カテゴリ:鞣し関連(熊)( 2 )

熊の脂落し

熊の毛の脂がベタベタするのが気になっていたので、石油ストーブの中に残っていた灯油を利用して拭き取りをした。
アメリカの鞣し友達達は、鞣し液に漬け込む鞣し方をする場合、毛に回った脂を取る為に灯油等の中に漬けるのだけど、そこまでしなくてもなあ・・・と、僕はそれ用の洗剤等を使って洗ったのだけど、駄目。多少は落ちたものの、落としきるのは無理だった。
そこで慎重に考えて、梅雨に入る前の気温の高い快晴の日、灯油をウエスに染み込ませて毛を拭いた後、灯油が揮発する前に拭き取ってしまおう、という作戦を冬に立てていたのだ。

やってみたものの、一回目、乾く前はとても上手く行っている様に思えたのに、拭き取るとまだベタベタが強く残っていた。一度濡れたウエスで拭いてから乾拭きして、もう一度灯油で拭いた。
まだまだアンダーコート(皮膚に近い柔らかい毛)についた脂は健在だけど、外側の脂は大分落ちて、手触りもサラサラして来た様に思う。あと2〜3回はやらないと気持ちよい手触りにはならないだろうけど、まあなんとかなりそうな気がする。
それにしてもこの方法だと、アンダーコートの脂は取る事が出来ない。なるほど、それで灯油に漬け込む必要があるのか。
でも、思うに、鞣し液に漬け込まなければいいんでしょう?そうすれば脂は肉面だけでおさまって、毛に付着しないわけだから。まあ、鞣し液に漬けずに毛皮を仕上げるのはものすごく難しそうだけど。
実際熊は漬け込んだにも関わらず、二カ所程表皮が弱くなって脱毛しているのを今日発見してショックだった。
本当、熊は難しい。
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by oglala-beads | 2007-05-12 20:50 | 鞣し関連(熊)

熊のなめし総括

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さて、熊の皮なめしですが、ひとつの作業を残して完了いたしました。それは切り落としてしまった片耳を縫い付ける作業なのですが、これが思った以上に難しいのです。というのも、お互い鞣し終わった後なので、形が大きく変わってしまっているのです。なので、どこにどう付いていたか、というのが分からなくなってしまっています。この作業は、慌てずにじっくり考えて、確信を持てる様になってからやろうと思います。

ということですので、ひとまずこれにて終了。総括させて頂きます。
途中、手を怪我したり、色々な事がありましたし、最初は上手くいかず、またこれで合っているのかと非常に不安でしたが、コツを掴んでからはかえって作業を楽しめる様になりました。
体力的には確かに多少はしんどい作業ですが、昔やっていた色々なアルバイトに比べると、正直随分と楽でしたね。

作業自体で一番大変だったのは、近所の目から熊をかばうことでした。それがストレスになり注意力が散漫になり、怪我に繋がったのだと思います。まわりの目を気にしなくなってからは、かなり冷静に物事を見て、楽しい作業になりました。
が、やはり最後まで臭い(古い油の様な臭い)には気を使いました。

工程自体で一番大変だったのは、脂肪や肉を皮からこそぎ落とす FLESHING でしたが、一番難しかったのは、STAKINGをする際の革の乾き具合を見極めるところにあるのではないかと思われます。実際、ここと、鞣し液の完全浸透がうまく行っていなかったのか、バックスキンや売り物の毛皮の様な柔軟性はありません。
某ウェブで「素人がどれだけうまくやっても、壁掛けやラグにしか使えないくらいの硬さになってしまう」と書かれていましたが、今回はまさにその通りでした。そんな感じの硬さです。

毛皮を鞣す際、一番注意する点は、濡らす事で起こる脱毛を防ぐというところだと聞き、そこには相当神経質に気を使ったのですが、実際にやってみると、水の中であまり革を動かさなければ、それほど神経質になる事はないことが分かりました。

以下、もし次の機会があれば、こうやって鞣す、という覚え書きです。


1、冷凍状態で届いた皮を一晩自然解凍後、水にて完全解凍。その際、何度か水を入れ替えて毛皮に付いている血や汚れを落とすが、終わり近くで洗剤を入れ、洗っておく。そしてすすぎの最後辺りでホウ砂(Borax)を水に混ぜる(バクテリアの繁殖を防ぐため)。

2、皮を吊るして30分程脱水させる。その後、古タオルで毛から徹底的に水分を取り、さらにドライアーで乾かす。

3、この時の皮は非常に重いので、普通にビーム(通常丸太。僕の使用しているのは水道管)の上で作業をするのは難しいので、小さな椅子に腰掛け、片一方の太もも辺りにビームを載せる様にして、腹で皮とビームを固定する要領で、ウェットスクレイパーにてFLESHING。

4、そのまま乾かしていき、ある程度のところでフレームに張る。8割方乾いたら、ウェットスクレイパーで落とせなかった脂肪やメンブレンを柄を外して軽量化したドライスクレイパーで削り落とす。

5、フレームから外し、徹底的に脂を除去するために洗う。脱水後、タオルとドライアーで乾かした後、塩漬けにして強制乾燥させる。

6、強制乾燥後、強塩水で戻す。

7、今回は酸と硫黄系の鞣し液を使用したが、次回は脳漿のペーストを手で擦り込む。

8、濡れタオルを上にかけ、ビニールシートで覆うか、畳んでビニールに入れて一晩浸透させる。

9、再びフレームに張り、メンブレインが残っていて充分に浸透しなかったところを、スクレイパーや軽石を用いて繊維を砕いて行く。

10、フレームから外し、再度脳漿を浸透させる。今度は脳漿をとけ込ませた水を使う。折り畳んでビニール袋の中に入れて一晩浸透させる。

11、穴や裂け目の補修。

12、充分に脳漿が浸透していなかったら、9〜10の作業を繰り返す。その際、脂が邪魔になるようなら、脱脂をする。

13、充分に脳漿が浸透していればフレームにかけ、9割方乾いたところで STAKINGを開始する。完全に乾くまで続ける。

14、燻製にする。トリミングは可能な限りしない。



注意点としては、フレームに張る際、形が歪む程強いテンションをかけないということ。
今回の鞣しでは、かなり強いテンションをかけたため、大分歪んでしまいました。

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さて、今回のプロジェクトで本当に一番大変だったのは、資料がまったく無かった事です。幸い脳漿鞣しの鹿革の輸入を機に出来た友人達や、輸入した数冊の本のお陰で助かりましたが、実際のところ英語版ブログを読んで頂ければ分かりますが、僕はそれほど英語が得意ではありません。最初の頃等、"Slip"を滑ると直訳して「意味が分からん」と悩んでいた程でした(これは、ここでは”脱毛”を示します)。
が、鞣したい一心で読んだ英語資料は、鞣しの本3冊、友人達からの英語のメール481通。このメールは一件平均A4用紙1.5枚分。つまりA4を700枚以上の資料、そしてウェブで集めた資料が200件。
これに日本語で書かれた書籍、メール、ウェブを足すと我ながら気の遠くなる様な量です。
正直、良く読めたなあ。

またこの間、それだけをしていたわけでは無く、メールの返信(もちろん主に英語)、ブログの更新、コロの世話を含む雑事、そして仕事も普段の分量に比べれば落ちたものの、休まずやってきました。
人間、本気になれば、なんだって出来るんですね。
きっと今後も僕の血肉となって、色々な局面で先々の杖となると思います。

最後になりますが、こういったことが出来たのは、ひとえにまわりのサポートがあってのことでした。どれだけ死ぬ気になっても、それが無ければ、何も出来ませんでした。
この場を借りて、お世話になった皆さんに、心からお礼申し上げます。
有難うございました。

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by oglala-beads | 2007-01-22 17:47 | 鞣し関連(熊)