当は何でもない話だ。かえって障害がある方が乗り越えて行く楽しみがある。逆に言うと、自分自身に「絶対やる!」っていう信念さえあれば、障害はかえってイベントの様なものだ。

ただ、僕にとっての決定的な問題は、「プロがやった完成品を見た事が無い」という事だった。
何を理想にして良いのかが分からない。

鹿革に関しては10年以上触って、世界中から良いと言われる鹿を取り寄せて実際に使って来たから、ブレインタン(脳漿鞣し) に関してはかなり客観的な評価が出来る。だから、自分が鞣す鹿に対しても、問題点がすぐに分かるので、自分で言うのもなんだけど、まだ経験が浅いにも関わらず、ビーズ用のブレインタンとしては、世界最高の革に仕上げている自信がある。
しかしながら毛皮に関しては、書籍での知識は数10冊以上のモノがあるものの、現物を見た事が本当に僅かしか無いのだ。熊なんて、自分が鞣したモノ以外、見た事すら無かった。だから、
「どの程度柔らかくすればいいの?」
「毛根がこれだけ出てしまっているけど、これでいいの?」
「指界隈の脂肪と肉は非常に取りにくくて、この程度しか取っていないけど、やっぱりこれじゃ駄目?」
「耳の処理はどうすればいい?」
「トリミングはどの程度する?」
「毛の脂分はどの程度落とす?」
等、実際に触って、見て、出来れば舐めてみないと分からない様な事が一杯だったのだ。

さすがに商品なので舐めはしなかったけど(笑)、じっくり触らせて頂いて、Hさんが帰って来られた時には、もうほとんど疑問点は晴れていた。だからもうほとんど聞きたい事は無くなっていた(笑)

それで、僕があまり色々と聞かないので、タツさんが気を利かせて、というか折角来てるのに、と業を煮やして(笑)結構気を使ってくれたのだけど、今、現実に触って感じた事を頭の中でまとめるのに必死で、実際はあまり聞く事は無かった。
その時、僕の頭の中では、点でしか理解出来て居なかった事が、線を通り越して、面となって沢山の疑問が結合を繰り返し、雪崩の様に一気に解決しようとしていたのだ。

僕があまりに聞こうとしないので、話はタツさんとHさんとで罠の話に移っていた。
タツさんの猟の師匠はターさんなんだけど、ターさん達のグループの中には罠をやる人が居ないのだそうだ。でも、タツさんは「動物の行動を把握して、裏をかいていくには、罠に精通するのが一番だ」と、どうしても罠を勉強したかったそうだ。Hさんは罠の名手だそうで、タツさんの住む地域とは大分離れているんだけど、Hさんを罠の師匠として慕っているそうだ。
Hさんも本当に全て、隠す事の無い、非常におおらかな人で、タツさんの疑問に絶妙なアドバイスを与えていた様だ。

Hさんは、僕が出して来る質問内容を聞いて、僕が大体の事は分かっていると判断されたのか、僕にも非常に絶妙なアドバイスをくれた。多分、鞣しをしない人が聞いたら「?」と思う事が多いと思うのだけど、していて自分で悩んでる僕からしたら、まさにピンポイントなのだ。非常にためになった。おまけに、商売道具であり、鞣しの時に一番大切なスクレイパーとビーム(Hさん自信のお手製)も見せて頂き、鞣し道具のカタログまで頂いた。手荷物の量の関係で、手ぶらで行ってしまったことが悔やまれる。タイミングを見て、お酒でも送れたらと思った。

おいとまする段階になって、ようやく今までの疑問が雪崩の様に解決して、新たな疑問等が湧いて来て、いくつか聞いたのだけど、やはり一度エゾジカ、しかも最大級のものをやってみる必要があるなと感じた。新田さんにエゾジカを回してもらえる様、一度頼んでみよう。

タヌキの話になった時に、
「今、外にハクビシンが居るよ。捕まえたヤツ。要る?達也君、持ってかえってよ。なついて来た頃だし」って仰るんで、タツさんとゴンちゃん、そして僕で見に行った。
「Hさん、これ、つぶすってことだよな(笑)。俺、絶対無理。この大きさの動物、難しい」
「僕も無理(笑)」
「あ、俺、大丈夫っすよ!」
「まじで!?ゴン!?」
「ええ、やりますよ」
「なついて来たの、殺すんだよ」
「ええ、やります」

Hさんにお礼を言って、車に乗り込む。非常に大きな知識を頂いた。もちろん、タツさんとの付き合いがあるからだと思うので、いわばタツさんに教えてくれた様なものだろうとは思うのだけど、Hさんの広さ、本当に恐れ入った。自分の狭さに多いに恥じ入った。

家の冷凍庫には、今年の晩冬にタツさんが道で轢かれていたのを拾ってくれていた、テンが眠っている。早くこのテンを完成させたいと思った。


〜最終回「温泉宿のラーメン屋と鳥獣供養塔」に続く〜
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by oglala-beads | 2007-12-06 12:07 | 2007年・水上(群馬)初猟

猟の話〜その12〜

「食事処」

猟の途中、タツさんが

「ヒロさん、これ、目薬の樹。知ってる?」と聞いてきた。
「いやあ、知らないっすねえ」
「一時、健康ブームで取り上げられて、大人気になってね。山から姿を消す程、取り尽くされた時もあったんですよ。ほら、この樹も、こんな下から切られた跡があるでしょう?」
「本当ですね」
「ヒロさん、目悪いんだったら、呑んでみますか?かるく炙ってお茶にして呑めば効くらしいんで」
「ああ、じゃあ、ちょっと」

で、枝を数本切ってもらって、途中、自然薯のツルで枝をしばってもらった。しかし、山を横巻きしている最中、回りに当たって葉が落ちて行くのが気になる。そこで、葉っぱを全部取って、ナイロン袋に入れた。
「これでよしと」と、枝は道脇に刺して来た。

山を下りて、
「タツさん、葉っぱね、ナイロンに入れたんですよ。最初からこうしとけば歩きやすかったかな?」
「え?ヒロさん、葉は要りませんよ」
「・・・・・・・」
「枝を使うんですよ」
「・・・・・・・」
「え?枝は?」
「置いて来ちゃった」
「あ〜あぁ(笑)。ごめんなさい、ちゃんと言っといてあげるべきでしたね」
「・・・・いや、ちゃんと聞かなかった僕が悪いんです・・・・あ〜!悔しいい!!!」

今回、結構そういう、お馬鹿なミスが多かったです。

これはミスでは無いんだけど、高級爪楊枝になる木も教えてもらって、今、こうしてコンピューターを打ちながら、たまに使ったりしている。


さて、解体も終わって、お昼ご飯に。そのままの格好で食事処に入るものだから、座敷で食事をしていた、いかにも紅葉狩りの都会のカップル達が目を丸くしていた。腰に散弾銃やライフルの弾だもんね(笑)
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これは何も皆がズボラな訳でなく、もし車が盗難等にあった時のためでもある。常に携帯しておいた方が安全ということだ。
タツさんがリゾートマンションで一人暮らしをしているのも、それが理由の一つだ。セキュリティーがかなりしっかりしているので、銃の管理という面で安心なのだ。
小野さんが、「僕の場合は、これを抜いて来てるんだよ」といって、銃のボルト(?)を見せてくれた。「これは一つ一つのライフルによって形が全部違うんだよ。だからその銃の鍵みたいなもんだね。だからこれが無いと、ライフルはただの鉄くずなんだよ」。
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感心して話を聞いてる中、ゴンちゃんが一生懸命メニューを選んでいる。

「いいこと思いつきました(ニヤリ)」
「なに?」
「このね、煮込みうどんっていうのを頼んで、うどんを全部食べたらご飯を頼んで、残っている汁に入れるんです」
「あ、それ、いいかもしれない!」
「すみませ〜ん!じゃあ、煮込みうどんをお願いします!」
「お前、ここおソバ屋さんだぜ!(笑)。うどんかよ。ま、うどんもここ美味しいけどね。・・・ヒロさん、何にします?」
「あ、僕はカツ丼を」
「そば屋だって言ってるのに(苦笑)。まあ、カツ丼も美味しいんですけど」

実際、タツさんはすごくこだわった料理人で、調味料一つにも神経を配りすぎる程に配っている人なのに、人の料理も「うめ〜な〜、うめ〜な〜」を連発して食べている。食べ物に対する感謝っていうのがすごく大きい。こういう姿勢がすごく好きだ。(食後もお膳を厨房に持っていってた。これはやはり商売上のあれだろうー笑)

「あれ?ゴンちゃん、どうしたの?」
「いや〜、ご飯一人分、煮込んでもらったんですが・・・汁でふくれるのを計算に入れてなかったですね・・・」
「おめーはそういう詰めが甘えんだよな(笑)」
「ヒロさん、ちょっと要りません?」
「いやあ、僕もちょっと」
「あ、俺、ちょっといれてくんない?」
「あ、ターさん、食べますか!♪」
「・・・・なあ。・・・・なあって、ゴンちゃん。・・・・ちょっとで、いいでよ・・・・」

食後のデザートとして、丹波の鹿のダニの具合を携帯の写真で見てもらった。
一同、絶句。眉間のシワ。
しばらくしてターさんが、

「・・・こりゃあ、喰えねえで・・・・」とポツリ。

まあ、肉には影響ないし、丹波鹿は美味しいんだけど、鞣しをする時、僕もいつも「ウワ〜」って思うな。


ターさんと小野さんとはここでお別れ。
「また来るんでしょう?・・・うんうん。元気でね。じゃあ、また」
ここ数日間のお礼を言って、別れる。


タツさんと僕とゴンちゃんで、山に鹿の使わないパーツを返しに行く。帰路、鳥撃ち専門のゴンちゃんのために、鴨が来ていないか見に行く。

「多分、まだ来てねえさ・・・・あ!」

三羽ほど来ていた。こちらに気付いて居ない様で、若干近づいて来ている。ゴンちゃんがそ〜っと狙いを定める。が、すぐに遠ざかって行く。タツさんが反対側から追おうとしたのだけど、それも察してか、さらに奥へと泳いで行った。
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この写真を撮ったのは、鴨が向こうに反転してからなんだけど、皆が気を詰めている時には結構大きなシャッター音だった。このせいで逃げたのではないかな・・・・・?

サルが凄く沢山山から下りて来ていた。皆で柿の木にたかっている。小さいサイズのサルはかなり可愛い。
「でも、大きいのは憎たらしいですよ〜。・・・あ、ターさん、サル、大きいの、いっちゃっていいですか?・・・・あ、わかりました。撃てそうならいっときます。・・・駆除の許可出ました。サルの駆除って、頭数が決まっているんですよ」
「そういえば、サルの肉って美味いそうですね」
「美味いっすよ!・・・でも、剥くのは嫌ですね。本当に」
「・・・・ああ、分かるなあ。モロですもんね。つまり、似てるってことでしょう?」

人間にね。


残念ながら、大きなサルは道路越しで鉄砲は撃てなかった。それにしても随分とキーキー言っている。あの声で人が入って来た事を、回りの獲物に教えてしまうこともあるそうだ。

サルは冬になると山から下りて来て、民家近くで暮らしている様だ。タツさんが育てた椎茸なんかも泥棒されるらしい。
全日まではまったく見なかったのに、今日になって群れで降りて来た。昨日のうちに、偵察のサルが降りて来ていたのだろう。空が暮れる頃には、かなりの数のサルが出て来ていた。


その後、ゴンちゃんの車に乗って、前橋まで高速に乗って行く。タツさんの新しい車の引き取りだ。タツさんのランクルは4駆が入らなくなってしまったりで、泣く泣く乗り換える事になったのだ。それでもそのランクルは引き取り手が居たそうだから、ランクル人気は大したものだ。新しい愛車はハイラックス。荷台があるヤツで、確か主に北米市場を睨んだ車種だったと思う。非常にマッチョだが、ランクルに較べると、ハイテク・タツさんという感じで、まだちょっとしっくりは来ていない。なんといっても、ランクルの純正部品みたいな人だから。
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でも、荷台があることで、鹿等の獲物が詰めて楽だと思う。来年会う時には、ハイテク・タツさんになっているんじゃないかな?

ドリンクホルダーを買いに、近くにあったオートバックスへ。ギャル仕様のヤツとかを買わせようと、タツさんをからかう。

僕が履いている靴はミツウマの長靴。水上では自然だったし、どちらかというと見せて履けるこの長靴は逆にオシャレだったが、前橋では違和感あるかも。でもその靴で僕は神戸も歩いているんだけど(笑)

タツさんの新車とゴンちゃんの車との2台で、タツさんがお世話になっている剥製屋さんへ。

〜「剥製屋さん」に続く〜
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by oglala-beads | 2007-12-04 11:54 | 2007年・水上(群馬)初猟

猟の話〜11〜

「鹿の解体」

通常、鹿の解体は足か角にロープをかけて滑車で吊り上げて、皮を剥ぐ事から始まる。
が、今回の解体は、イノシシ等の解体台(タツさんお手製)の上で行われた。
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熊と同じ様な手順で進むため、特筆すべきことは無いので、今回は僕の仕事と関係の深い部分について。
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皮はやはり大分厚い様に思う。この鹿の大きさは、革にする首から尻尾の付け根までの長さが、目測で140センチぐらい。丹波の鹿で、最大級が120センチぐらい。20センチの大きさの違いを差し引いてもかなり厚く感じる。
OGLALAの商品ラインから考えると厚過ぎるかもしれないぐらいだ。
「自分だけ、ずるい!」というクレームがお客さんから出なければ、自分用のショルダーを作ろうかな(笑)。

ただ、丹波の、同じ位の寒さの時の鹿をまだ鞣した事が無いので、厚さに関しては確かではなく、僕のブログを参考に使っている人は、12月の丹波鹿のレポートを待って欲しい(また4頭程やる予定)。

肌の質感等に関しても、ドイツ系だから、といった様なところは鞣してみないとなんとも言えない。ただ、毛根が深そうに見えたので、恐らくグレイニングがかなり大変なんじゃないかなとは思う。

解体自体は、ものすごくやりたかったものの、肉を傷つけそうで怖くて今回も僕は手を出さなかったが、腱の取り出しと脳みその取り出しをした。

昔、平原インディアン達は、動物の腱を乾燥させ、細く裂いたものを糸として使っていた。現代のビーズ糸に較べると、結構欠点が多いのだけど、腱を使わないと出ない味もある。僕もたまにアメリカから取り寄せた腱を使用している。ただ、近年になって、野生動物のパーツ等の輸入が非常に厳しくなって来て、腱もその例外では無くなって来た。
そこで、ひめもみじさんにも「もし取れるようなら、腱を取っておいて下さい。」ってお願いしてあるんだけど、実際に自分でやってみた事が無いので、どこをどう取るかの指示もしにくかった。一番重要な背中の腱に関しては、正直ボ〜っとしてて忘れていて、あとでターさんとタツさんに「背中のはいらねえの?」って言われて、「はっ!しまった!」と叫ぶという、テイタラクさだったが、

「タツさん、これ、前脚、分解しちゃっていいですか?」
「ああ、どうぞ。山に返すだけだから」

ってことで前脚の腱は自分で取り出す事が出来た。
ひづめの根元からナイフを入れて、皮を開く。するとすぐにもう腱が見える。これはすごい!丹波のものより大分太くて大きい!すごいな〜を連発しながら嬉々として腱を取っている僕を、皆が呆れた様な顔をして見ているのが、とても面白かった。

ところで、腱の事を英語ではシンニューと呼ぶ。この言葉、多分革細工を少しでもされている方なら耳にした事があるのではないだろうか。革細工での縫い糸の一種に、ワックスを塗ってあって、太さを裂いて調整出来る糸が売られているのだけど、その糸はシンニュー(=シンニュウ、シンニョウ、シニュー、シニュウ)と呼ばれている。これはもともと、本当のシンニュウである動物の腱を、それっぽく見せる様に模倣して作られているので、正式にはイミテーション・シンニュウ(模倣シンニュウ)と呼ばれている。本当のシニューは動物の腱の事なのだ。

すべての解体が終わって、後始末をしている中、生首がポツンと置かれている。鹿の首はよくトロフィーとして壁に飾られたりしているので、それほど不気味な光景ではないのだが、よく考えると、やはり不思議な光景だ。

「昔、達也が猟を始めたいって言ってた頃、ある日、俺のトラックの荷台に、解体した鹿の生首を積んであったのさ。達也、それを見て、口には出さないものの”うわあ〜”って顔をして、完全に引いているのが分かったのさ。それがよ〜、今では俺より解体うめえんだもんな(笑)」

僕?僕はね・・・実は、全然動じなかったんだけど、だからといって適性があるとかは分かりませんね。最初動じてたタツさんが今では・・・・いや、本当にタツさんの解体は上手いし丁寧です。タツさんの剥いた皮にはほとんどナイフの切り跡がない。これって、凄い事なんですよ。

「タツさん、前に僕が言ってた、あれ、試しませんか?」
「あ、いいですね!やってみましょうか!」

ということで、頭骨の中から脳みそを取り出す、ある手段を試してみる。本来、脳を取り出す為には、ハチを割るか切り取らなければならない。または裏の穴から細いスプーンを入れて掻き出すんだけど、それだと必ず全部を掻き出す事が出来ない。
そこで、僕のアメリカの鞣しの師匠が発見したらしい手法を試してみる事にした。聞いただけでやったことが無かったのだけど、もしこの手法で脳が取れる様なら、恐ろしく簡単だから、気軽に誰にでも頼む事が出来る。

「はい、いいですよ。用意出来ました。じゃ、お願いします」
「はい!」
「・・・・・うおおお!出て来た出て来た!」
「フゥ〜フゥ〜!あ!やらせて下さい!・・・・あ、コツが分かって来ました!」
「え?ゴンちゃん、どうやるの?」
「・・・・ってしないで、・・・・ってする方がいいみたいです!」
「ああ、なるほど!」

ごめんなさいね。企業秘密ってことで(笑)。でも、どうしても知りたい方、今までの僕のブログで実は散々書いてますんで、読み返してみて下さい。

それにしても、ゴンちゃんって、結構頭がいい。


今回の鹿も、解体後は、ほとんど何も残らなかった。全てを利用し尽くす水上の猟師は、本当、インディアンみたいだ。でも、今までは鹿の皮は山に帰してたみたいだから、僕のそれの役に立てて、本当嬉しい。

鹿の毛皮は、毛が切れやすくて利用に困るんで人気が無いんだけど、革は、敷布にすると床ずれをしないそうなので、犬の介護とかには凄く良いらしい。
うちの鹿は燻製にするので煙の臭いがするけど、なにせ洗濯機で洗えるし、洗うと臭いも消えて行く。薬品も一切使わないから、本当、いいものだと思う。

今回の鹿の皮は僕がもらってしまったけど、毎年一頭ずつ、タツさんのグループの誰かが獲った鹿は、僕がその人の記念に、一人一頭づつ鞣してあげて、プレゼント出来たらと思っている。そのかわり、それ以外の生皮はくれるということで(笑)。
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〜「食事処」に続く〜
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by oglala-beads | 2007-12-01 12:38 | 2007年・水上(群馬)初猟