カテゴリ:共生のサイン( 6 )

食べかけのジャガイモ

10月末で、罠の駆除期間中設置が終了しました。私は村の2台の箱罠の管理を任されております。
実は私は罠を使うのが非常に苦手です。実技的にではありません。精神的にとても苦手です。
それでも去年までは騙し騙しやってきて、そこそこの数を間引いてきたのですが、今年はついに心が折れました。どうしても出来なかった。結局一頭も獲りませんでした。

その事を村からどう思われているか、正直分かりません。でも、今日村の寄り合いの際に横に座った方からその事を聞かれた際に、正直な自分の気持ちを言ったところ、とてもよく理解してくれました。しかし次第にその方の声が、水の中の様に聞こえてきて、気付いたら血の気が引いていました。慌てて席を抜け出し、泣きじゃくりながら雨を見ていました。

私は、何事も、出来る人と出来ない人を同一に考えて同じ事をやらせるのが嫌いで、出来ない人に無理にやらせることはないと考えています。
分かりやすく言うと、例えば「ブタのいた教室」という映画。きっとそこで描いていることは尊い事なのだろうとは思うのですが、しかし、多人数の出来る人と出来ない人に同一にそれを押し付けるのはどうかと考えます。出来ない人のための逃げ道は用意されているのだろうか。それを皆が認めるのだろうか。出来ない人の尊厳は守られるのだろうか。

きっと私は、本当は殺せない人なのだろうと思います。でも、殺せない他人を認めているのに、殺せない自分を許していない。
そうまでして人のためにアクセサリーを作り続ける必要があるのかと思うけど、それでも引き返せない。


大きなメスの猪だった。罠などというものを知らない無邪気な子だった。だから時間はかかったけど、簡単に獲る事が出来た。とても楽しみに毎日罠に通っているのが分かっていた。毎日イソイソとやってきては、音符マークを飛ばしながら、嬉しそうに食べていた形跡があった。選り好みをしない子で、私のあげたものを素直に残さず食べていた。
突き殺し、罠から引きずり出して、ふと罠を振り返ると、彼女の食べ残したジャガイモが、罠の中にポツンと転がっていた。
朝の光を浴びて、彼女の最後の悦びが、小さな小さな影を落としている。今も、私の心の中で。
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by oglala-beads | 2013-11-03 20:25 | 共生のサイン

動物避けネット

山村では、山際に動物避けネットを張っている所が多いです。近年はそれに電気柵を追加している村がほとんどです。
それぞれに一長一短があり、管理が必要です。

この動物避けネットというのは大体が海苔の養殖網の再利用であり、高さが180cmしかありません。この高さではほとんどの大人の鹿は飛び越せる上に、ネットにはステンレスの糸が編み込まれているとはいえ、うちの猟犬でも一噛みで切れてしまう様な強度ですので、イノシシや熊にとっては何の障害にもなりません。
また山という地形上、ネットの下端を完全に沿わせて潜らせないようにすることは、管理するものにとっては非常な労力であり、過疎化するほど、高齢化するほど、村にとっては大きな負担となっており、動物の侵入を許す結果となっております。
まずは以上を踏まえて下さい。

初夏。子鹿が産まれ、母親について歩ける様になると、母親は山の色々を子鹿に教えて回ります。その中には、山から山への渡りや、人里界隈の利用の仕方も含まれます。ですので、山里で暮らしていると、この時期に最も、メス鹿が注意を促す際に発するピっという声を夜に聞くことが出来ます。

この時期、小鹿にとって動物避けネットの潜り方、越え方というのが、非常に大きな試練となります。この時期はだいたい大きな群れを作らず、せいぜい数頭で子を引率しております。親がネットを越える際、この時期の親は大概がネット下を潜るのですが、ネット向こうに居る母親を見て、焦った子供が無理にネットに当たっていって、足や首が絡まってしまい身動きがとれなくなることがあります。

また、母親がネットを飛び越えて畑などに飛び込んでしまい、行きは子供も飛べたものの、出る際は足場の悪さ等で子供のみ出られなくなることもあります。

夜のうちに、こういった次第で身動きがとれなくなった子供は、人の目に触れやすい場所なら人の手で処分されます。つまり、我々駆除班員によって殺されます。
人の目に触れにくい所だと、そのまま飢えて死んだり、熊や狸やテンに襲われて、生きたまま内臓を食べられる事になります。

そんな試練を乗り越えた後は、秋までネット際は少々平和です。しかし秋になり、鹿が発情期に入ると、今度は立派な角を持つ雄鹿がこのネットに引っ掛かって命を落とします。

鹿の交尾は極めて乱行性であるうえに雄は多数のメスによるハーレムを作ります。そしてそのメス達を囲い込み続けるため、メスの群れの回りを回って、ハーレムの囲い込みと他の雄の侵入を阻止するのに腐心します。その間は食事もまともにはとっていません。
その結果、普段は雄は降りない里に降りたり、行動範囲を広げてしまうことで、ネットを越える機会が増えるため、立派な角をそこに絡めてしまいます。
このケースでも、彼を待つのは死のみ。

ここ数日の間、朝の電話はほぼ彼らの殺処分の依頼です。

私に殺される動物は幸せだとよく言われるのですが、私はそう言われることに強い嫌悪感を覚えます。
彼らが死にたいなどと願っているはずはありませんから。
しかし、死後の供養等はともかく、少なくとも死の執行人として私が遣わされる鹿は、最小限の苦しみで済む分は幸せかもしれません。
処分を依頼してくる農家の中には、それを分かって私を指名してくるところも増えてきました。

農家にとっては害のある生き物ではあっても、それを見るのは辛いものです。
農家自身の苦しみを癒すためにも、ネットで落とした命に手を合わせる日、機会を市町村が設定してはくれないだろうか。私はそう願っています。
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by oglala-beads | 2013-10-23 21:58 | 共生のサイン

嫌な出会い

なんとなく予感がしてレディーを呼び戻す。頭をなぜてやりながら予感の正体をさぐるべく神経を集中させていると、100mほど向こうの樹から、熊が枝を折る音が聞こえてきた。
レディーもそんなに馬鹿ではないし、熊も追いつめなければ怖い動物ではないと思う。もう既に数えられないほど山で熊に会って、その内の何度かは追いつめた熊だった。しかし向かってきたのは2度だけ。しかも威嚇だけだった。
でも、この個体とはあまり会いたくない。何故かそんな気がした。
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by oglala-beads | 2013-10-15 10:16 | 共生のサイン

蜘蛛の糸

猟犬レディーのここ1ヶ月の散歩は、熊の来る柿の木の見回り。お陰でレディーが周回している場所の柿には、熊があまり来ない。数日そのコースを歩かないようにしていると、ようやく遠慮がちに登っている。

最初、熊が落とした柿に口をつけたことから、レディーは柿に執心するようになった。まだ青く充分に渋かった頃からである。そういった次第で、柿の木に来ている熊を見回っているというよりは、純粋に柿を食べることが彼女の目的である。

今年は山の実りに余裕があるらしく、あまり柿を食べに熊が降りてこない。例年なら8月のお盆過ぎから青い柿を食べに来はじめる。どちらかというと青いうちに食べておいて、渋さが抜けてきた頃からは食べに来ていない印象がある。私は夏の間の昆虫食で増えた寄生虫を殺す作用で渋(タンニン)が食べたくなるのだろうと理解している。
今年も青いうちから食べてはいるが、例年の様に同じ柿に集中して通い、食べ尽くすと言う事がなかった。気紛れにダラダラと食べに来る印象である。

何となく余裕があり、お陰で選り好みをかなりしてくれたので、熊の味覚と柿の優先順位とをよく観察することが出来た。そして、レディーも、その折々に熊が登っている柿の木の実を喜び、熊が手をつけない柿の木の実は嫌がって食べていないことに気付いた。

さて、レディーが周回しない場所に大きな柿の木があって、それが電気柵の外側に位置しているので、通常なら喜んで熊は来るはずである。ところがその樹には来ていない。何故だろうと思いながらも観察が後手後手に回り放置していた。村の年寄と話をしていた際に違う話から「柿も大きく古くなってしまったら実をつけん様だ」という合点が年寄の口から出た。
なるほど、そういう事だったのか。

一回の散歩で、だいたい3つの柿の実をレディーは食べる。そのせいか食べつきが悪いので、ドックフードの量を運動量に比較すると控えている。
栄養バランスなどの意味では体に悪いのは分かっているのだが、犬も熊も雑食性であり、そういった偏った食生活を続けることでどうなるのかには興味があった。一応ドックフードも体重に対する基準量は食べているので(レディーの運動量は通常の犬の数倍、下手をすると数十倍なので普段のドックフードの量は体重に対する基準の倍以上である)、柿に偏食しているのを許していた。
その状態で1ヶ月が経ったが、レディーの身体は非常に目覚ましく変化した。
元々筋肉質ではあったのだが、更に凄まじく筋肉量が増え、四肢に力がみなぎっている。うっかりすると私が力負けする事すらある。
必要なものを美味しく食べて、熊も冬に備えているのだ。柿なんて栄養無かろうにと思っていたが、全く考え違いをしていた。

村の小道を歩いていると、シバグリがそこかしこに落ちている。雄鹿の遠音が聞こえる澄んだ朝は、村は雲海の中で眠っている。雲海の通りすぎた後はクモの巣に水滴が絡まって、まるで夜のうちに悪い夢、私の愛しい者に仇なそうとした邪悪な心をもつ夢たちが、昇華してゆく様を見るようだ。昔のインディアン達がここからドリームキャッチャーを造り出した想いが、とてもよく理解できる。

順序が逆だが、カンダタを昇華させようとお釈迦様が垂れたのは蜘蛛の糸であった。
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by oglala-beads | 2013-10-07 14:50 | 共生のサイン

カボチャとネズミとフクロウと

先日、私がfacebook上で投稿した写真に関して、尊敬している写真家の宮崎学先生と交わしたやりとりが大変に面白く、前々から言っているメディスンホイールの一端の話が非常に良い具合に表れておりました。残念ながらfacebookでのやりとりは一過性のものであります。それではもったいな過ぎるほど面白い話ですので、先生に許可を頂き、ここに転載させて頂きました。広く色々なお立場の方の目にとまることを祈ります。なお、本文中は敬称を省略させて頂きました。宮崎先生並びに先生のファンの皆様、どうかご容赦下さい。

本文===
ここ数日、農業被害の相談が多い。それでいくとアライグマは僅か一ヵ所、最も良い場所を占めているだけで外に出ようとしていない。ハクビシンが進出中。アナグマは地味に気紛れの様な被害。そんな中でよく分からないものが出た。
噛み跡の大きさはクマネズミの様に見えるのだけど、直径10cmほどのカボチャを数メートル動かしていた。最初テンかと思ったが、地味な歯形がそれとは違って 齧歯目の様。私はヌートリアの被害を見たことが無いんですが、こんな感じなんだろうか。
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宮崎 学 ===
さて、誰だろう…?
このカボチャには、まだ、未練があって囓りそうなカンジ。
カボチャにセンサーとりつけ、触ったらシャッターが切れる。そうやって確認するのがイチバンよさそうだけれど。

岡居 宏顕 ===
宮崎先生、コメント拝読して、さすがだなあーと、配偶者と二人ニヤニヤが止まりません。私は、写真に関しては自分で撮る気がなかったのですが、そう考えるとやってみたくなりました。

宮崎 学===
10cmのカボチャ。数メートルの移動。この歯型。
あくまでも推測ですが、クマネズミの成獣の可能性がいちばんですね。獣害ひとつにしても、まだまだ正確に確認できずに予想が一人歩きしてしまっているところがあります。
そんなところも調べたいのですが、農家の協力がしっかり得られないとなかなかやりにくい面もあります。

岡居 宏顕 ===
あー、予想が先生と一緒で物凄く嬉しいです。それにしてもクマネズミとは厄介ですね。どういう訳か今年は村で多いのか目立つんです。先生はあれを捕まえるの得意みたいですが頭良すぎて私には。
村の協力という点ではうちはやりやすいです。どこにカメラ置いても皆さん喜んで協力してくれます。もし先生の撮影に使えそうな題材があったら、後に残すためにも、啓蒙の為にも、どうか使ってやって頂けると嬉しいです。

宮崎 学 ===
クマネズミ対策でしたら、やっぱりフクロウに活躍してもらうのがイチバンです、ね。
写真のような「止まり木」設置をやっていけばカンタン。(岡居注:写真は著作権もありますのでここには転載いたしません)

岡居 宏顕 ===
うわ!なるほど、そうやって見ると全然この写真の意味が違ってくる!あ〜、すいません、私はまだまだ先生の写真を読み解けていなかったです。鳥肌だぁ〜。有難うございます。早速誘導してみます。

岡居 宏顕 ===
実はこの畑、今年からカラス対策として、天井(?)にヒモをはったんです。はる前はカボチャをこの様に食べられた事は無かったそうです。完璧に符号しましたね。

宮崎 学 ===
ネズミは、超音波を出して会話しますから捕食関係にあるフクロウはその会話活動を必ず聞きつけてやってきますから、ね。
昼間は、ノスリがフクロウの代わりをやりますので。。

岡居 宏顕 ===
有難うございます。ちょうどトマトも終わり、カラス避けの必要が無くなったので、即刻外す様に進言して参ります。この畑の奥は谷で、そこに猛禽類が巣をかけ ています。そうそう、最近、地面に広げてあるビニールシートの下をクマネズミが移動経路として使いたがるのに気付いたのですが、それもフクロウから見えな い様にだったのかもしれないですね。
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by oglala-beads | 2013-09-01 17:54 | 共生のサイン

カテゴリー「共生のサイン」設置のお知らせとそのポリシー

前回の工房雑記に関して、沢山の反響があり驚いております。昨今の自然、Iターンブームにあって、「まだ都会に居て田舎に憧れているの?」的な言説に傷ついておられる方が多いこと。また、都会の中で他の生物や周りの人々との共生の存在を見失い、特別ではないけれど、それでも特別な存在である自分、というものを否定せざるを得なくなっている方のいかに多いか。それらを再認識させられました。

これからは出来るだけ工房雑記の発信回数を増やして、こちらで常日頃目にする様な共生のサインについて発信してゆこうと思います。それは決して田舎への憧憬を深めさせるためではありません。
その中から、割合多く、都会でも見出せるサインがあることに気付く微力なきっかけになることを祈願してのものです。


第一回は我が家の蜂の巣観察日記の一回目。

我が家の敷地内には現在、キイロスズメバチとクロスズメバチ、コガタスズメバチにオオスズメバチが営巣しています。
正直オオスズメバチは怖いですが、山林内で家から離れており影響は特にありません。
キイロスズメバチは2階の軒下に営巣しておりますが、特にどうってことはありません。
クロスズメバチは都会ではあまり目にしない蜂ですが、蜂の子が美味しいとのことで好む方の多い蜂です。私は食べません。よく工房の中にも入ってきますが、放っておいても特に影響はありません。
コガタスズメバチは攻撃性が弱いと言われていますが、この巣をテンが襲って巣板を取って、我が家の一階天井裏に逃げ込むので、非常に怒って家に突進してきます。普段は茶の木の中で営巣して、草刈り機を間近で使っても威嚇することすらなく、平和ですが、実は一番私が恐れている蜂です。
他にも例年は、戸袋の中などにヒメスズメバチが巣を作ります。もっとも攻撃性が弱い様で、可愛いです。

私はこれらを駆除しません。生活に影響がある様な場所に巣をかけようとしていたら早めに追払う程度です。一度嫌がらせをすれば、何度か偵察には来るものの、巣をかけることは滅多にないです。そのためには、女王バチが巣を作る場所を探す5月頃に目を光らせている必要があります。
ちなみに越冬したスズメバチの女王が目覚めて動き出す時期は、種類によって早い遅いがあり、キイロスズメバチ、オオスズメバチ、モンスズメバチ、コガタスズメバチ、ヒメスズメバチの順の様です。

彼らは農業害虫などを狩る益虫として認識されています。でも私の場合、それで放っておくのではなく、ただ何となくです。身近に沢山の生きものが居る方が楽しいので。

スズメバチに関する推薦図書「都市のスズメバチ」山内博美

写真は我が家のキイロスズメバチの巣の様子(8月22日撮影)。まだ小さいです。
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by oglala-beads | 2013-08-22 10:25 | 共生のサイン