カテゴリ:2007年・水上(群馬)初猟( 14 )

猟の話〜最終回〜

「温泉宿のラーメン屋と鳥獣供養塔」



なんせお腹が減った。水上の温泉旅館街にあるラーメン屋に行く事に。途中気温は5度を下回っている。

「明日ぐらい、雪ですよ。きっと」

11月17日。関西では考えられない。

「いいですね〜、それぐらい雪が深いところ、憧れるなあ」

タツさんが黙ってニコニコしている。

「ああ、そっか。実際にそこに住んでいる人からしたら、冗談じゃないですよね」
「大変ですからね・・・・ああ、また始まるのか〜って感じ」
「今でもかなり積もるんですか?」
「去年は本当に雪が無かったんだけど、前の年は結構降りましたね。尚文のあるところはそれほどではないけど、もう少し上に行ったら、2階から出入り出来る位、すごいですよ。うちも昔は凄かったらしいし」

「お!?あれは!?イタチか!?」
「あ、テンですね〜!」
「本当だ!顔が白くて身体が黄色だった。居るんですね〜、結構」
「車で走ってると、ああやって結構出て来るんですよ」

1時間弱走って、水上到着。
行ったラーメン屋は、それこそ温泉宿のラーメン屋という風情だった。収容人数は多くも無く、少なくもなく。座敷があるのが変わっている。テーブル席には旅館の綿入れを着込んだ外湯帰りとおぼしきグループが座っていた。座敷に座り、タツさんが頼んだのと同じものを頼む。ややあって、次から次へと団体がやって来た。
「ちょっとタバコ吸って来ます」
「ああ、タバコ吸うの、ゴンだけだもんな。いいよ、ここですっちゃえよ」
「あ・・・・いや、いいっす。そとで吸って来ます」
ゴンちゃんと入れ替わりで、大きな団体が入って来た。コンパニオンの女の子を数人連れている。何故かチャイナドレスだ。雑踏の様にごった返す。落ち着くのにしばらく時間がかかる。

なんだかボーっとする。うるさいんだけど、コンパニオンを連れたスケベ親父達の団体を見ていると、妙に温かくなって来る。

温泉宿を舞台にした男と女の話に多くの傑作を残した、川端康成が生きていたら、こうした現代の温泉宿の男と女の情景をどう見るだろうか。きっと同じものを見た上で、お互いの中にある疲れを新たに見いだすのではなかろうか。
新たに・・・・・?いや、それは違うかもしれない。彼の「雪国」は僕の愛読書で、何度読み返したか分からない程だが、主人公の島村は、最初から自らの背負っている生活を見せている。そうした生活の疲れこそが悲劇的なラストを予感させる、雪国の静かさと相まって独自の情景を描き出していたのかもしれない。

ゴンちゃんが帰って来る。チャイナドレスの女の子を見て、
「ふう〜!可愛いなあ〜!いいなあ〜!」を連発している。確かに、2人ほど可愛らしい子が居た。
「でも、すごいのも居るよな」
「ああ・・・・居ますね」
ドレスのスリットは、なかなか驚く程上まである。これは酒を呑んでなくとも、生理的に訴えて来るところがある。

ふっと、目の前のタツさんとゴンちゃんを見る。その背中にはコンパニオンになんとか猥談を仕掛けようとしている温泉客達。
背景を知っているせいなのかもしれないが、なんだか非常に二人を孤独に感じた。孤独・・・・上手く表現出来ないのだけど、甘えの無さというのか、やはり生き死を握った事のある人だから?後ろに見えている人達の「疲れ」が、知らないもの同士を繋ぐ隙とか甘えと同種か、もしくは鍵になっているのに気がついた。それはゴンちゃんとタツさんといった対比出来る人間が目の前に居てこそ気付いた事だ。
ターさんや小野さんの姿を思いだしてみるが、やはり、同じ孤独を感じる。

なんだろう?ハンターの背負っている孤独?そして、同じテーブルに座っているからではなく、自分がハンター側に近い場所に居る事にも気付かされた。それは今回参加してなったとか、そういうものではなく、生まれついてのものなのかもしれない。

そういえば、ものごころついた時から、奇妙な違和感の様なものを、いつも団体の中で感じていた。最初は砂粒の様な小さな感覚だったのだが、気付けばつかみ所の無い影の様なものが自分の中にある。つつくと妙な寂しさの様なものを感じるのだけど、それを晴らすために人と交わろうとは思えない。むしろ一人になろうとする。

目の前の二人に、同じ影を見た思いがした。小野さんにも。ターさんにも。ユウ坊さんにも感じるのだが、彼の場合は、もっと違う何か大きなものを感じる。

同じ影を持つもの同士、寄り添って傷の舐め合いが出来るのかと言うと、それはもしかしたら出来るのかもしれないけど、多分出来たとしても、最終的に皆、一人でやっていくのだろう。

強いて言えば、自分の出す音しか聞こえない水の中から、コンパニオンや温泉客達が居る地上を見ている様な、そんな感覚があった。



とまあ、そんな小難しい事は置いておいても、ラーメン、本当、美味しかった!
タツさんは餃子にお酢をドバっとかけていたので、僕も真似をしたんだけど、それがまた最高だった。これから餃子には酢を沢山かけよう!



「さびいなあ・・・・」
利根川の清らかな源流をすくって空に投げ上げた様な、清らかで静かな夜空を見上げながらマンションへ帰る。



「ふう〜!」と、ゴンちゃんが水風呂にダイブする。
「この、変態め!・・・・あ、でもね・・・」
といって、タツさんが、案外身体を冷やしてから風呂を上がった方が、逆にいつまでも暖かいということを説明してくれた。
「身体が自分でなんとかしようとするんでしょうね。逆に暑い状態で上がってしまうと、身体が冷やそう冷やそうとするせいか、すぐに湯冷めするんですよ」
「なるほど、一度試してみようかな?」
「あ、でも、このバカみたいに飛び込んだりは真似しないでいいっすよ!」
「ふう〜!気持ちいい〜!」

「ゴンちゃんは、明日は?」
「小野さん達と猟に行きます。夜には帰ります」
「そうなんだ。そっかあ。獲れたらいいねえ」
「はい(笑)」

酒盛りもほどほどに、眠りにつく。

朝、起きたらゴンちゃんが出かけるところだった。タツさんはまだ寝ている。

「気をつけてね」
「ありがとうございます。じゃ、また」
「うん、また来年」

しばらくするとタツさんも起きて来た。水上を離れる前に、一緒に鳥獣供養塔に行く。タツさんのマンションのすぐ近くだ。
「このマンションだといつでもお参り出来るっていうのもあるんですよ。でも逆に、いつでもお参り出来るから、またでいいかっていう風にもなってしまうんだけど(笑)」
「ああ、なるほど(笑)」

静かに手を合わせて拝むんだけど、礼を言っていいのか、成仏を拝んで良いのか分からず、ただ手を合わせた。それを見越してか帰路にタツさんが、

「謝るんじゃなくて、感謝する。それでいいと思うんです」

とつぶやいた。



「じゃ、本当、お世話になりました。何から何まで」
と改札をくぐる。電車の扉は自動でなく、手動だった。神戸は美人が多いと言われるだけあって、乗り込んでくる女の子達はまあまあなんだけど、皆、妙な可愛らしさがある。
例えば、発車間際に乗って来た女の子。高校生ぐらいか。毛の手袋の端を口でくわえて外し、そのままで定期を出して改札をくぐって電車に乗って、僕の反対の席に腰を下ろし、手にハ〜っと息を吹きかけた。

来年、また来れるかどうかは、呼んでくれるかどうかではなく、自分が行くかどうかなんだろう。それだけのことを、タツさんは僕に見せてくれた。
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今から東京に行って、ビーズのワークショップだ。生徒達は皆、習おうとする意識の高い人達だ。気持ちを切り替えて、全力であたろう。でも、授業の最初に、
「あ、多分、僕、今、獣臭いと思うんです。狩り行って来たんで」とだけ言ってやろう。
この数日間を、ちょっと誇りたい気分だった。


終わり



その晩、タツさんからメールが来て、「あの後、こっちは大雪!尚文で20センチぐらい積もってるよ!本当、いい時に帰ったよ、ヒロさん!」
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by oglala-beads | 2007-12-08 11:59 | 2007年・水上(群馬)初猟

猟の話〜その13〜

「剥製屋さん」

次第に車窓の夜景は都会から山のものになってゆく。途中、コンビニの様なところに寄っては、「リップクリームないかな?」と探しまわるタツさん。

ゴンちゃんは一人で運転しているので、相当眠そうだ。
「あ〜、やばかったです」
「だろうねえ(笑)」

随分と走って、なんだか非常にディープなところへと入って行く。剥製屋さんに到着だ。
回りは相当暗い。
車を出ると、カラオケの音が聞こえて、車が結構停まっている。
「?」
「ああ、実は、この人、カラオケの先生なんですよ」
「え?そっちが本職なんですか?」
「・・・どうなんだろう?土建関連の方もやっていて、そっちが本職なのかな?」
「・・・・」
「今日の昼、飯食いに入ったソバ屋の、あの大きな樹の天板ね、あれもHさんがやったんですよ。尚文のはもちろんだし」
「へー、そうなんだ」
「もとはコケシを削っていたんですよ」
「あー、木地師だったんですか・・・・なんかすごい経歴ですね」
「あ、ヒロさん、ほら、こっちこっち。イノシシ飼ってるんですよ・・・この時間、奴らは何をしてるんだろう・・・・あ、寝てるなあ。まあ、飼われているイノシシだから、野生のとは違うか」

他にも沢山の動物が飼われているらしい。

「おじゃまします」と玄関を開けると、2匹のシーズー犬、2匹のシャム猫が迎えてくれた。
ああ、犬も猫も可愛い。そろそろ、里心というか、コロ心がついてきた(笑)
Hさんは留守だそうなんだけど、もうすぐ帰るからって事だった。
奥さんに、暖かい薪ストーブの傍とお茶と、自家製の沢庵をすすめられる。薪ストーブの暖かい火は、こういう寒い時には何よりのごちそうだ。そして猫や犬が膝の上に乗って来る。お茶を頂き、これまた絶品の沢庵。結構な量があったのが、本当にすぐに無くなった。前にも書いたけど、群馬は漬け物天国だ。

Hさんの帰宅を待つ間、そこここにある毛皮や剥製を見せて頂く。

実は、この剥製屋さん行き、今回の水上行きの重要な目的の一つだった。

僕が自分でアメリカから本を取り寄せて、見よう見まねで熊や鹿の鞣しをしているのは、このブログを見ている方ならご存知と思うんだけど、ともかく日本で師匠と呼べる人が居ない。白なめしの新田さんは、お会いしてすごくエキサイティングだったし、自信を与えてくれたし、これからお世話になる事が多いと思うんだけど、僕がやっている事とはまた少し違っている。
日本の動物や日本で入手しやすい材料、そしてその経路を教えてくれる師匠が居ない、ってことは結構大きい事で、多分それで断念してしまう人がほとんどだと思うのだけど、僕は本業のビーズも自分でなんとかして乗り越えたし、新田さんにも「君はそれがすごい」ってほめてもらったぐらい、正直、僕にとっては本当は何でもない話だ。かえって障害がある方が乗り越えて行く楽しみがある。逆に言うと、自分自身に「絶対やる!」っていう信念さえあれば、障害はかえってイベントの様なものだ。

ただ、僕にとっての決定的な問題は、「プロがやった完成品を見た事が無い」という事だった。
何を理想にして良いのかが分からない。

鹿革に関しては10年以上触って、世界中から良いと言われる鹿を取り寄せて実際に使って来たから、ブレインタン(脳漿鞣し) に関してはかなり客観的な評価が出来る。だから、自分が鞣す鹿に対しても、問題点がすぐに分かるので、自分で言うのもなんだけど、まだ経験が浅いにも関わらず、ビーズ用のブレインタンとしては、世界最高の革に仕上げている自信がある。
しかしながら毛皮に関しては、書籍での知識は数10冊以上のモノがあるものの、現物を見た事が本当に僅かしか無いのだ。熊なんて、自分が鞣したモノ以外、見た事すら無かった。だから、
「どの程度柔らかくすればいいの?」
「毛根がこれだけ出てしまっているけど、これでいいの?」
「指界隈の脂肪と肉は非常に取りにくくて、この程度しか取っていないけど、やっぱりこれじゃ駄目?」
「耳の処理はどうすればいい?」
「トリミングはどの程度する?」
「毛の脂分はどの程度落とす?」
等、実際に触って、見て、出来れば舐めてみないと分からない様な事が一杯だったのだ。

さすがに商品なので舐めはしなかったけど(笑)、じっくり触らせて頂いて、Hさんが帰って来られた時には、もうほとんど疑問点は晴れていた。だからもうほとんど聞きたい事は無くなっていた(笑)

それで、僕があまり色々と聞かないので、タツさんが気を利かせて、というか折角来てるのに、と業を煮やして(笑)結構気を使ってくれたのだけど、今、現実に触って感じた事を頭の中でまとめるのに必死で、実際はあまり聞く事は無かった。
その時、僕の頭の中では、点でしか理解出来て居なかった事が、線を通り越して、面となって沢山の疑問が結合を繰り返し、雪崩の様に一気に解決しようとしていたのだ。

僕があまりに聞こうとしないので、話はタツさんとHさんとで罠の話に移っていた。
タツさんの猟の師匠はターさんなんだけど、ターさん達のグループの中には罠をやる人が居ないのだそうだ。でも、タツさんは「動物の行動を把握して、裏をかいていくには、罠に精通するのが一番だ」と、どうしても罠を勉強したかったそうだ。Hさんは罠の名手だそうで、タツさんの住む地域とは大分離れているんだけど、Hさんを罠の師匠として慕っているそうだ。
Hさんも本当に全て、隠す事の無い、非常におおらかな人で、タツさんの疑問に絶妙なアドバイスを与えていた様だ。

Hさんは、僕が出して来る質問内容を聞いて、僕が大体の事は分かっていると判断されたのか、僕にも非常に絶妙なアドバイスをくれた。多分、鞣しをしない人が聞いたら「?」と思う事が多いと思うのだけど、していて自分で悩んでる僕からしたら、まさにピンポイントなのだ。非常にためになった。おまけに、商売道具であり、鞣しの時に一番大切なスクレイパーとビーム(Hさん自信のお手製)も見せて頂き、鞣し道具のカタログまで頂いた。手荷物の量の関係で、手ぶらで行ってしまったことが悔やまれる。タイミングを見て、お酒でも送れたらと思った。

おいとまする段階になって、ようやく今までの疑問が雪崩の様に解決して、新たな疑問等が湧いて来て、いくつか聞いたのだけど、やはり一度エゾジカ、しかも最大級のものをやってみる必要があるなと感じた。新田さんにエゾジカを回してもらえる様、一度頼んでみよう。

タヌキの話になった時に、
「今、外にハクビシンが居るよ。捕まえたヤツ。要る?達也君、持ってかえってよ。なついて来た頃だし」って仰るんで、タツさんとゴンちゃん、そして僕で見に行った。
「Hさん、これ、つぶすってことだよな(笑)。俺、絶対無理。この大きさの動物、難しい」
「僕も無理(笑)」
「あ、俺、大丈夫っすよ!」
「まじで!?ゴン!?」
「ええ、やりますよ」
「なついて来たの、殺すんだよ」
「ええ、やります」

Hさんにお礼を言って、車に乗り込む。非常に大きな知識を頂いた。もちろん、タツさんとの付き合いがあるからだと思うので、いわばタツさんに教えてくれた様なものだろうとは思うのだけど、Hさんの広さ、本当に恐れ入った。自分の狭さに多いに恥じ入った。

家の冷凍庫には、今年の晩冬にタツさんが道で轢かれていたのを拾ってくれていた、テンが眠っている。早くこのテンを完成させたいと思った。


〜最終回「温泉宿のラーメン屋と鳥獣供養塔」に続く〜
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by oglala-beads | 2007-12-06 12:07 | 2007年・水上(群馬)初猟

猟の話〜その12〜

「食事処」

猟の途中、タツさんが

「ヒロさん、これ、目薬の樹。知ってる?」と聞いてきた。
「いやあ、知らないっすねえ」
「一時、健康ブームで取り上げられて、大人気になってね。山から姿を消す程、取り尽くされた時もあったんですよ。ほら、この樹も、こんな下から切られた跡があるでしょう?」
「本当ですね」
「ヒロさん、目悪いんだったら、呑んでみますか?かるく炙ってお茶にして呑めば効くらしいんで」
「ああ、じゃあ、ちょっと」

で、枝を数本切ってもらって、途中、自然薯のツルで枝をしばってもらった。しかし、山を横巻きしている最中、回りに当たって葉が落ちて行くのが気になる。そこで、葉っぱを全部取って、ナイロン袋に入れた。
「これでよしと」と、枝は道脇に刺して来た。

山を下りて、
「タツさん、葉っぱね、ナイロンに入れたんですよ。最初からこうしとけば歩きやすかったかな?」
「え?ヒロさん、葉は要りませんよ」
「・・・・・・・」
「枝を使うんですよ」
「・・・・・・・」
「え?枝は?」
「置いて来ちゃった」
「あ〜あぁ(笑)。ごめんなさい、ちゃんと言っといてあげるべきでしたね」
「・・・・いや、ちゃんと聞かなかった僕が悪いんです・・・・あ〜!悔しいい!!!」

今回、結構そういう、お馬鹿なミスが多かったです。

これはミスでは無いんだけど、高級爪楊枝になる木も教えてもらって、今、こうしてコンピューターを打ちながら、たまに使ったりしている。


さて、解体も終わって、お昼ご飯に。そのままの格好で食事処に入るものだから、座敷で食事をしていた、いかにも紅葉狩りの都会のカップル達が目を丸くしていた。腰に散弾銃やライフルの弾だもんね(笑)
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これは何も皆がズボラな訳でなく、もし車が盗難等にあった時のためでもある。常に携帯しておいた方が安全ということだ。
タツさんがリゾートマンションで一人暮らしをしているのも、それが理由の一つだ。セキュリティーがかなりしっかりしているので、銃の管理という面で安心なのだ。
小野さんが、「僕の場合は、これを抜いて来てるんだよ」といって、銃のボルト(?)を見せてくれた。「これは一つ一つのライフルによって形が全部違うんだよ。だからその銃の鍵みたいなもんだね。だからこれが無いと、ライフルはただの鉄くずなんだよ」。
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感心して話を聞いてる中、ゴンちゃんが一生懸命メニューを選んでいる。

「いいこと思いつきました(ニヤリ)」
「なに?」
「このね、煮込みうどんっていうのを頼んで、うどんを全部食べたらご飯を頼んで、残っている汁に入れるんです」
「あ、それ、いいかもしれない!」
「すみませ〜ん!じゃあ、煮込みうどんをお願いします!」
「お前、ここおソバ屋さんだぜ!(笑)。うどんかよ。ま、うどんもここ美味しいけどね。・・・ヒロさん、何にします?」
「あ、僕はカツ丼を」
「そば屋だって言ってるのに(苦笑)。まあ、カツ丼も美味しいんですけど」

実際、タツさんはすごくこだわった料理人で、調味料一つにも神経を配りすぎる程に配っている人なのに、人の料理も「うめ〜な〜、うめ〜な〜」を連発して食べている。食べ物に対する感謝っていうのがすごく大きい。こういう姿勢がすごく好きだ。(食後もお膳を厨房に持っていってた。これはやはり商売上のあれだろうー笑)

「あれ?ゴンちゃん、どうしたの?」
「いや〜、ご飯一人分、煮込んでもらったんですが・・・汁でふくれるのを計算に入れてなかったですね・・・」
「おめーはそういう詰めが甘えんだよな(笑)」
「ヒロさん、ちょっと要りません?」
「いやあ、僕もちょっと」
「あ、俺、ちょっといれてくんない?」
「あ、ターさん、食べますか!♪」
「・・・・なあ。・・・・なあって、ゴンちゃん。・・・・ちょっとで、いいでよ・・・・」

食後のデザートとして、丹波の鹿のダニの具合を携帯の写真で見てもらった。
一同、絶句。眉間のシワ。
しばらくしてターさんが、

「・・・こりゃあ、喰えねえで・・・・」とポツリ。

まあ、肉には影響ないし、丹波鹿は美味しいんだけど、鞣しをする時、僕もいつも「ウワ〜」って思うな。


ターさんと小野さんとはここでお別れ。
「また来るんでしょう?・・・うんうん。元気でね。じゃあ、また」
ここ数日間のお礼を言って、別れる。


タツさんと僕とゴンちゃんで、山に鹿の使わないパーツを返しに行く。帰路、鳥撃ち専門のゴンちゃんのために、鴨が来ていないか見に行く。

「多分、まだ来てねえさ・・・・あ!」

三羽ほど来ていた。こちらに気付いて居ない様で、若干近づいて来ている。ゴンちゃんがそ〜っと狙いを定める。が、すぐに遠ざかって行く。タツさんが反対側から追おうとしたのだけど、それも察してか、さらに奥へと泳いで行った。
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この写真を撮ったのは、鴨が向こうに反転してからなんだけど、皆が気を詰めている時には結構大きなシャッター音だった。このせいで逃げたのではないかな・・・・・?

サルが凄く沢山山から下りて来ていた。皆で柿の木にたかっている。小さいサイズのサルはかなり可愛い。
「でも、大きいのは憎たらしいですよ〜。・・・あ、ターさん、サル、大きいの、いっちゃっていいですか?・・・・あ、わかりました。撃てそうならいっときます。・・・駆除の許可出ました。サルの駆除って、頭数が決まっているんですよ」
「そういえば、サルの肉って美味いそうですね」
「美味いっすよ!・・・でも、剥くのは嫌ですね。本当に」
「・・・・ああ、分かるなあ。モロですもんね。つまり、似てるってことでしょう?」

人間にね。


残念ながら、大きなサルは道路越しで鉄砲は撃てなかった。それにしても随分とキーキー言っている。あの声で人が入って来た事を、回りの獲物に教えてしまうこともあるそうだ。

サルは冬になると山から下りて来て、民家近くで暮らしている様だ。タツさんが育てた椎茸なんかも泥棒されるらしい。
全日まではまったく見なかったのに、今日になって群れで降りて来た。昨日のうちに、偵察のサルが降りて来ていたのだろう。空が暮れる頃には、かなりの数のサルが出て来ていた。


その後、ゴンちゃんの車に乗って、前橋まで高速に乗って行く。タツさんの新しい車の引き取りだ。タツさんのランクルは4駆が入らなくなってしまったりで、泣く泣く乗り換える事になったのだ。それでもそのランクルは引き取り手が居たそうだから、ランクル人気は大したものだ。新しい愛車はハイラックス。荷台があるヤツで、確か主に北米市場を睨んだ車種だったと思う。非常にマッチョだが、ランクルに較べると、ハイテク・タツさんという感じで、まだちょっとしっくりは来ていない。なんといっても、ランクルの純正部品みたいな人だから。
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でも、荷台があることで、鹿等の獲物が詰めて楽だと思う。来年会う時には、ハイテク・タツさんになっているんじゃないかな?

ドリンクホルダーを買いに、近くにあったオートバックスへ。ギャル仕様のヤツとかを買わせようと、タツさんをからかう。

僕が履いている靴はミツウマの長靴。水上では自然だったし、どちらかというと見せて履けるこの長靴は逆にオシャレだったが、前橋では違和感あるかも。でもその靴で僕は神戸も歩いているんだけど(笑)

タツさんの新車とゴンちゃんの車との2台で、タツさんがお世話になっている剥製屋さんへ。

〜「剥製屋さん」に続く〜
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by oglala-beads | 2007-12-04 11:54 | 2007年・水上(群馬)初猟

猟の話〜11〜

「鹿の解体」

通常、鹿の解体は足か角にロープをかけて滑車で吊り上げて、皮を剥ぐ事から始まる。
が、今回の解体は、イノシシ等の解体台(タツさんお手製)の上で行われた。
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熊と同じ様な手順で進むため、特筆すべきことは無いので、今回は僕の仕事と関係の深い部分について。
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皮はやはり大分厚い様に思う。この鹿の大きさは、革にする首から尻尾の付け根までの長さが、目測で140センチぐらい。丹波の鹿で、最大級が120センチぐらい。20センチの大きさの違いを差し引いてもかなり厚く感じる。
OGLALAの商品ラインから考えると厚過ぎるかもしれないぐらいだ。
「自分だけ、ずるい!」というクレームがお客さんから出なければ、自分用のショルダーを作ろうかな(笑)。

ただ、丹波の、同じ位の寒さの時の鹿をまだ鞣した事が無いので、厚さに関しては確かではなく、僕のブログを参考に使っている人は、12月の丹波鹿のレポートを待って欲しい(また4頭程やる予定)。

肌の質感等に関しても、ドイツ系だから、といった様なところは鞣してみないとなんとも言えない。ただ、毛根が深そうに見えたので、恐らくグレイニングがかなり大変なんじゃないかなとは思う。

解体自体は、ものすごくやりたかったものの、肉を傷つけそうで怖くて今回も僕は手を出さなかったが、腱の取り出しと脳みその取り出しをした。

昔、平原インディアン達は、動物の腱を乾燥させ、細く裂いたものを糸として使っていた。現代のビーズ糸に較べると、結構欠点が多いのだけど、腱を使わないと出ない味もある。僕もたまにアメリカから取り寄せた腱を使用している。ただ、近年になって、野生動物のパーツ等の輸入が非常に厳しくなって来て、腱もその例外では無くなって来た。
そこで、ひめもみじさんにも「もし取れるようなら、腱を取っておいて下さい。」ってお願いしてあるんだけど、実際に自分でやってみた事が無いので、どこをどう取るかの指示もしにくかった。一番重要な背中の腱に関しては、正直ボ〜っとしてて忘れていて、あとでターさんとタツさんに「背中のはいらねえの?」って言われて、「はっ!しまった!」と叫ぶという、テイタラクさだったが、

「タツさん、これ、前脚、分解しちゃっていいですか?」
「ああ、どうぞ。山に返すだけだから」

ってことで前脚の腱は自分で取り出す事が出来た。
ひづめの根元からナイフを入れて、皮を開く。するとすぐにもう腱が見える。これはすごい!丹波のものより大分太くて大きい!すごいな〜を連発しながら嬉々として腱を取っている僕を、皆が呆れた様な顔をして見ているのが、とても面白かった。

ところで、腱の事を英語ではシンニューと呼ぶ。この言葉、多分革細工を少しでもされている方なら耳にした事があるのではないだろうか。革細工での縫い糸の一種に、ワックスを塗ってあって、太さを裂いて調整出来る糸が売られているのだけど、その糸はシンニュー(=シンニュウ、シンニョウ、シニュー、シニュウ)と呼ばれている。これはもともと、本当のシンニュウである動物の腱を、それっぽく見せる様に模倣して作られているので、正式にはイミテーション・シンニュウ(模倣シンニュウ)と呼ばれている。本当のシニューは動物の腱の事なのだ。

すべての解体が終わって、後始末をしている中、生首がポツンと置かれている。鹿の首はよくトロフィーとして壁に飾られたりしているので、それほど不気味な光景ではないのだが、よく考えると、やはり不思議な光景だ。

「昔、達也が猟を始めたいって言ってた頃、ある日、俺のトラックの荷台に、解体した鹿の生首を積んであったのさ。達也、それを見て、口には出さないものの”うわあ〜”って顔をして、完全に引いているのが分かったのさ。それがよ〜、今では俺より解体うめえんだもんな(笑)」

僕?僕はね・・・実は、全然動じなかったんだけど、だからといって適性があるとかは分かりませんね。最初動じてたタツさんが今では・・・・いや、本当にタツさんの解体は上手いし丁寧です。タツさんの剥いた皮にはほとんどナイフの切り跡がない。これって、凄い事なんですよ。

「タツさん、前に僕が言ってた、あれ、試しませんか?」
「あ、いいですね!やってみましょうか!」

ということで、頭骨の中から脳みそを取り出す、ある手段を試してみる。本来、脳を取り出す為には、ハチを割るか切り取らなければならない。または裏の穴から細いスプーンを入れて掻き出すんだけど、それだと必ず全部を掻き出す事が出来ない。
そこで、僕のアメリカの鞣しの師匠が発見したらしい手法を試してみる事にした。聞いただけでやったことが無かったのだけど、もしこの手法で脳が取れる様なら、恐ろしく簡単だから、気軽に誰にでも頼む事が出来る。

「はい、いいですよ。用意出来ました。じゃ、お願いします」
「はい!」
「・・・・・うおおお!出て来た出て来た!」
「フゥ〜フゥ〜!あ!やらせて下さい!・・・・あ、コツが分かって来ました!」
「え?ゴンちゃん、どうやるの?」
「・・・・ってしないで、・・・・ってする方がいいみたいです!」
「ああ、なるほど!」

ごめんなさいね。企業秘密ってことで(笑)。でも、どうしても知りたい方、今までの僕のブログで実は散々書いてますんで、読み返してみて下さい。

それにしても、ゴンちゃんって、結構頭がいい。


今回の鹿も、解体後は、ほとんど何も残らなかった。全てを利用し尽くす水上の猟師は、本当、インディアンみたいだ。でも、今までは鹿の皮は山に帰してたみたいだから、僕のそれの役に立てて、本当嬉しい。

鹿の毛皮は、毛が切れやすくて利用に困るんで人気が無いんだけど、革は、敷布にすると床ずれをしないそうなので、犬の介護とかには凄く良いらしい。
うちの鹿は燻製にするので煙の臭いがするけど、なにせ洗濯機で洗えるし、洗うと臭いも消えて行く。薬品も一切使わないから、本当、いいものだと思う。

今回の鹿の皮は僕がもらってしまったけど、毎年一頭ずつ、タツさんのグループの誰かが獲った鹿は、僕がその人の記念に、一人一頭づつ鞣してあげて、プレゼント出来たらと思っている。そのかわり、それ以外の生皮はくれるということで(笑)。
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〜「食事処」に続く〜
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by oglala-beads | 2007-12-01 12:38 | 2007年・水上(群馬)初猟

猟の話〜10〜

11月17日(土曜日)

朝、5時頃から何度かタツさんとゴンちゃんの携帯に連絡が入る。
が、二人ともすぐに切って、また寝ているので「やっぱり今日はナシか」と再び寝る。
8時頃だったか、ゴンちゃんに電話が入ってゴンちゃんが飛び起きる。

「タツさん!小野さん達、もう山に入ってます!」
「・・・え?最初、俺に電話があった時、また後で連絡するってことだって、そのあと、お前のところに電話入ってたよな」
「・・・はい。すいません。寝ぼけました。”待ってるよ”っていう電話だったと思います!」
「え〜!!!」

急いで着替えて飛び出す。勿論朝ご飯なんて食べてる余裕は無い。
この数日間はかなりドタバタで、3食キッチリというのは無く、食べられる時に食べておくというような感じだった。実際に脂肪はかなり落ちたんだけど、何故か体重は変わってなかった。全部肉になったのか?

大慌てで山への入り口に取り付く。無線を入れると、小野さんには届かなくて、ターさんにだけ届く。どうも、尾根伝いにお互いが向かい合って歩いている様な感じみたいだ。

別の場所から入って、追い上げて行く。勢子をしながら、獲物を見つけ次第撃つといった感じだ。先頭はゴンちゃん。続いてタツさん。僕は最後。

タツさんが先頭をゴンちゃんにしたのは、まだ大物を仕留めた事の無いゴンちゃんにチャンスを与えてやろうと思ったのと、先頭を歩かせて経験を積まそうとの親心だった様だ。
タツさんはゴンちゃんをボロカスに言ってるけど、かなり可愛いらしく、二人を見ていると微笑ましい。

山道自体は険しい訳でもなく、登山道だと思うのだけど、足を滑らせると横は結構傾斜がある崖。ボ〜っとしていると危ない。途中何度か樹が倒れていて、ゴンちゃんとタツさんは難なく乗り越えていくのだけど、僕だけ金玉を強打する。自分の短足を心から恨むと同時に笑えてニヤニヤする。痛いやら、面白いやら。短足も、それを楽しむ境地に入ると、結構自分で自分を笑えるものなのである。

途中、何度も怪しそうな場所を通過する。下り斜面の崖の途中、熊笹の薮・・・・実際に姿を見ただけで、カモシカ二頭、跡でいうと、鹿(?)、イノシシ、熊・・・大物全部だ。「こりゃあ出るな」っていう感覚があるみたいで、タツさんも機嫌が良いのと悪いのとが混ざった様な、独特の感覚になっているみたいだった。
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獣の居る場所っていうのは、本当に独特の気配がある。
僕が感じたのは、決して暗いわけでは無く、むしろ明るい場所が多かった様に思うのだけど、なんというか重〜い「気」の様なものが満ちているところ。「・・・なんだかなあ・・・」と思っていると、タツさんもそこにピリピリさせているので、あながち間違いでないのだろう。
ただ、残念ながら、遠くの動物の視線を感じ取ることは出来なかった。カモシカがこちらを見ていても、案外気付かなかった。先を行く二人が読もうとしている気配を読もうとするばかりで、山に自分自身の注意を払っていなかった様な気がする。

一本の沢に取り付く。ゴンちゃんとはここで別れる。ゴンちゃんがこの沢を登って行き、タツさんと僕が尾根から回って行く。
「じゃあ」
と、別れた瞬間、ターさんから無線が入る。

「小野さんが仕留めました。運び出しお願いします」
「・・・え?もうですか?」
「はい」
「モノは?」
「鹿」
「鉄砲、聞こえなかったけど」
「ナイフで獲ったんでないか?(笑)。山の反対側だから、分かんなかったんだろうな」
「ターさんからは小野さんの無線届いてるの?」
「入ったり入らなかったり」
「俺の無線には全然入らないよ」
「お宅さん方のハンディーじゃ、無理だろうな」
「ま、じゃあ、ともかく向かいますよ」
「(笑)了解。俺も向かうから。じゃあ、現地で」

「あ〜あ!面白くねえなあ!入ったばっかなのにな〜!」
「せめて銃声でも聞こえてればねえ(笑)」
「そうですよ!まったく無線も聞こえずに、わけわかんないうちに”獲れましたよ〜!”ってね!あ〜あ、銃かついでピクニックだなあ!」

「達也、聞こえる?」
「聞こえますよ、ターさん、どうぞ」
「俺、お前さん方が通って来た斜面辺りの上に今、居るんだけどね。お前さん方は車に戻って、入り直した方が近いと思うんだわ」
「いや、もう面倒くさいから、巻きますよ」
「おお、巻いて来るかい?」
「ええ、そうします」
「了解。ところで、今日は、相棒は?」
「相棒って岡居さんっていう理解でよろしいですか?(笑)」
「ええ、もちろんです(笑)」
「ゴンも居ますよ。さっきから唐松の葉が落ちて来るって思ってて、良く見たらゴンの毛でね〜」
「(笑)これから、ゴンちゃんの番号、21でいいんでないか?」
「(笑)リーブ21番さん」
「・・・・丸聞こえですよ、どうぞ・・・・」(ゴンちゃん)

山を巻いて、反対側に出る。これが結構傾斜がきつくて、足がかりが悪い悪い。途中2度何度足を入れ直しても滑る場所でズルっと行って、横にひっくり返った。とはいっても傾斜が45度以上あるのを横に歩いていたので、ちょっと倒れただけだけど。

「ヒロさん、大丈夫?・・・あ〜、しんでえなあ!失敗したなあ!!暑〜っ!!」
「大丈夫です!しっかりカメラをかばいました」
「(笑)」
「ついでに受け身もしました」

本当、こういうところでとっさに柔道とか少林寺の経験って出るものだ。長い事していた割には、たいして真面目にやってなかったのに。

この日の為に、毎日走り込んだり、山を駆け足で登ったりしていたお陰で、身体は全然キツくなかったし、思った以上に歩けたと思うんだけど、暑くて暑くて。。。。身体にたまった熱を開放する服装を考えないといけないな。あと、水をタツさんにもらってたんだけど、リュックの奥に入ってしまっていたので、すぐに取り出す事が出来ずに、「あ〜、水分が切れてパフォーマンスが落ちている」というのはかなり実感した。考えてみれば、神戸でトレーニングしているときは、事前にかなりの水分をとったりして、非常にいつも恵まれた条件でやっていた。これがもっと水無し、食料無しで、夜になって冷え込んだり、ビパークしないといけなくなったりという極限に近くなったら、いち早くダウンしてしまうのは目に見えた。
実際、僕は水泳をしていたから、肺活量が通常の大人の倍ぐらいあるし、循環器も強いそうで、血液もサラサラ。だからもしかしたら、歩く、走るっていうことで考えたら僕が一番持久力があるかもしれないなあと、二人の状況を見ながら思ったのだけど、条件が少しでも悪くなると、いち早く生命に関わってしまうのは僕だろうと思う。
平地で作った理想的な身体と、山で作られた山に理想的な身体とは根本からして違う。これは、あとで嫌という程、思い知らされる事になる。

山を巻きに巻いて、小野さんのところに到着。それにしても、こういう巻き、山を知り尽くして、何度も道無き道を分け入っていないと、絶対に出来ない芸当だろう。ともかく、六甲山でも、山の感覚が身につくまでは、真似しないでおこうと思う。

「おめでとうございます!」

言いながらタツさんと二人、裸になって、汗を拭く。綿のTシャツはビショビショだ。身体の汗を拭いた後にそれを着たら、冷たくて凍えそうだった。仕方ないので脱いでリュックにしまって、毛のジジシャツを直に着ると、一瞬汗に濡れたところだけ冷たかったのだけど、すぐに(2、3秒で)逆に暖かくなった。毛は最強だ!素晴らしい。
ところでウールの靴下っていうと暑く感じると思うんだけど、実際にはウールは温度を調整してくれるみたいで、夏も涼しい素材なのだ。外気を遮断して体温を守ってくれ、湿気を包み込んで逃がすらしい。だから、犬もサマーカットにあまりしない方が良いって言うし、人間の頭にしても、坊主はかえって暑かったりする。
毛のものが沢山売っている冬の間に、沢山ウールの下着を買い込んでおこう。
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仕留めた時の状況を聞く。どうも勢子に追い立てられたものを、という様な感じではないらしく、ハーレム状の群れで居た鹿で、二頭居たオスのうち、大きい方の一頭をドーンとやったそうだ。ダーっと走って逃げて行く群れの中から狙いを定めるなんて、小野さんもすごい腕だ。恐れ入る。
小野さんは、他にも向こうの尾根辺りに熊が居るのも見たそうだ。子連れだったらしい。
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到着に時間がかかったので、着いた時には鹿は内臓が処理されていた。鹿はすぐに血抜きして処理しないと、肉に酸っぱみが出るらしい。腹もすぐにガスでふくれてパンパンになる。

それにしても大きな鹿だ。色も真っ黒だ。タツさん達は「ドイツ系」と呼んでいる。最大級のエゾジカ並になる個体もいるらしい。
前にニホンジカの研究家に聞いたら、確かではないらしいけど、ハンティング目的で、ヨーロッパのアカジカが日本で放されたことがあったらしいという話だ。それがここ、水上で生きて、ニホンジカと交合していき、独特のものが生まれたのだろうか。その研究家に「それって、研究したら面白いんじゃないですか?」って聞いたのだけど、ジャンル違いなのか、まったく興味無さそうだった。
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熊の時と同じく、ヒモをかけて山を降ろす。今回も写真を撮りまくろうと思ったのに、慌てて出たためか、昨日呑んで入れ間違ったのか、充電をした方の電池を置いて来て、残量の無い充電池を持って来てしまっていたために、写真をあまり撮ることが出来なかった。
そこで、鹿を引っ張るのを志願する。皮をなめすんだから、自分で降ろしてみたい。
ロープを身体にたすき掛けの様にして引っ張る。
「う!?」びくともしない。
身体を前に倒れそうな位に傾けて引いて、ようやく動き出した。でもまあ、なんて重い!20歩ぐらいで既に太ももの前側の筋肉、大腿四頭筋、がパンパンにパンプアップしてしまったのが分かる。頭の血管が切れそうだ。なんて重さだ!これは大変な作業だ。
もちろん、慣れていないせいもあると思う。後で他の人が引いている写真を見ると、「ああ、こうやって引くのか!」って気付いたところもある。でも、タツさんも、ゴンちゃんも、結構余裕で引いている。でも本当、僕は余裕なんてこれっぽっちも無かった。数十メートル歩いただけで、ゴンちゃんの「代わりますよ」の一言に救われてしまった。ああ、情けない。。。
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あまりに情けなかったので、家に帰ってから配偶者を背負ってスクワットなんかもしてるんだけど、そういうのは結構余裕で回数をこなせる。本当に、平地で作った理想的な身体と、山で作られた山に理想的な身体とは根本からして違うのだということを、思い知らされた。

またしてもブルーになる出来事であった(笑)

〜「鹿の解体」へ続く〜
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by oglala-beads | 2007-11-29 12:51 | 2007年・水上(群馬)初猟

猟の話〜その9〜

11月16日(金)

朝起きたら、すでに8時を回っていた。外は明るく晴れているのが、やたらと巨大な液晶テレビ越しに見える。窓は結露しているので、外は寒そうだ。
タツさん、寝坊かな、と寝室を覗くと、布団が身体の形にポコンと膨らんでいる。ははあ〜と笑いをかみ殺しながら起こそうとしたら、もぬけの殻だった。這い出る様に布団から出たのだろうか。ちょうど冬眠から醒めた熊が穴から出る様に(笑)

かなり熱っぽい。喉が熱の味がする。全身に倦怠感がある。あかん。もうちょっと寝て熱を抑えなきゃ。

携帯電話が鳴る。慌てて出たらタツさんだった。
「ヒロさん、今から尚文出るんだけど、出れる?」
「お・・・おはよございます。あれ?今、何時っすか?」
「え?寝てたの?もう12時過ぎてますよ!」
「ああ、すんません。実は熱っぽくて。あ、でも大丈夫です。罠見に行くんでしょ?」
「そうそう。それからどっかで飯食って。行けます?」
「ええ、全然大丈夫です。今から用意してすぐ出ます」

まだ少し頭が重い。厳重に着込んで、バーヴァーのファスナーをしっかり閉めて、体温を逃さない様にする。スパイクの長靴を履いてマンションを出る。外に出て、マンション前を流れる利根川の橋のところに立って、谷川岳を見ていたら、ちょうどタツさんが来た。

「ヒロさん、風邪、大丈夫?」
「やっぱ、ひいちゃいましたね。でも大丈夫。僕は風邪を半日で治す特技があるから。ま、押さえ込むだけなんだけど(笑)」
「あははは(笑)、そうなんだ。罠、かかってかな〜。かかってるといいんだけどなあ〜」
「昨日雨ちょっと降りましたもんね。コンディションとしては、いいですよね」
「そうそう。跡が消えますからね。罠をしかけた」

罠場に到着。残念ながら獲物はかかっていなかった。
「うわ〜、悔しいなあ〜!本道を歩いてやがる!裏をかいて枝道の方にかけたのになあ!」
慎重に罠道を読み解いてゆく。全身、五感を研ぎ澄ませてあらゆる気配を読んでいるのが分かる。わざと少し離れて、出来るだけタツさんと同じ歩調でついていった。
そうして歩いていると、自分も最初にこの罠場に来たときとは違った感覚でモノを見る様になっているのが分かった。なんというか、滅多矢鱈と目を配るのでなく、目以外の感覚を使って、空気で「ここはやばそうだな」という気配の様なものが分かって来た。ある程度、タツさんと距離を置かないと、その気配は消えてしまう。気配を頼りにしていくと、イノシシが身体を擦った樹が、案外楽に発見出来た。そこから気配を辿って行くと、またその先に足跡があったりした。
なるほど。こうやって読むのか。
何回かは、タツさんより先に見つけて、「ここに痕跡あります!」って教える(?)ことも出来た。

そうやってタツさんと森の中に居たのはほんの30分ほどだと思うのだけど、ものすごく充実した時間だった。歩調を合わせることで、近くに居なくても同じ気配を読むことが出来る様な気がした。タツさんが、僕の中に眠っていた、全然使った事のない領域を目覚めさせてくれたんだと思う。風邪はもうふっとんでいた。
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途中、なんか広いんだけど、重い道を歩いていて、イノシシがミミズを探した跡を見ていたら、タツさんが、
「犬が来てる。そんなに古い跡じゃない。もしかしたら今朝かもしれない」と言った。
「鳥撃ちですか?そういえば昨日、セブンイレブンの近くから山に入るところで、バンが2〜3台止まっていて、大きな紀州犬が居ましたよ。あれかな?」
「へえ?犬、一頭だけだったんですか?」
「ええ、少なくとも、見えた範囲では一頭だけでした。何人かの人が気付いてたみたいで、解体の時話してましたよ。大きい紀州だったなって」
「ふ〜ん。まあ、第二ラウンドやるときも、犬いたしね。でもなあ、これ、なんか紀州っぽくなくて。。。外国の犬っぽいような・・・」

前の日、第二ラウンドが始まる前、最初に入山しようとしたら、タツさんが突然、

「あ!ハンターが先に居る!犬連れてる!」と言い出した。
「え?なんでわかる?」
「いや、見えたんですよ。そこの杉の林の向こう」
「え?見えねえよ。見間違いじゃねえのかい?」
「いや、本当。居たんだって。ちょっと行って来ますよ」
「俺も行くよ」

タツさんとターさんで出かけて行った。ほどなく戻って来て、その後から犬を載せた車がゆっくりと出て来た。

「鳥撃ちらしい。ここはもう出るみたいで、俺たちはこっちから巻きをやるから、あんたはあっちから入ったらどうだいって言ったら、そうするって。向こうに行ってた獲物が、あの人が入る事でこっちに戻って来るぞ。イシシ(笑)」

まあ、お互いに獲物を追い合う様な形になる訳で。
それにしてもタツさんの目の良さ、恐れ入る。

森から出て、罠の場所、明日の猟場の事等で小野さんに電話を入れる。喋っていたタツさんが、

「え?小野さんも今朝、ここ来たの!?」と笑い出した。
「え?犬連れて来た?・・・あ、やっぱり!ああ、あの足跡、XXだったんだ!なるほどなあ、紀州にしては違うなあと思ったんですよ。ははは(笑)、おもしれえ〜・・・・・・ま、じゃあ、明日の場所、また決まったら連絡下さい・・・・・・ええ、じゃあ。・・・・ヒロさん、あの足跡、小野さんの犬だって!今朝来てたそうだよ!おもしれえなあ〜(笑)」
「なんかすごいっすね(笑)」

その後も何カ所か回って、タツさんがあらかじめ見込みをつけていたところを見る。来始めている形跡がある。でも本命はさっきの森だ。

「さ、じゃあ、戻りましょうか。ヒロさん、ご飯、どうします?俺、ちょっともう一緒に食ってる時間が無くて」
「ああ、うん。マンション前でおろして下さい。温泉街でしょう?色々と食べ物屋、ありそうだし。あ、おすすめの店あります?」
「う〜ん、ちょっと歩くんですけどね、カツカレーの美味い店ありますよ」
「お!いいっすね!それ行きます!どれぐらいの距離なんですか?」
「ん〜っと、マンションから2キロ・・・・3キロは無いかな」
「じゃ、そこ行きます」
「俺もコーヒーだけ飲んで行こうかな。そこね、仲いいんで、俺なんて、入ったら勝手にカウンター入って、コーヒー入れて飲んで帰るんですよ。しばらく行ってなかったから、俺も話だけして帰ろう」

ということで、その店に到着。ドライブイン風のレストランだ。

「どぞ」

といってタツさんが扉を開けて先に中に入ろうとした瞬間、身を翻して外に出て、僕を中に押し込む。

「こんちわ!・・・・あ、俺は今日は時間ないんで!・・・友達連れて来たんです。カツカレーお願いしますね!・・・・・じゃ、ヒロさん、ゆっくりして行って下さい!」

といってイソイソと車に乗り込む。あれ?コーシーは?という間に、車は見えなくなった。まあ、いいや。

「おっちゃ〜ん!ごめん!カレー、大盛り出来るかなあ??え?出来る?じゃあ大盛りでね!うん、カツカレーで!おっちゃん、美味しいらしいやん!楽しみやなあ」

カウンターにはお客さんで、若干目の鋭い、水っぽいおばさんがタバコをふかしてこちらを見ている。軽く会釈する。

携帯のバイブが鳴る。メールだ。配偶者か?え?タツさん?

「ごめん、ヒロさん!愛想なしで!カウンターのババア、苦手なんすよ!すいません!」

ははあ。そういうことか(笑)

そのタツさんの苦手なカウンターのお客さん、僕が帰るまでずっと心霊現象とかスピリチャルな話をしていた。そういうところが苦手なんかな?(笑)

カレーが出て来る。・・・・いや、確かに大盛りって言ったけど・・・・これ、3人前はあるよね・・・喰えるかなあ・・・・・

残すのは、ケチな関西人の名が泣く!頑張って・・・といいたいけど、結構楽にペロっと食べてしまった。さすがに最後の2口はかなりキツかったけど。

食後にはコーヒーが出て来た。

そういえば、水上来てから便秘気味。タツさんの家のトイレを臭くするのも嫌だったので、ここでしていこう。10分程、フン闘。

「おおきに。まいど」と、普段家でもあまり使わない言葉を使って会計を済ませて外に出る。
地元の人も、「今日は冷える」と言っていたが、僕は厚着のせいか、かえって気持ちいい。
スパイクをアスファルトでガリガリ言わせてマンションへ。15分程か。利根川の源流沿いに歩いて帰る。恐ろしく奇麗で透き通った河。ちょっと降りてみたかったんだけど、スパイクで岩の上を歩くのは自殺行為だからやめておいた。
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途中国道沿いに「谷川開発管理地」と書かれた看板の付いた店舗兼住宅の売り地が出ていた。こんなところでだったら鞣しとか、しやすいだろうな〜とかぼんやりと考える。

空は暮れかかっていたが、トンビが飛んでいた。こっちのトンビはなんとなく白くて、尾羽の形も違うし、羽の角度も違う。あれ?なんだ?チュウヒか?ともかくトビじゃないな・・・・って着いた早々は思ったものだったが、結局トビだった。でも、きしなの電車の中から、シジュウカラの混成群が猛烈な速度で逃げてる後ろを、オオタカらしき猛禽が追って行くのを見た。鳥好きにとってもたまらない場所だ。

子供がちょうど、中学校から帰る時間らしい。幹線道路に面していて、交通量も多くて流れも早いので、対向車線側の歩道に出るには、陸橋を通る様になっている。

丘から流れ出た水が溝を伝っている。非常に奇麗な水だ。それが下まで行き着いて、でもそのまま勢いを失わず、こんどは横の家の溝を、家に向かって登って行っている。家は相当高いところにあるので、いったいこの水、どこで反転するんだろう?んで、反転した水が流れている気配はないけど、いったいどこを流れて落ちているんだろう?と思っていたら、そういう干渉場所みたいなのがあって、一部は歩道に流れて来ていた。それにしても反転した水の流れは?あ、そうか!底の方を流れているのか!っていうんで、溝に腕まくりをして手を入れていると、下校途中の女子中学生達が横目でニヤニヤして、離れて何かを言いながら通り過ぎて行く。
思いっきり大きなクシャミをして立ち上がる。中学生達は笑いながら小走りに遠ざかって行く。

奇麗な鉛色の空に、柿の実がよく似合っていた。



マンション着。部屋に戻って、配偶者に電話を入れて、ここ数日の詳しい話をする。
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「ねえねえ、ところで、今、タツさんの部屋なんでしょう?」
「うん。そうやで」
「ね、ね、どんな感じ?なんかイメージではものが少なくて適度に片付いている感じなんだけど」
「う〜ん、ちょっとイメージとは違うかな(笑)。モノは溢れているね。適度に散らかってるかな(笑)」
「へえ!そうなんだ!ちょっとイメージとは違うなあ。。。ああ、でも片付けてあげたいわあ!ね、ね!やっぱりカップラーメンとかって無いんでしょう!?」
「あ、カップラーメンはねえ・・・うん、かなり沢山常備してる様子」
「あら、そうなの!?でも、タツさんだったら許せるわあ〜!!いいなあ〜!タツさんの部屋の写真、撮って来てよ!」
「え〜!?勘弁してよ!”何撮ってるの?”って怒られるよ!じゃあな、もう切るから!」
「あ〜、いいなあ〜私もタツさんの部屋に行きた・・・ブツッ」

チッ、まったく。

本棚から勝手に本を引っ張り出して読む。僕が興味ある本ばっかりだ。小説とかは無い様だ。
山系が多いんだけど、雑誌や、車やカメラの本なんかもある。
いつだったか、コンビニに寄った時、そういえば熱心にエロ本を見ていたけど(背中を小さくして)、部屋にはその手の類いは無さそうだ。立ち読みなのか。それとも隠しているのか。

まだ買っていなかった、マタギについての本を読む。う〜ん、なかなか面白い。これ、今度買おうかな・・・と思っているうちにまどろんで眠ってしまった。

再びタツさんからの携帯で目を覚ます。
「今、もう下に着きました!ゴンも一緒です!」とのこと。

ゴンちゃんは自称タツさんの一番弟子。かなりタツさんにボロカスのケチョンケチョンに言われているが、へこたれない。僕からすれば、いじられキャラ、かなり羨ましい。
前夜の解体後の乾杯の時も、ゴンちゃんの話で持ち切りだった。

「あれ?ゴンちゃんは土曜日来るの?なんで今日は来なかったの?」
「ああ、あいつ、アデランスだったんですよ」
「ああ、そう。それじゃあ仕方ないね」
「・・・・リーブ21の方が良くねえか?」

ゴンちゃんは普段は静岡辺りに住んでいるそうなんだけど、一応水上人だとか何とか。。。ちょっと良く分からなかったんだけど、なんせ鳥撃ちの専門らしく、大物には興味が無いのかなんなのか??ともかく皆がゴンちゃんをからかうので、ほんとのところはサッパリ分からなかった。

しかしまあ、パワフルな人だ。
「フゥ〜フゥ〜」が口癖で、タツさんにいつも怒られている。

「おまえにゃあ、肉は喰わせねえ。これはヒロさんに喰ってもらおうって思って持って来たんだから」
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「ああ!これ!!!ああ!!イノシシの脂!!!これ、なんつうか、脂が肉なんすよね!!フゥ〜!」
「なぁに、分かった様な事言ってんだよ(笑)・・・・たまにはいい事言うよな・・・・さあ、ヒロさん、食べてよ!これがイノシシの脂!本当、うめえんだって!・・・なんだよ、ゴン!なんか言いたそうだな!肉はやらねえぞ!」
「ええ、あ、いや、本当!・・・・っね!美味いっすよ!本当、これ、ね、なんつうか・・・・ああ・・・」
「いや、本当、そんな風に見てられると喰えませんよ(汗)。ね、一緒に食べましょうよ」
「あ・・・・タツさん、いいっすか!?・・・・あ、いや、僕は喰った事あるんで・・・ああ・・・」
「いや、本当、もう、そんな見られてるとよう喰わんので(笑)」
「ああ、すんません、頂きます!・・・・んめ〜!」
「じゃあ、僕も失礼して・・・・タツさん、頂きますね!」
「どうぞどうぞ!」
「・・・・ああ、ゴンちゃんが言った”脂が肉”っていうの、凄く分かる!」
「でしょう!?たまにはこいつもいいこと言うんですよね」

その他にも、先日穫ってくれていた椎茸とか、もう自然に美味かった。言葉に言えないんですよね。上手い表現が無い。スっと馴染む味。我々の祖先は、この味をもともと食べていたのかもしれませんね。

そうこうしているうちに、タツさんのお母様がいらっしゃった。沢山の食べ物を頂く。短い時間だったけど、計4人で本当に楽しい時間を過ごした。
で、気付いたらもう大概遅い時間。

「明日の猟はどんな感じなんですか?」
「まだ何も決まってないんですよ。どうなんだろうな?なんか中止っぽいですね」
「ああ、そうなんだ」

「ところでヒロさん、今日、罠見に行ってた時、わざと少し離れて歩いたでしょう」
「・・・あ、ばれてました?」
「それに歩調も合わせてた」
「・・・はい(笑)」
「それ、いいことですよ。自分で感じ取ろうとしてんだから。初心者は出来るだけくっついて歩こうとするんですよ。まあ、それの方が色々と教えられるんだけど、問題もある」
「自分で見つけないと応用しにくいってことですか」
「・・・・そうそう・・・・」
「(笑)タツさん、半分寝てますやん」
「ああ!眠い!駄目だああ!」
「明日は中止っぽいってことだし、まあ、ゆっくり寝ましょうか」

ということで就寝。

「ゴン!おめえは廊下だ!」
「え!?あ、はい!そりゃあもう・・・」
「玄関出た廊下だぞ!!」

〜つづく〜
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by oglala-beads | 2007-11-27 09:49 | 2007年・水上(群馬)初猟

猟の話〜その8〜

「解体」
注意!本日の日記は解体現場の写真が多く、血を見るのが苦手な方には体調を悪くする恐れがあります。本来、別ウィンドーで開く様にする等の配慮が必要かもしれませんが、あえてそのまま掲示いたします。そういった映像が苦手な方は、本日のブログはスルーでお願いします。

「ブドウが沢山なってたでしょう?あの沢」
「ええ、沢山は気付きませんでしたけど、ありましたね」
「ヤツは、あれを食べに来ていたんですよ」
「ああ、そっか。足の裏も小さかったし、じゃあ、あの足跡の主では無いですね」
「そうですね。尾根を二つ跨いでいるみたいだし、オスかもしんない。居るんですよね。結構、ここ」

実は昨日タツさんから連絡が入って、第二ラウンドの前夜にタツさんが提案して却下された場所に熊が3頭入っている(居る)のが確認された(見切られた)らしい。他の動物の跡も多く、タツさんの見切りの、恐ろしいまでの正確さを物語っている。

「ブドウを食べに来るってことは、もう冬眠準備が出来たんですよ。それでブドウを食べる。デザートなんですよね」
「???確か冬眠前って、何も食べなくなって、繊維質のものを最後に食べて、けつの穴の栓にするんですよね?”止めグソ”とかって言うんすよね?」
「うん。その止めグソの前に甘いものを食べるんですよ。だから、腸の中、多分冬眠準備に入ってると思いますよ。ヒロさん、これから小野さんのところに行って、解体を見て来て下さい。俺、ちょっと尚文戻って仕事しなきゃいけないから」
「え?今日は全日休みじゃなかったんですか?」
「そうだったんだけど、最近ずっと満室続きで。。。なかなかそうもいかなくて」

尚文は、つい最近も西郷輝彦が来る旅行番組でタツさんに密着取材があったりで、知る人ぞ知る宿としてリピーターさんが多い。僕が尚文の厨房でタツさんお手製の揚げたてのテンプラなんぞを頂いている時も、しょっちゅうリピーターさん達から予約の電話が入っていた。この時代、なかなか感謝して自分の腕で獲って来た獲物を出す様な宿は少ない。「こだわり」なんて言っても、宿に関わらず、通り一遍なものばかり。仕入れ先は皆同じ。そんな中にあって、タツさんの料理へのこだわりは生半可なものではない。

「でも、今日の場所を見切ったのタツさんだし、主役みたいなもんやないですか。居ないと皆、寂しがるんじゃないですか?」
「いやいや、それは無いけど(笑)・・・出来るだけ早く終わらせて行きますよ。」

ということで、タツさんのマンションの前でタツさんの車から降りて、駐車場で堂々と裸になって着替えをする。Tシャツはビショビショで絞れるほどだった。やばいやばい。風邪ひくところだった。着替えを持って来ていて良かった。
マンションからは、ユウ坊さんの車で小野さんの家へ向かう。ユウ坊さんは千葉在住なんだけど、群馬で狩猟登録をされている様だ。ミクシーで何度か顔を合わせていたのだけど、絡んだ事は無いし、お会いするのは初めて。とても気さくで優しい方だが、芯がしっかりしていて足が地に着いている様な安定感のある人だ。おまけになかなかの二枚目である。タツさんが一人暮らしをしているリゾートマンションにも部屋を持っているそうで、水上滞在時はここに居られるのだそう。

「今晩、帰らないといけないんだよ」
「え!?マジっすか?じゃあ、あまりお酒呑めませんね」
「ね〜、残念だね〜・・・あ、ちょっとごめんね、家族にお土産買って行きたいんだよ。ちょっと待っててくれる?夜だと開いてないから・・・」

といって路傍にあるリンゴの直売所に寄る。
そういえば僕も家族にお土産を買いたいな。と、ユウ坊さんにくっついて直売所に入る。試食があったのだけど、ユウ坊さんが「これ、美味しい!」と決められた、「群馬水月」というリンゴの甘さに僕もすっかり魅了されてしまった。そういえば母は大のリンゴ好き。配偶者も好きだったはず。で、荷物に入るかを心配しながらも、2パックも買い込んだ。

「いやあ、ユウ坊さん、お陰様で良いおみやげが出来ました!ありがとうございます!」
「いやいや、良かったね〜」
「・・・あ!今、道を何か黒いのが横切りましたよ!」
「え!?本当?あそこ結構熊とか居るらしいよ。熊じゃないかな?ちょっと足跡見とこうか」
「う〜ん、熊にしては平べったかったんですが・・・」
「イノシシかもしれないよね。黒く見えるとしたら、熊かイノシシだと思うんだけど」

Uターンして見たものの、それらしき足跡は無い。第二ラウンドの熊と違って、今度はハッキリと見た(様に思うー笑ー)。大きさからして、タヌキかもれしないということで落ち着く。

小野さん宅へ。もう大分人が集っている。

「あのね、キー坊君、悪いけど、人数分、弁当を買って来てよ」
「あ、俺、もう少ししたら帰らないといけないんですよ」
「あ、そうなの?じゃ、本当、申し訳ないんだけど」
「・・・・・・・・・」

やっぱりキー坊さん、いい人みたいで、使われている(笑)。そういえば、

「明日、忙しいんだよ。ボランティアに行こうと思ってて」
「休みゃあ、いいじゃん」
「そんなわけにいかねえよ(笑)、俺の方からお願いして、行かせてもらうんだもん」

って会話があったような。顔は本当におっかない人だから、そのギャップが余計いい感じ。
そのキー坊やさん、先日ついに大物を仕留めたらしい。なんか自分の事みたいに嬉しかった。

「・・・じゃ、行って来ます」
「うんうん。悪いね。頼んだよ・・・・・・キー坊君のジムニー、すごい白煙だよね。後ろ走っていると、前が見えないんだよね(笑)」

そうこうしているうちに、回りは真っ暗になっていた。電球を持ち出して、ビニールシートを下に敷いて、解体が始まる。

まずは熊の身体を簡単に洗う。
次に皮に切り込みをいれていく。執刀(?)はタツさんの師匠、ターさんだ。みな、あだなはカタカナ一文字が多い。僕も「ウーさん」なんて呼ばれたいものだ(僕の名前のどこにも”ウ”はないけど)。
この切り込みの入れ方にはものすごいコツが要る。不用意にナイフを入れると、内臓に傷をいれることになる。また、切る形によって、鞣した時の革の形が変わる。
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水上でとった熊を鞣す場合、昔は寝る時に下にしていたそうで、これを敷くと、どれだけ寒い夜でもトイレに行かずに済んだのだそうだ。だから必要以上の柔らかさも要らないし、形は出来るだけ四角く仕上がる様にする。
通常、壁掛けにする場合は、出来るだけ熊っぽい形に切るため、切り方自体が大分違うのだ。
その秘伝の切り込みの入れ方も見て、写真に撮る事が出来た。「やれ」って言われても、出来るかどうかは分からないけど(笑)
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次に内臓を抜いて行く。まず、尿が溢れない様に膀胱の口を縛る。次に大腸をしごいて便を出し、肛門に新聞紙を詰めておく。
腸の中にはまったく便が無く、奇麗そのものだった様だ。タツさんが言っていた様に、冬眠準備の最終段階だったのだろう。
そうして外した腸は一カ所にまとめられる。熊のモツは美味いのだそうだ。

「これは達也(タツさん)が喜ぶからな。置いといてやるんだ」
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次に心臓等、色々な臓器を取り出して行く。それらも一カ所にまとめる。と、そこで、

「ほら〜、これが熊の胆(い)だ」
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と胆のうが出て来る。熊の胆は漢方薬として非常に高価で、今も昔も「熊の胆1グラム=金1グラム」と言われている。熊猟師の一番大きな現金収入だ。本来は、穴入り(冬眠)前の熊よりも冬眠から醒めた直後の熊のものの方が良質と言われている。
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胆汁がこぼれない様に、慎重に口をヒモで縛って取り出す。取り出されたものは犬にイタズラされない様に、いったん高いところに吊るされた。
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内臓がすべて取り除かれ、いよいよ肉の解体にかかる。と、ここで、

「暗いから車庫に移そう」

ということになる。
以前、熊の生皮をタツさんに頂いて鞣した時には、結構脂の臭いがしていたが、やはり新鮮なせいか、食べ物のせいか、臭いが全然しない。
食べ物といえば、今年は木の実が大豊作だったようで、この熊は非常にでっぷり肥えている。縦の大きさより、横の大きさに驚いてしまった。

「身体の割に、手足が短くて、手のひらもちいせえよな」

人間で言うと、山田花子型か。

沢山食べれてるから、今年の熊は冬眠に入るのが早そうだとの事。

兵庫の山は、ほとんどが人口植樹なので、杉がメインだ。見た目、9割杉といっても良いかもしれない。なので、ドングリが不作で熊が人里に降りて来たら「こんな山にした人が悪い」ということになるんだけど、水上の山は杉が本当に少なく(一部多いところもあるが)、逆に杉があると年中黒いので目立つぐらいだ。そういうところでドングリが凶作だからといって熊が降りて来ても「人間が悪い」っていうのはちょっと違いそうだ。都会に住む人間は、熊が駆除されたといっては、(こんな山にした)先人が悪いと言ったり、(熊に襲われる様な)里山に住んでいる人間の方が悪いのだから、駆除なんてとんでも無いと言う。色々な考え方があるから、先人のせいにしたり、里山に住む人のせいにしたりするのは勝手だけど、少なくとも彼らは先祖代々そこに住んでいるのであり、彼らが居たお陰で動物との住み分けが出来ていた事、そして必要があったから先人達は山を切り開いていったことも忘れてはならないと思う。皆、両者の世話になっているのだ。何かを非難するよりは、それを認めた上で、次に何をすべきかを考えるべきではないか?

水上は資源が豊富で、よその地域に比べると野生動物の数も多い様だ。特に熊に関しては、他の県がどんどん熊の駆除や狩りを制限もしくは禁止しているのに対して、まだ規制は緩いと思う。それに対しては保護団体等から恐らく多いに叩かれているのではないかと思う。いずれ水上でも熊猟は禁止になるのではないかと思われる。しかし、ここ水上では、昔、猟師達が熊の生態数を上手く調節して里山の住み分けのルールを人と熊との間で作っていた様に、今でもその役割を猟師が上手く担っている様に思う。懸念すべきは、外部からのレジャーハンターの流入だろうか。

熊の胆が金になるからといって、熊の駆除という名目で乱獲されている県もあるそうだ。しかし、ここ水上で、少なくとも僕が見た猟のグループは、実際に熊の胆を、目の色変えて欲しがっている人は居なかった。他の人への遠慮もあったのかもしれないが、皆、熊の肉と脂を均等に分けてもらったものを、ビニールに入れ、嬉しそうに持って帰っていた。僕もいっちょまえに人数に入れてもらった。そして、あとにはほぼ、何も残らなかった。捨てるものは殆どなく、皆、食べたりして利用された。

インディアンのハンター達が、獲物を無駄にしないという事を尊ぶのなら、水上の、タツさん達のグループも尊ばれるべきであろう。インディアンのハンターは、白人に毛皮を売る様になってからは処理しきれない程の獲物をとって腐るにまかせていたこともある。タツさんのグループは、先祖代々続いて来た巻き狩りの伝統を守る事でもある。だからこうやって解体を若手に見せ、積極的に参加させているのもあると思う。

そんなことも考えて、今回は僕は解体には手を出さなかった。たまに切りにくいところを押さえたりしたぐらいだった。あくまで今回は撮影係に徹した。本当は、特に皮剥ぎを、すごくやってみたかったのだけど。
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そんなことを考えているうちに解体は完了した。本当、あとには何も残らない。ごく一部を山に返しただけで、殆どが皆に分配された。
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さて、熊の胆と、皮は?

熊を最後しとめたハンターさんの所に行って、ターさんが、巨大な背中を丸めて申し訳無さそうに、言いにくそうに、

「あのさ、もし出来たらなんだけどね、今回の胆、もらえないかな・・・・?」
「・・・ああ、いいですよ」
「いや、あのさ、実はね、俺の知り合いで、結構悪いガンのヤツがいてね、そいつがこれを呑むと随分楽になるって言ってね、前に俺がやったやつを、えらく喜んでいたのさ」
「ええ、ええ」
「でね、喜ぶだろうなあ〜って思って。いや、実は頼まれていたのさ。だからちょっと相談して金額出して、それを皆で分配させてもらって・・・」
「はいはい」
「悪いけど、それでいいかね?」
「ええ、僕は全然いいですよ」
「本当?すまいないね」
「いえいえ。全然」

「お〜い、皮、どうするね?」
さっきの熊を最後にとめた人が当然もらうだろうと思ったのだけど、
「いや、俺、家に一頭あるんで、いらないです」
最初に撃った人に聞くものの
「いや、いらないです」
との事。

皆が僕を見る。前にタツさんに駆除の熊をもらったことを知っているからだ。

「ここに居る人、みんな優しいから、”下さい!”って言ってみな!多分みんなあげる!って言ってくれるよ!」

ウ〜ン、正直、気持ちとしては本当、情けない勢子だったんだけど、やっぱり初参加の熊だったんで、やっぱりどれだけお金払っても欲しかったです。でも、前に熊を鞣した時の大変さ、家で鞣す事で色々出て来る問題や家族や近所の事を考えると、

「いや、もう、熊なめすのって、本当大変だから・・・」

という言葉しか出なかった。

最終的に、タツさんが鞣してみる事になったみたいだから、僕もそれ以上無いと思って純粋に嬉しかったんだけど、もう一度、生きているうちに日本の熊、ツキノワグマを鞣してみたいってそう思った。理想を言うと、自分が関係している熊だと最高だ。
まあ、遅かれ早かれ、僕も銃を持つ事になると思うから、その時に、そんなチャンスが巡って来てくれたら、本当、嬉しい。
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解体が終わって、皆で座敷で熊鍋を味わった。キー坊さんが買って来てくれた弁当も食べた。

「あ、弁当、一人400円ね」
「はいはい」

・・・・はっ、しまった!さっきリンゴ買って、持って来てたお金全部使ってしまったなあ!タツさんのマンションに戻らないと、無いや・・・

「小野さん、すいません、実は・・・・」
「ああ、もう、そんな細かい事、気にしないでいいよ。大きく行こう!大きく!人間がせせこましくなってしまうよ!」
「いや、しかし・・・・」
「もう、いいから!いいから!」

てことで小野さんにおごってもらってしまった。

ひたすら恐縮していると、タツさん登場。おおいに盛り上がる。

程なく、小野さん宅を辞す。

「岡居君、また、くるんでしょ?」
「ええ、絶対。それに土曜日も参加しますよ」
「そりゃあ、いいよ。これで土曜日も獲れる。君、うち、いつでも泊まっていいからね。本当、嫁さんに追い出される様な事があったら、いつでも来なさい」
「有難うございます」
「そうそう、家にね、余ってる鉄砲あるから。あげるよ」
「小野さん、ヒロさんを鉄砲ぶちに仕立てようと思ってるでしょう(笑)」
「いやあ、あんなのも、買うと高いからね。買わないでいいから。僕があげるから」
「いやいや、ほんま、まあ、その時はお願いします・・・・」

「小野さん、上機嫌でしたね」
「そりゃあ、めでたいもん」
「皮、なんで撃った人がもらわなかったんでしょうね。何枚あってもいいと思うんだけど」
「それね〜、俺が思うに、最初にXさんが尻を撃ってるでしょう?あれ、最初にぶったのXさんってことで決着したんですか」
「ええ、してましたね」
「じゃあ、Yさんからしたら面白くないでしょう。手負いを仕留めたって。だからじゃないかなあ」
「なるほど・・・・・」

その後、ユウ坊さんを交えて、一緒に大浴場へ。色々と話をする。多いに楽しかった。
*タツさんにリンゴを買った事「なんで地元に相談しないで買ってしまうかな〜!安く手に入ったのに!」と怒られてしまった(笑)

〜つづく〜
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by oglala-beads | 2007-11-26 12:59 | 2007年・水上(群馬)初猟

猟の話〜その7〜

「運び出し」

鬱々とした気分が一気に吹っ飛ぶ。手負いの熊がこっちに来るかもしれないという緊張感はすごい。死をかけて対峙する気になっていた。それだけに「とめた」という報告は、掛け値無しに嬉しかった。
3人、上機嫌で獲物が死んでいる沢に向かう。尾根を一つ二つ越えたところらしい。
降りる途中、さっき僕が見た黒い影についてタツさんに詳しく説明する。

「位置的に樹が立て込んでいて、ちょうどキー坊さんとタツさんからは見えなかった位置だと思うんですよ」
「でしょうね。全然分からなかった」
「正直、熊にしては小さい様に思ったんですよ。大きな犬ぐらいに感じたんです」
「あ〜、あのね、走ってる熊って、前後が詰まって小さく見えるんですよ」
「あ、そうなんや。。。それにしても、すさまじいスピードでしたよ。犬ぐらいあったんじゃないかな?」
「足跡もあったんだし、熊の可能性は充分ありますね」
「だとしたら、仕留められた熊ですかね?」
「尾根一つ向こうみたいだし、可能性は充分ありますよね」

確かに見た様に思ったんだけど、人間って、あまりに自分にとって非現実なものは錯覚と認識してしまう様ですね。僕もそうだったのだろうか。自分のすぐ横の斜面を熊が猛スピードで走っているなんて、やっぱりハンターで無い今の僕からしたら、非現実な光景だろうから。

沢の入り口に到着。
狭くて深い沢だ。
他の位置に居たタツメも集って来ている。
「ちょっと足場が悪くて険しいから、足悪い人は、ここで待機しててよ」
ということで若年組(とはいってもタツさんが一番年下だ)が中心となって沢を上がって行く。
滑って転んで、足をくじく人も出た。ケツゾリで斜面を降りる人も居る。
途中、タツさんの師匠のターさんは、帰路に邪魔になりそうな樹をナタでいとも簡単に伐採してゆく。
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「ヒロさん、ターさんはナタの使い方、凄いんですよ。簡単に切っちゃうから、見といた方がいいよ」
本当、やっぱりすごいな。
僕は居合道試し斬りをするから、日本刀を使って竹や藁を切るのは得意で、そこそこの成績を残しているんだけど、ナタは違うな。やっぱりモノが違うと力を入れるポイントが違うんだろう。次に猟に行くまでに、ナタの使い方もマスターしておこう。

15分ほど沢を遡って、獲物の熊とご対面。皆、誰の顔も笑顔だ。
「おめでとうございます!」
とめたハンターさんが会心の笑顔で、とめた時の話をしてくれた。

「沢の下で(タツメとして)いたらさあ、銃声がして。出たか〜?って思ってたら”とめられなかった”って無線が入った訳よ。で、”どっち行った〜?”っつっても、”逃げた〜!下のタツメ、注意しろ!”ってばっかりで。”右か?左か!?そもそもモノは何よ?”つっても、それでピッタリ返事なしでさ。もういいや、って思ってじっと見てたら、上の灌木のところから黒いのがス〜っと顔を出したのよ。で、来たか!?って思って見てたら、身体を出したんだけど、野郎、俺に気付いたのか、左に変わろうとしたのよ。野郎、逃がすかって、ド〜ンと撃ったら、樹に当たった様な手応えがあったんで、もう一発ド〜ンといったら、ゴロゴロゴロって、転がってきやがって、肝冷やしたよ〜。でも止まったからね、怖々見に行ったら、まだちょっと動いてる様な感じがして、もう一発ドーンとやったら、舌出したもんで、やった〜って(笑)」
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各自、熊と記念写真を撮る。僕は、ハンターサイドとして参加するまで、この獲物とニッコリ笑って撮られた写真って、正直言うと好きでなかったんです。多分、このブログを見てる方は皆、そう思ってらっしゃる方が多いと思う。でも、実際に今回、自分も猟に参加してみて(とはいっても、何もしていないのだけど)、そういう写真を撮るの、ものすごく分かりました。
それは、上手くはとても説明出来ないのだけど、獲物を冒涜して死体に鞭打つというよりは、逆で、とても何だか神聖な想いがあった。僕も、だからタツさんにお願いして、僕のカメラで撮ってもらった。正直、全肯定出来ない事もそこではあったのだけど、この感覚、多分実際に猟に参加しないと分からないと思う。
後にして思えば、この時を境に、僕も感覚がハンターサイドに行った様に思う。
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初めて持った熊の頭は重かった。なんともいえない独特の感覚だった。
ところでこの写真、なんだか疲れきった子供みたいですね(笑)
借り物の大きなベストと帽子と、それに睡眠不足のせいかな?
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ひとしきりの歓喜の輪がほどけて、タツさんが山から降ろす準備をする。口に棒を噛ませて、細引きで口を縛る。手足も縛って、各々を数人で引っ張って、元来た道を道路まで運び出す。
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「いや〜、それにしてもめでたいな!初猟の日に熊が獲れるとは、本当、めでたいよ!」
「いや、本当、この人が居たら、絶対獲れるっていう人、居るんだよね。カメラマンさん、あんただよ!」
「それによ、あんた本当についてるよ。今まで何人もカメラマンを同行させたことがあるんだよ。中には世界的に有名なカメラマンも来たんだよ。でも、誰一人として、今まで熊の運び出しを写真に撮れた人は居なかったんだよ。あんた、沢山撮っときなさいよ」
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まあ、本当、なんて光栄なことだろう。崖であることを忘れて、沢を右から左へ、熊を引く行列の前から後ろへ、縦横無尽に走り回って写真を撮りまくった。30分ほどで300枚程撮ったのか。下山して大分消去したけど、それでもまだ200枚以上は運び出しだけで写真がある。
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運び出しは本当、大変だ。先頭はタツさん。よりよいルートを決めながら引っ張っていかないといけないので大変だ。途中、何度も(わざと)沢に落としたりしながらも、急斜面を難なくクリアして順調に運び出して行く。
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運び出しの方法には、こういう風に皆で地面を引っ張って行く方法と、手足に棒を入れて「駕篭」みたいにして(タツさんは神輿といっていた)運び出す方法、そして、背負って山を降りる方法がある。水上の昔話を読んでいると、昔の人は背負って山を下りたそうだが、タツさんに聞くと、最近では、それをすると「熊が歩いている!」って間違われて撃たれてしまうことがあるそうで、あまりやらない方が良いらしい。
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「じゃ、熊にオレンジのベスト着せて背負ったらどうですか?」
「あはは、それ、面白い」
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基本的に人数が多いときは、引きずっておろすみたいだ。どうやっても引きずれない、断崖とかだと神輿にする様だが。
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「今回は随分マシですよ。俺が大グマ仕留めた時なんて、ずっと断崖続きな山なもんで、”それ!熊神輿だ!”なんて運び始めたのはいいんだけど、ものすごく道から遠くてね。。。足場は悪いし、そのうち真っ暗になってくるし、そりゃあもう大変でした」
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写真を撮るのに必死で、あまり注意していなかったのだけど、あれだけ晴れていた空から、雨が降って来た。
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「岡居君ね、熊を殺すと雨が降るって聞いた事ある?あれ、本当なんだよ」
と、小野さんがニコニコしながら僕に教えてくれた。
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30分ほどで下山。広場の様なところで、車に乗せる前に一服する。

何人かが顔を曇らせて、

「実はさあ、最初に撃ったXさんが下山してねえんだよ。無線を入れても通じなくて。今、携帯を入れてみたんだけど、まったく通じねえのさ」
「・・・・・・・・・・・・」
「いつから連絡とれねんだ?」
「最初に撃った時よ。それ以来全然駄目でさ」

沢を落ちる時に巻き込まれたのか?それとも逆襲にあったのか?皆の胸に暗いものが走ったその時、

「もしもし〜!?状況どうなってますか〜!?」

無線が入る。

「え?Xさん、なにしてたの?今、運び出したよ!」
「え?いや、待機しとけって言われたから。。。で、そのあと、どうも無線が周波数変わってたみたいで。。。。何度呼びかけても応答無いから、どうすべっていいながら待ってたんだよ。。。今どこ?」

数10分後、Xさんも無事合流。記念写真を全員で撮る。雨が強くなって来た。
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「最初、ぬっと現れたんだよ。うわ!来た!熊だ!って、そりゃあもう心臓が口から飛び出そうになって、生きた心地しなかったんだけど、そしたらまっすぐ来ていた熊が右方向を向いてケツ向けたもんだからね、逃げられる〜!ってんでド〜ンっと撃ったんだよ。そしたらケツにあたったみたいで、笹薮の中にもぐっていって。で、こっちをじっと見てて。それでもう一発撃ったんだけど、それは枝に当たってしまって外れて。。。そうこうしてるまに逃げちまって」
「まあ、全員無事で良かった。それじゃあね、あとで全員うちに集ってね。解体するから」

気付いたら、バーヴァーを着ていたお陰で雨にはまったく濡れてなかったものの、結露した服の中は汗でビチョビチョだった。
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〜「解体」へ続く〜
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by oglala-beads | 2007-11-25 12:23 | 2007年・水上(群馬)初猟

猟の話〜その6〜

第二ラウンド

勢子の配置につく。沢伝いに上がって行く様だ。タツさんと、顔は恐いがとても良い人そうなキー坊さんが同行だ。おそらく途中から別れて尾根に向かうのだろう。
割合ほんわかムードで、冗談を言いながら沢沿いの林道へ入って行く。
入ってすぐ、獲物を前に回す為に「トド玉(北海道で、アザラシを驚かせて追い払う為の爆弾。)」を爆発させる。トド玉は、トドの駆除にも使われるそうで、大きく口を開けた時に放り込んでドカンとやるらしい。あの巨体のトドを一撃で殺してしまうほどだから、その破壊力は強烈で、火器に慣れているタツさん達ハンターでも、「ヒロさん、離れていた方がいいよ。俺、耳ふさいじゃう」っていうぐらいのものだ。下手に近くに居ると、爆発の衝撃で石なんかが飛んで来るらしい。
「なにほどのことや、あらん」と(まあ実際は怖々ではあったのだけど)キー坊さんが火をつけて10秒の間に逃げて来ている時、余裕でカメラを構えていたのだけど、そのあまりに凄まじい炸裂音に、後にタツさんが「ヒロさん、吹っ飛んでた(笑)」っていうぐらい、横っ飛びに吹っ飛んだ。シャッターを押したかどうかすら分からない程吹っ飛んだんだけど、確認したら、恐らく衝撃でだとは思うが、ちゃんとシャッターは降りていた。やっぱり、すごい横にブレているけど(笑)
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その後もほんわかムードで上がって行く。
「こんなんでいいのかな(笑)?そろそろ声だして行きますか」
で、声を出して行く。
僕はちょっとほんわかムードを引きずってしまって、声を出し始めるタイミングを逃してしまった。
一度タイミングを逃してしまうと、どうもなかなか声が出ない。二人の声が途切れた時に声を出そうと思うのだが、妙な恥ずかしさの様なものー普段大声を出す事が無いので、妙な声が出たら恥ずかしい等ーを感じてしまって、もうそう思ってしまうと全然駄目で、まったく声が出なくなってしまった。
頭の中では、そんなことを言ってられる状況では無い事を百も承知なんだけど、一度尻込みしてしまうと、本当にまったく声が出なかった。
「あー、俺は駄目だあ・・・・」
そんな自分が悔しくて、泣きたい程、腹が立って、キー坊さんとタツさんが途中で勢子鉄砲を撃ったのに、それを写真に収める事も忘れて呆然としてしまっていた。
「一人一人に別れたら、絶対に声を出す!俺なんか、発声してたんだから、負けない位、でかい声だしてやる!」と心に誓うんだけど、自分が惨めで仕方なかった。

20歳になったばかりの頃、あるオーディションに合格して、ミュージシャンになるために上京した。作曲・編曲とリミックスの腕を認められての事だった。しかし、もともと声が悪かったので、正直、歌には全然自信が無かった。そこで、なんとか歌を歌う事だけは避ける様にしていたんだけど、折からのシンガーソングライターブームで、それを避ける事が難しい状況になって来た。歌うか、諦めるか。それでやるだけやってみようということになり、1年間ボイストレーニングを積んだ。それでクラッシックのオペラを歌う為の基本ぐらい、もしくは舞台俳優ぐらいは通る声が出せる様になった。しかし元々の悪声は治るよしもなく、ハーブだのアーユルベーダーだのと色々と試したが、結局挫折し、非常に多くの人達に迷惑をかけてミュージシャンを諦めて逃げ帰って来た。
僕は、元々、自分が嫌になる位、臆病で卑怯な性格で、面と向かって逃げなくなったのは最近の事だと思う。「俺、最近、ちょっと格好良くなってきたんじゃないか?」なんて思うところもあったのだけど、なんだ、こんな大事な時に声が出ないじゃないか!

自己嫌悪で吐き気を催しながら、自分ひとりで左の山を見ていた。タツさん達は今から追い上がる右の山に注意を向けていた。上手く説明出来ないけど、自分嫌さで皆と違うところを見ていたのかもしれない。
キー坊さんが左のカーブの真ん中にさしかかる少し手前を歩いていた時、そのカーブの向こう側で、60〜80センチ位、真っ黒な犬の様なものが僕の見ていた左の斜面を、ものすごいスピードで駆け下りて来た様に見えた。このカーブの真ん中辺りには大きな樹があり、また、斜面は道辺りで突然切れる為に崖状になっていて、キー坊さんからは見えない場所だ。タツさんは右の斜面あたりにある樹の切れ目あたりの痕跡を見ている。

『まさかね、見間違いだよね。タツさんが気付かないものを、俺なんかが気付くはずないし』
と、自己嫌悪をいつまでもしつこく引きずっていたのもあって、報告はしないでいた。
そして、そのカーブを越えた時、タツさんが声をあげた。

「熊だ。相当新しい足跡だよ。この崖を途中までこうやって降りて、後は飛んでいる」
と、確かにまだ落ち葉が積もっていない足跡を見つけて言った。それはさっき、僕が黒い何かを見た場所だった。
「行ったのか?だとすると、この右の斜面を登ったのか・・・・」
「・・・あの・・・・実は、さっき・・・・・」
タツさんに説明していた時、

・・・・・ター・・・・・・ォォォォォォォゥォター・・・・・・・ォォォォォォ・・・・・・・

タツメの鉄砲の音が響いた。
3人で顔を見合わせる。

「ありゃあ、勢子じゃあねえな」

無線が聞こえ始めるが、切れ切れだ。しかし、切れ切れながらも妙に緊迫した空気なのはハッキリと分かる。

「ブタかあ?」

切れ切れの無線の中で、ハッキリと、

「熊」

と聞こえた。キー坊さんとタツさんにも緊張が走る。

「この無線の感じだと、まだ仕留めてない。キー坊さん、弾、入れといた方がいい」
と、タツさんがゆっくりとスラッグ(散弾銃の弾で散弾では無く単発弾。大物狙い用)を詰める。

「この足跡の主だとしたら、相当でかい。半矢なら大変だ」
タツさんの背中から強烈な殺気が流れ、周囲に慎重に目を配ったその時、

ター・・・・ター・・・・・・ぉぉぉぉぉぉぉ・・・・・・・ター・・・・・・ォォォォォ

「おいおい、結構鳴ったぜ?戦争してんのか!?」

ほどなく、無線から沢を転がったこと、とめたことを確認した事が聞こえて来た。

「おーし!やったあ!!」

*この時の事は、「猟の話〜その1〜」に詳しく書いてあります。
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by oglala-beads | 2007-11-24 10:56 | 2007年・水上(群馬)初猟

猟の話〜その5〜

第二ラウンドの猟場を決めるのは、かなり紛糾した。
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30分はもめて、ようやくタツさんが前夜に推していた場所に決定した。
よく分からないながらも、漏れ聞こえて来る話を聞く限り、どうもその場所は今までみんなノーマークに近い状態だった様だ。

作戦を立てる為に、ちょっと休憩を置いて、再び一カ所に集る事になった。

休憩の途中、近所に用事があったのもあって、タツさんが気をきかせて、古民具を集めた収蔵館の様なところに連れて行ってくれた。
収蔵館自体が古民家で茅葺きだ。中には囲炉裏があったり、昔に使われていたであろう道具の数々がところ狭しと並べられている。看板には、「貴重で高価な骨董品よりも、ちょっと前まで、こういうものを使って生活していた、そうした民俗的な、消えつつあるものを展示しています」という趣旨の事が書いてある。
こういう民具を見ると、僕なんかは「あ〜、懐かしい」という気分でも、ほっとするという気分でも無く、なんというか、むしろ重苦しい、むっとしたむせ返る様な息苦しさを感じる。実際に使用されていた民具ということもあるのだろう。
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水上は現在ではかなり豊かな町の様に思う。スキー場は有名だし、先に述べた一の倉沢等の登山のメッカでもある。温泉もあるし、今回お土産にも買ったリンゴは本当に驚くぐらいに甘くて美味しい。観光産業が盛んで自然の幸に富んでいる。おまけに交通の便が良く、東京からは新幹線一本で来れるし、高速も水上出口というものまである。
しかし、タツさんに頂いた水上の昔話などを読んでいると、先人達・・・といってもその方達はまだ御在命だ・・・は相当苦労された様だ。皆、冬でもシャツ一枚といった薄着で、まだ小さいうちから身を粉にして働き詰めに働いて、でもそれでも喰えずにいた様子が痛い程、文面から伺える。僕なんぞは一人で苦労している気になっているけど、その本を読む度に我が身が恥ずかしくなって来る。
要は、本来、水上の様な山野の幸に恵まれた場所というのは、裏返せば厳しい自然の懐ということになり、人を拒絶するギリギリのラインであったのだろう。
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熊狩りというと、秋田界隈のマタギが有名で、僕もタツさんのことを「マタギ」として何度も紹介しているが、実際、マタギは秋田周辺のものであって、水上の熊の巻き狩りとはまた、全然違った文化だ。しかし、マタギというと、一般的には「群馬の猟師」というよりは通りが良く、そのこともあって、水上の熊ハンターをもマタギとくくってしまうこともあると思う。
しかし、中に入って見ると、水上には水上の、マタギには負けない精神的風土がある。僕は今回タツさんについて彼らと行動を共にして、水上の熊猟師は、マタギではなく、「水上の熊猟師」として世界に誇るべきものがあると思った。それは、本当に我々に近い先人達〜祖父ぐらいの代〜までが苦労に苦労を重ねて編み出した知恵なのだ。
だから、これから彼らについて聞かれたら、「水上の熊猟師だよ。マタギも素晴らしいけど、彼らも素晴らしいよ!」と答えようと思う。

ともかく、先人達の苦労の息吹が染み込んだ民具が、無言で己の人生を問いかけて来る様な気分に襲われる。
「入っていいんだよ」とタツさんに促されたのだが、そういう感覚もあって、入り口で押し返されてしまった。展示の方法が、こういった山里の茅葺きで、非常にリアルだったこともあるだろう。

タツさんは、一緒に居て、驚くぐらい、町のお年寄り達と仲がいい。それは若者としてお年寄り達とお付き合いしているというよりは、お年寄り達の方がタツさんを若者として見ていない様な、なんだか、にわかには信じられない様な近さ、親しさだ。想像しにくいと思うけど、そうだな、例えば、道で、お年寄り同士がばったり会った時の立ち話。それの片一方がタツさん、っていうような感じの自然さ。
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その民芸館の番をしてらしたのは、おばあさんというには早い位の年齢のおばさんだったのだが(正直、水上の人はシワが少なくて肌が奇麗なので、実年齢はさっぱり不明)、タツさんと親しく話を始め(もともとかなり親しい知り合いらしいのだけど)、
「ちょっとイタズラしてたんだよ。喰うかね?」
といって、柚酢(?)で漬けた正護院大根を出して来てくれた。
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これがね〜、もう本当、すんごい美味しくて。。。。。
身体を動かした後のせいもあるのかもしれないけど、本当、なんでこんなに美味いの?ってぐらいに美味かった。僕は酢が本来苦手なんだけどね(笑)。
これに限らず、今回の旅行で食べた大根系のおつけものは全てが最高に美味かった。まず、タツさんの、確か「パワフル漬け」だったかな?それでこの分でしょう、で、最後にタツさんの知り合いの剥製屋さんで頂いた沢庵。漬け物好きの配偶者なんぞを連れて行った日には、恐らく定住することになるんじゃないかな?
なんでしょうか?やっぱり気温等、美味しい漬け物を漬けるのに合ってるんですかね?悔しいけど、京都の錦市場で食べられる漬け物より余程美味しいです。漬け物食べに行くだけでも、水上に行く価値はある。

民芸館のおばさんの薄着に軽く驚き、酢の爽やかさに癒され、水上の水で入れたお茶を呑んでいると、身体が洗われて来るのを感じる。妙に清潔になった気がする。遠くには雪を頂いた谷川岳。杉が少ないお陰で、山全体が燃える様な錦。若干曇って来て、鉛色の低い雲(本来通常の高さの雲なのだけど、見ているこちらの標高が高いので)がたちこめているのだけど、濁った色でなく、澄んだ鉛色で、雪を待つ残り少ない柿の熟した実が寒空に揺れる様が、心に何かを訴えかけて来る。
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妙にじっとしていられなくて、そこらを歩きまわった。

「じゃあ、そろそろ行きましょうか。集合時間が近くなった」
「じゃあ、ありがとうね。ごちそうさま」

車に乗り込み、第二ラウンドの集合場所へ。
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第二ラウンドの場所は範囲が狭くて短時間決戦だそうだが、勢子にとってはキツイ場所なのだそうだ。また、獲物を置いていきがちになる(勢子の目を逃れて隠れる場所が多い?)、勢子の実力が問われる場所の様だ。
第二ラウンドはタツさんと共に、勢子サイドから猟を見る。
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by oglala-beads | 2007-11-23 10:27 | 2007年・水上(群馬)初猟