カテゴリ:狩猟関連( 6 )

見切り

 ここ数回の記事に関して、多くの方から激励のメールを頂きました。誠に有り難うございます。
 自分自身の葛藤であり、しかもその焦点は絶えず移り変わっているので、なかなか連帯感を持つ事が出来ず、言葉面だけのお礼のメールを送る気になれません。お気持ちは心から感謝いたしております。誠に勝手ですが、どうか見守って頂けたらと思います。
 それにしても、なかなか仕事には結びついていませんね(笑)。仕事の為の猟なので、これで仕事の依頼が増えてくれると嬉しいのですが。



 今週は単独で山に入って来ました。
 兵庫での猟は犬を使うのが常識ですが、私は犬を使う猟に抵抗感があります。師匠のタツさんの様に、獲物の心を読む猟が目標です。しかし、こちらでは「今日、この山やろか」で犬を適当に入れても鹿が獲れてしまう。先輩の経験と犬の能力に頼り切りで、間違うと何も考えなくなってしまう。そこで誰かが情報をくれる事を待つのでは無く、自分で納得出来る行動をとる事にしました。
 こちらの山には暗黙の縄張りがあり、外部者が入ると色々と面倒な事もあります。そこで単独でも猟隊の山に入るのですが、盲滅法に入って獲物を散らすと隊に迷惑がかかるので、事前に大体の山を申告しておきました。
 今回は実際に獲物を獲る事が目的では無く、山を覚える事、獲物の痕跡を探して彼らの生活を知る事、そして余力があれば先回りをして彼らに出会ってみる事が目標でした。なので事前に師匠に相談した際に、
「今回は猟具を置いて行こうと思うんですけど。むしろカメラもって行こうかな」
「いや、猟具は持って入った方が良い。こちらが発する気が変わってしまうから」
というやりとりがありました。

 一昨年、師匠に教えてもらった跡の見方、そして前日に獲物の大体の行動パターンを聞いて、予測をつけて山に入りました。
 結果としては、山を歩く為の安全面で多くの課題を残しましたが(崖で滑落して腰を強打したりしました)、イノシシを2度、鹿を1度、共に偶然では無く必然的に射程距離で観察する事が出来ました。鹿は子鹿で触る事の出来る位の距離でしたが、必死の様子が可笑しくて可笑しくて「撃たへんから、はよ逃げぇや(笑)」と逃がしました。
 他にも、イノシシの場所、鹿の場所、そして混在している場所の各ポイントが空気だけで分かる様になった事、師匠が予測した「多分こういう場所に居る」というのが非常に正確で笑ってしまったこと、そのお陰で予測が出来る様になったこと、数多くの痕跡を見、その新旧を判別して予測し、獲物の先回りが実際に出来た事等、たった一日ながら数多くの成果がありました。
 また、これは私にとってだけなのか他の人にとってもなのか分かりませんが、午前中、しかも出来るだけ早い時間の方が山の空気が怖く無い事も分かりました。
 昼前に下山し、それからは午前中得た知識で居そうな場所を特定し、自分の予測が正しいかどうかの答え合わせをする為に痕跡を探しました。次週は猟隊の集合時間前に夜明け前から、今回目星をつけた場所に張り込んで、時間と場所との予測が出来る様になれたらと考えています。


 先週はとても難しくて、なかなか手をつける事が出来なかったオーダーを仕上げる事が出来て、ほっとしました。また近いうちに作業日誌に掲載出来ればと考えています。商品は時計バンドなのですが、Gショックに合わせたいという事で・・・普通なら断るオーダーなのですが、是非にと押し切られ・・・まあ作業日誌で楽しみにしていて下さい。
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by oglala-beads | 2009-01-26 19:04 | 狩猟関連

葛藤

300メートル程の崖をよじ登る。振り向くと転がり落ちそうだ。今年一番の寒さでも脂汗は止まらない。出掛けに配偶者が「こんな寒い中、しんどい思いしに行って、何が楽しいん?」と呆れ顔だったのを思い出す。
「ハアハア・・・まったくその通りだよ(笑)・・・革だって普通にアメリカのブレインタンナーから輸入した方がよっぽど安いし・・・鞣すなら原皮をくれる人はいくらでも居る・・・ハアハア・・・大体、クロム鞣しの革が悪い訳でもないし・・・おっと危ない、落石だ・・・俺は一体どこに向かおうとしとるんだ?・・・」

ようやく登り切って窪地を見付け、タツメを張る。犬が放たれる。30分程で下から二番目のタツメが火を吹く。5発。しばらく待つが無線が入らない。と3番目のタツメが火を吹く。4発。
「・・・すいません、遠すぎて・・・逃がしました。岡居さん、よろしく」
「了解」

待つ程も無く、4時の方向に程よい大きさの牡鹿が出て来た。身体の割には小さくて妙な形の角だ。距離70ちょっと。前のイノシシより大きいし、いわゆる目をつむっていても当たりそうなものだ。人差し指の腹で安全を解除して指先で引き金を引く。・・・しまった、手前の木に当たった・・・第二弾・・・え?外れた?・・・第三弾・・・手前の崖に潜られる。弾切れ。次の三発を込めて出てくるであろうポイントに身体を向ける・・・出た・・・安全解除、発射・・・え?また外した?・・・鹿が振り向き、立ち止まる。じっとこちらを見ている。今まで見えている時は僕がほとんど動かなかったので僕の位置が分からなかったのだろう。・・・狙って第5弾・・・心臓のすぐ下辺りにあった土塊に着弾したのが見えた・・・瞬間、身を翻して遠ざかった。次に姿が見えたのは300メートルほど先。次のタツメがその界隈に張っているのであきらめる。

「申し訳ない、そっち行きました」
「血ひいてます?」
「確認出来ませんが、おそらくかすってもいません」

何で?俺って初心者離れした腕じゃなかったの?天才じゃなかったの?焦った?いや、充分狙える時間はあった・・・もう、こうなるとまったく当たる気がしない。「あちこちで、おだてられたり驚かれたりヤキモチ焼かれたりして、思い上がってたな」。先週とは違う質の落ち込みだ。

帰り道、車の中で一発一発をジックリと思い出して気付いた。慢心も勿論だけど、心の弱さが原因ではないか。樹にあたったのは除いて、照準越しに見る姿は前回のイノシシよりかなり大きかった。イノシシの時よりも冷静だったし構えもしっかりしていたと思う。ただ、「一発で楽に」の思いが強すぎて狙い過ぎていた。

先週のイノシシは本当にショックだった。水曜あたりまでは悲鳴と腸の色が夢にまで出て来てうなされ続けた。帰還兵みたいに、ふとした拍子に思い出して黙り込んでしまう。でも半分位肉を食べた頃から、徐々に気が楽になってきた。しかしそう簡単には消えなかった様だ。今回は最初から忘れ物だらけで妙だった。鹿が出ても姿がだぶって、腸や肩甲骨に当てない様に、無意識に前の下気味を狙っていた様だ。肩甲骨を狙っていたら誤差を考えても充分仕留められていただろう。でも前足の支えを失って崖を転がり落ちてきたあのイノシシの姿がだぶってしまう。これは僕の病気になるかもしれない。


「・・・で、その鹿は最後どうなったの?」
「ああ、どっち行こうかじっと考えてる時に、犬が追尾しているのを確認して、途端に向きを変えて川に出てん。匂いを消すためにな。で、出て来たところを副会長に仕留められた」
「・・・」
「どうした」
「泣いとるんか?」
「・・・だって・・・」

家族からしても前回の猟はショックだったのだろう。だから頭では分かっていても、現実には葛藤している。命に対してデリケートになっているのが分かる。
家族は僕以上に、一番辛い思いをしていると思う。それでも支えてくれている。猟から帰ったら、温かい笑顔と食事、風呂で迎えてくれる。猟の話はしない方が良いのだろうか。

「そういえば、前回の猟で辛かった話を猟隊でしてんけど、そしたら地元の人達で駆除にも参加している内部の人達には笑い飛ばされた。他の市から来てる外部の人と、あと、若い鈴木君は”わかる、わかる”って熱心に聞いてくれてたわ。地元の人達はそれほど鹿に対して憎しみを感じてるんやろう」
「・・・あんな可愛いのに」
「でもな、俺らからしたら可愛い野良猫も、嫌いな人からしたら憎しみの対象やで」
「・・・私の場合、ネズミがあかんわ」
「俺からしたらネズミは可愛い。自分ちも昔ネズミが沢山出たんやろう?」
「もうすごかったよ!」
「結構えげつない殺し方もしたって言ってたやん?その時に・・・」
「可哀想なんて思わなかった」
「そういう事やと思うねん。前の猟の前に、ブログでも少し書いた川で子鹿を殺した話な、あれ、俺が最後まで見れなかった話を皆にしてん」
「うん」
「そしたら、”今度から頭を殴って気絶させる係は岡居に任せよう”って」
「え〜!!!!」
「いや、段々慣れさせてくれって言ったし、・・・正直慣れたくないし・・・だから俺には罠は無向いてないかもしれん・・・なんせ鈴木君が助け舟出してくれた」
「なんて?」
「そんなの最初からやらせたらトラウマになるって」
「それで落ち着いたみたいなんだけど、そしたら副会長が、”ワシは殴って気絶させてから腹割くけどな、誰々さんなんかは、気絶させんでもええ、そのまま腹割け言うんや。生きて意識あるままや。あれはワシもようせん”言ってた」
「生きたままに意味はあるん?」
「血が楽に抜けるってのはあるやろう。でもな・・・・」
「・・・・」
「ただ、やなあ。繰り返すが、相手がネズミだったら?」
「生きたまま云々は抵抗あるし、殺すところも見たく無い。ただ、それは可哀想だからでは無くて、気持ち悪いから見たくない」
「そういうこっちゃ。俺はネズミでも殺したくない。迷惑受けてない俺からしたら可愛いからな。殺す必要があるなら瞬間で楽にしてやりたい」


昨今、命を喰う(”頂く”と綺麗な言葉を使っているが)事をキチンと捉えようとする風潮があって、それは多分いいことだと思います。ただ、私が今、思うに、頭の中での想像や理想と、現実に自ら決断して手を下す事の間には天と地ほどの大きな隔たりがあると思います。
私は全ての人に体験して欲しいとは思いません。苦手な人は出来る人に任せれば良いと思う。そうやって分業が出来上がっていて社会があるのだから。でも、任せる以上、それが出来る人を後ろ指さすのはいかがなものかと思います。
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by oglala-beads | 2009-01-12 18:05 | 狩猟関連

準備完了

ようやくすべての資格が揃いました。
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今週末から2月末まで、毎土日は出動です。

セキュリティー面を考えて、猟具は常時警察にて保管してもらう事にしました。所轄まで近いし、24時間空いているので実質問題無いし安心です。

ただ、それだと猟具に慣れるのが遅くなりそうなので、本物と全く同じ模造品を購入しました(写真のものは本物)。


現在、納品で追い込まれ中。ただ、あまり急いで作っても面白くないし、色々と思いついてしまったりもして、「本当に追い込まれているのか?」と怒られそうなぐらい、ジックリゆっくりと作っています。でも何とか今週末には各店頭に並べられる様に、頑張ります。


風邪がいつまでも治らないのでおかしいなと思い、珍しく医者に行って来ました。風邪ではなく、アレルギーとの事でした。加齢によるものだそうです(笑)。年が明けると、厄年(前厄)に入ります。気付いたら、もうそんな歳でした。何か良い厄除方法があれば教えて下さいね。
皆さんもお身体お気をつけて下さい。
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by oglala-beads | 2008-12-14 19:08 | 狩猟関連

駄目犬マックと初心者ハンター

追加: 「日曜日に更新が無いけど大丈夫ですか?」と心配メールを頂きました(笑)
すいません、昨日は早朝に出て、解体等で夜遅く帰って来て、すぐに寝たので・・・
基本的に日曜日更新ですが、実はあまり意識したことが無くて、どうもたまたま今まで遅れた事が無かった様ですね。他にも心配された方がいらしたらと思い、追記させて頂きました。
ご心配頂いた方には改めてお礼申し上げます。有難うございます。




今年も初猟を迎えた。
今季の初猟は、本ブログでも度々お名前があがっている吉井さんの猟隊にお邪魔させて頂く予定だった。
ところが先日、車の冷却系統の大修理をして現在は慣らし状態。遠方の吉井さんのフィールドまで行くのは難しい。「今季は初猟無理か」とあきらめていたのだけど、14日にもう一つのH市の猟隊から「16日に初猟に行くから来ないか」と誘いがかかる。「車?じゃあ、H駅まで来たら乗せて行ってやるよ」ということで急遽参加する事になった。

早朝、誰も乗っていない直通特急に、スパイク長靴で乗り込む。途中、配偶者の実家や義兄のマンションの横を過ぎながら、「本当は行って欲しく無い」と昨夜になって言い出した配偶者の顔が浮かぶ。彼女は僕が猟を始める事について、今まで一度も文句を言わず、ただひたすら支えてくれた。猟具は決して安いものでは無いのだけど、「どうせ持つなら事故の無い様に、整備の行き届いた良いのを」と提案してくれた。
猟で心配なのは、勿論第一に、命がけで向かって来る動物が思い浮かぶし、それを覚悟で猟を始めた。命を「ゲーム(標的)」としか見れないハンターが獲った皮を商品に使うのが嫌だと思った時点で、自分にはこうするしか無かった。
しかしそれ以外に、人為的なミスによる事故というのがある。同僚に撃たれたり、逆に撃ったり。それを回避するためには、メンバーとの意思の疎通をスムーズにしておく必要がある。
配偶者のためにも、自分が出来る安全確保だけでなく、対人関係等、色々な所に気を配って事故の無い様にしないと、と思う。

H駅近くに住むNさん宅から、Y町にある猟隊の犬小屋へ。そこで犬を積み込み、山近くの猟小屋へ。前回始めて犬小屋に繋がれた犬達に会った時には、その殺気にひるんだが、外で見る犬達は犬そのもので安心した。

今回の猟は僕を含め8人。犬8匹。僕はマックという黒い犬を任される。ポインター種の様だ。まだ若く山に慣れていないので勝手な動きをするということだ。
確かに縦横無尽に走り回り、山を上がっていてもこちらにはお構い無しの動きをする。でもコロに比べたら本当にマシで、単に大人しい時のコロが力が強くなった様な感じで、しかも頭が良いので、リードを引く力をコントロールしてあげるだけで、山の中腹まで上がった時にはとても言う事を聞く犬になっていた。おまけに僕が気に入ってくれたみたいで、ものすごく甘えてくる。

兵庫の山は低い。が、楽かというとそうでもなくて、まず傾斜がきつい。登りは犬が嫌がる位だ。なによりも倒木が非常に多くて、さらにガレ場の様に石だらけ。そしてその下は粘度質で滑る。僕は他の人とは逆で登りは楽勝で涼しい顔をしていたけど、下りはもう地獄。山で心臓が破れるかと思うぐらいキツかったのは今回が始めてだ。「下りは慣れだよ」と言われたけど、ちょっとこれはなんとかしなければな・・・と思った。

若者組が4頭4人で山の上に上がり、タツメ(射手)を配置し、尾根沿いを回して犬を放し、全員がタツメに入る。僕は本矢場(本命の位置)の後方で見学。というのもまだ猟具の許可が出ていないからだ。

現在兵庫県での許可は非常に難しく、時間も長くかかり、ありとあらゆる審査を受ける。なので、昔からのハンターと今からのハンターとは全く質が違うものだという話を聞く。昔の基準の認識の甘いハンターを排除してゆく方針らしい。だからこの許可が出るということはありとあらゆる面から見ての優良人物、ということらしい。
僕の場合、許可が出ることは間違いないのだけど、年内に出るかどうか。春に申請してまだ出ていない人も居ると聞くので微妙なところだ。

僕なりに色々と理由があって、今日は本矢場は通らないな、と見た。その状態で逃げて来た動物が通るとしたら、ここと、あそこと、そこか・・・と目星をつける。どこにも焦点を合わせなければすべてを同時に見る事が出来る。

しばらく木に化けて待っていると、後ろ30メートルほどを鹿の逃げてゆく気配がした。それが3回。さらに一時間後、目星をつけていた場所の一つ、尾根の前方左の青木辺りに気配を感じた瞬間、2番目の矢場が火を噴いた。牝三頭。一頭を仕留め、残り二頭は当たらず。犬に追われて出たのでは無かった。この時、スラッグを放ったS君は僕より若いけど実猟射撃の名手で謙虚。何となくタツさんとイメージがだぶって、僕が頼りにしている先輩だ。

しばらくしてマックが帰って来る。山に慣れない犬は、動物との闘争よりは散歩感覚で、飽きたら帰って来るのだそうだ。マックは僕の横に来て、チンと座って僕の顔を見ている。頭をなぜてもらいたいみたいで、僕の手に頭をすりつける。それに飽きると尾根を鈴音を鳴らしながら歩き回る。いよいよこれは尾根の本矢場は通らないだろう。

本タツが昼飯を食べ出して、マックがそれをくれとせがんでいる。本タツは見た目がすごくイカツイ人で、喋ってもやっぱり怖いんだけど、どうもとても優しいみたいで、叱りながらもパンをあげていた。その瞬間、やはり目星をつけていたポイントの一つを、鹿が軽い駆け足で駆け上った。相当大きな牡。真っ黒な身体に立派な角。距離は25メートルぐらいか。立ち木が多いが僕のポイントからなら止めれていたと思う。本タツが気付かないのは仕方無いとして、マックが気付いていないのは問題だろう。

終了して引き上げる。途中、S君の仕留めた鹿を回収し、山を降りる。それが本当に大変だった。倒木と岩とで、下ろした時には鹿もボロボロで僕もボロボロ。レインコートは穴だらけだし、まさに心臓が破れる程にきつかった。

今回の猟では犬に追われていない状態の鹿の速度が見れたのが良かった。またマックがとても可愛らしく、なんだか今後も行動を共にしたいなと思った。そして良い猟犬に育てることが出来たらな・・・と思った。一緒に経験を増やして行って、最後はお互いに優秀なハンターになる。ハンターものではないけど、なんだかそんな映画だかドラマだかがあった様な。

マックの匂いがするのか、家に帰ったらコロがどうも機嫌が悪い。とてもすねている。犬を使う猟で一番困るのは、もしかしたらここかもしれない。
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by OGLALA-BEADS | 2008-11-17 09:23 | 狩猟関連

吉井さん宅へ

今週のトピックス

・ウェブサイトが段々形になってきています。これはパソコンアレルギーがあったアシスタントが、簡単作成ツールを使わず、ドリームウィーバーというプロが使っているソフトを泣きながら覚えてやっとここまで漕ぎ着けた・・・という彼女の涙の結晶です。
僕としては、デザイン的に、泥臭くて見やすいモノにしたいので、どんどん変わって行くと思いますが、まあ良かったらブックマークしてやって下さい。ブログへもウェブからだったらとても行きやすいです。
http://oglala-japan.com/

・現在納期ですが、先日まで実質3ヶ月でお知らせしておりましたが、今週より4ヶ月になります。新規店舗数件の初回納品分が入るので、来月よりのオーダーに関しては半年後になる見込みです。

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「吉井さん宅へ」

(今回は非常に長文です。)

マムシ狩り遠征の第一回に行ってきた。神戸でも昔はマムシをよく見たのだが、どういうわけか最近は滅多に見なくなった。もちろん探せばいくらでもいるのだろうけど、以前程、例えば近所の用水路に確実に、ということは無くなった様に思う。もともと数が少ないものを獲ってしまう事もないだろう。どこかで異常発生しているという情報でも入れば、喜んで飛んで行くのだが。

少し前に群馬からタツさんが来た時に、兵庫県中部の和田山で猟師の活動されている吉井あゆみさんに一緒に会いに行って、御厚意で吉井さんの猟犬を連れて現地の山に入らせてもらった事があった。
その際に沢沿いの林道で吉井さんが、
「この林道、夏になると車で無いと上がれないのよ」とおっしゃった。
「あ、マムシですか?」
林道沿いには1メートルぐらいの高さに石積みがしてあって、いかにも出そうな条件だ。
「そうそう。もう、数十メートルっていう範囲にゴロゴロと・・・・」
「それはすごい!圧巻だろうな・・・。それぐらいの時期にマムシ獲りに来ていいですか?」
という話をしていた。

今週、猟以外にも幾多の活動をされている、多忙な吉井さんに、無理を言って時間を作って頂き、いよいよマムシ狩りに行ってきた。
吉井さんと是非お会いしたいと以前から言っていた配偶者に、
「今回は危険だから」
と何度も言ったのだが、
「車で待ってるから」
と言って聞かないので、配偶者とコロも連れて行く事にした。

吉井さんの家の近くの道の駅で待ち合わせ、車で少し走った定食屋に入る。ここは平日はワンコイン定食というのがあるそうで、500円で結構良いメニューなのだそう。普段は旅館も営んでおられるようで、建物自体の造りも、良い木材を使ったしっかりとしたものだった。
配偶者と吉井さんはカツとじ定食、僕は前の晩もトンカツだったにも関わらず、トンカツ定食を頼んだ。家庭料理といった感じでなかなかのものだった。
定食屋で、神戸から和田山までのルートに関して話をしていると、隣の席のオジサンが普通に会話に入ってきて色々と教えてくれた。吉井さんが言うには、この界隈でも、この村はどうしたわけか閉鎖的ではないのだそうだ。店を出た後に出会った電動カートの方もコロに話しかけていた。

「いいですね。この界隈」
「うん。そうでしょう。あ、そうだ。販売してる家は無いと思うけど、貸したいって言ってる人は居たと思うよ。ただね・・・この村には猟師が居ないから、解体とかそういうのに抵抗もあるかもしれない」
「ああ、そうなんですね。でも、閉鎖的でなく、しかも陽の当たりが良くて、ここは本当、魅力的ですね。大きな町からも近いし、神戸や姫路にも行きやすい」
「気に入りました?」
「ええ、和田山って9号線沿いしか知らなかったせいもあるんだろうけど、白茶けた空気のイメージがあったんです。でもここの空気はいいなあ。青というか、少し黄色が混ざってて、緑に近いか。・・・実はね、僕たち、和田山にちょっとした因縁があって、住むとなると相当な覚悟が要ると思うのでどうなるか分からないのですが、もし借家の話でも聞いたら教えて頂けませんか?」
「わかりました。・・・あ、そうだ、アイスクリーム食べません?近くにね、ジャージー牛を飼っていて、自分のところで搾乳してアイスクリームを作ってる店があるのよ」
「食べた〜い」
配偶者とコロが一斉に叫んだ様だ。

田舎道というか、田んぼの中を走っていって、ちょっと農村の集落に入る様な道を曲がると、瀟酒な建物が見えて来る。場所的にそぐわない感じがするのだが、駐車場に車を停めて回りを見渡してみると、違和感が全くない。ちょっと他の集落とは違った趣きを持っている。
「う〜ん、それは多分、ここから離れる人が少ないからじゃないかな。ずっと何世帯にも渡って住んでるから、建て替えをしていて、新しい普請が多いから」

平日だというのに、駐車場には結構入れ替わりで車が数台停まって来る。
「土日なんて、外までずらっと並ぶのよ」

おすすめのジェラートを食べてみる。ミルクの味が良く分かるものを頼んだ。
普通ミルク系のジェラートというと、甘過ぎて駄目な事が多いのだけど、ここのは甘さとサッパリ感が絶妙だった。僕達の次にも若いカップルが来ていたが、恐らく和田山からわざわざ来ているのだろう。それも納得出来る味だ。
配偶者は狂喜乱舞に近く、実家へのお土産にチーズケーキを買い込み、
「吉井さん、ここって、通販出来ませんか!?」
と、かなり興奮していた。

店から出てコロにもアイスを食べさせてあげる。彼はアイスが大好物だ。
「犬って、みんなアイスが好きよね〜」
「あ、そうだ。吉井さんは猟犬飼ってらっしゃるんですよね。どれぐらいの人数・・・というか頭数居るんですか」
「え〜っとね、災害救助犬のブリーディングなんかもしてるのね。だからそっちも入れたら・・・数十匹いるかな」
「それはすごいですね」
「私、もともとは大阪の豊中に住んでた都会っ子なのよ。動物を遠慮なく沢山飼いたくて、探しに探してここを見付けたの」
「ああ、そうだったんですね。猟を中心としてでは無かったんですね」
「じゃあ、次は家に行きましょうか」
「あ、よろしくお願いします」


僕が吉井さんを知ったのは、NHKの、獣害を特集した番組だった。夜にタツさんから「ヒロさん、面白い番組やってるよ」と教えてもらって見たのだ。

兵庫県は獣害の対策としては割合先進的な取り組みをしている様で、野生動物保護管理センターという野生動物と人との共生を探る施設まで設立されたし、猿を追う為のサルポイ犬等も活動している。吉井さんの話では、今後熊ポイ犬も出来るそうだ。
そういった関係で兵庫県での事例が沢山紹介されていて、その中で吉井さんが、その番組の中でキーパーソンというか、非常に重要な役割で紹介されていた。時間にしては数分だったのだが、単に殺すのが趣味といったハンターとは一線を画し、生態系の頂点として食物連鎖を司る、本物の猟師の象徴として、特にその精神性をクローズアップして紹介されていた。
90分程もある番組だったように記憶しているが、その中で特に吉井さんが紹介されていた場面は強烈な印象を残し、言い方をかえれば、吉井さんが出ていなければ、単なる獣害と、それに対する対策について語られた番組でしか無かった。いや、申し訳ないが、言い過ぎとは思わない。吉井さんが出ていた事で、狩猟の精神性というところにまで踏み込んで、狩る事が生態系のために必要で、綺麗事だけではかえって自然を破滅させてしまうという印象を、視聴者に深く残すことに成功していた様に思う。

番組後、タツさんの第一感想はやはり、
「なんだ、群馬あんまり出てなかったなあ。ヒロさん、ごめんね」
だったのだけど(笑)、そのあとはやはり吉井さんの話で持ち切りになった。

タツさんの話では、吉井さんはそのスジでは有名な方で、狩猟界という雑誌でも頻繁にお名前を見る事があるし、執筆もされているのだそうで、名前だけはよく知っていたのだそうだ。

その後、鹿の有効活用に関するシンポジウムが神戸で開かれた際、丹波姫もみじの柳川瀬さんに誘われて、その後の親睦会に参加させて頂いた時、ニホンジカの鞣しに関して数人の方が興味を持たれて話を聞きに来られた。その中の一人が吉井さんだった。
名刺を交換して、お互いにミクシをやっていたこともあり、その後はネット上で色々と相談に乗ってもらったりして連絡をとっていた。

そして今年、タツさんが神戸に来るという事で、皆で会う事が出来た。
吉井さんからしても、熊と対峙し、兵庫よりも何倍も過酷な世界で、東北のマタギにも勝るとも劣らない、命の扱いに関する精神性を有する、真の水上の若きハンターには大きな興味があった様だ。

タツさんがその際に幾度も言っていたのだが、
「それにしても不思議な縁だ。てか、縁ってすごいですよね〜」
本当、その通りだと思う。


吉井さんの家はアイスクリーム屋から、そう遠くない距離だった。若干界隈の民家から離れているので確かに犬の鳴き声もあまり気にならないだろう。
「いやあ、でもね、それでもやっぱり静かな夜とか、気になりますよ」
との事なのだが。

車を停めて敷地に入ると、左側に犬舎が並んでいて、各一区切りのスペースに、コロとは全然違う、筋骨たくましくダイエットされ、アゴの筋肉が発達した猟犬達が8匹ほどか(これは今原稿を書いていて、僕は何匹ぐらいだったか全然思い出せなかったのだけど、配偶者が「手前から何犬、次は何犬」と、ほぼすべて覚えていて驚いた。タツさんが「由紀さんは猟師の才能ある」とよく言ってるのだけど、それは確かかもしれない)。「狩人と犬、最後の旅」のノーマンウィンターの家の前みたいで、かなり嬉しかった。ただ、猟犬は正直かなり恐ろしかった。特に一番奥に居た「イチゴウ(?)」は”おまえ、よけいな事しやがったら、その喉笛を噛み切ってやるぞ”と言ってる様で、吉井さんが家に入って、僕だけで対峙したときは、かなりひるんでしまった。・・・勝てる自信、まったく無しです。

吉井さんの家の前には、その他、豚(ミニブタと言われて飼ったのだそうだが、結構大きかった)、ポーニー、鶏、猫などが居たが、そういう家にありがちな荒廃した感じが無い。知り合いのアメリカの狩猟家達の家の感じにとてもよく似ていた。

家には土間があって、猟師仲間が作ってくれたという薪ストーブがある。かなり広い土間で、その一角にはコンクリがすり鉢状になった場所があり、中央に排水口がある。
「ここでいつも解体されてるんですか?」
「今まではそうだったんだけど、これからは外に今作ってるスペースになるかな」

吉井さんはNPO法人の資格を取得されていて、猟師仲間が獲った鹿等の肉を、出来るだけ一般の人の口に入る様に価格を下げて販売する活動を始めようとされている。外のスペースというのは、その場所の事だ。実際に見せて頂いたが、サッシ等を大工さんに頼んで、あとは自分達でなんとか作っていこうという状態で、まだまだかかりそうだ。
吉井さんの活動に興味をもたれた方で、お時間がある方、協力してもらえると喜ばれるのではないかと思います。僕もそういったことが好きなので、家さえ近ければ・・・と思ってしまう。
また狩猟とかでこちらを訪ねた際には、是非協力させて頂けたら・・・と思います。


さて、家で一服入れて、いよいよマムシの出没スポットへ。

基本的に前に3人で行った林道沿いの沢がある集落を回った。
最初は畑沿いを走る水路の上流で、鹿ネットで区切られている林を探索した。
マムシの生臭い臭いはしないものの、「ああ、いそうだな」という気配がぷんぷんする。
道幅が1メートルを少し越す程で狭いので、横からいきなり飛んで来られたら、ちょっと危ない。
また、地面自体がマムシの保護色をとけ込ましてしまう様な状態に、杉の枯れ葉や枯れ枝等が散乱しているので、緊張感は高かった。


僕は小学生の頃は毎日外で生き物を追いかけていた。
5年生の頃、ヒキガエルに興味を持って、毎日自転車で20分の距離の山の林の中にある用水路に通っていた。
その際、ヒキガエルよりはマムシに会う事の方が多かったものだ。
怖さを知らないということは恐ろしいもので、当時は素手で捕まえて、振り回して遊んでいた。友達同士でマムシを捕まえて、戦争ごっこといって、投げ合っていた事もあった。

さすがに今はマムシの怖さを知っているので、準備は万端にしておいた。
服装はもちろん、獲ってからの準備も万端にした。

当日の服装は、15オンスほどある生地を二枚以上重ねて作られているカーゴパンツに、薄い靴下と作業靴用の分厚い靴下を重ねて履いた上にミツウマの長靴。上はTシャツにネルシャツ。雨を想定してL.L.BEANのストームチェイサーの黄色を持参した。それにウィンチェスターのオイルキャップを被る。手袋は日出手袋工業の細密作業軍手の上に、突き刺しに強いラバー手袋。
マムシの動きを封じ込める為の棒は、家の近くで切り出して、先端をササラ状に割った竹。首を落とす為の鉈は、猟をするために最近買った剣鉈と、先の尖っていない鉈のうち、現場を見てどちらかを使う。一応、細かい動きが出来る様に刃渡り10センチほどで、カミソリの様にキンキンに研ぎ上げたナイフをベルトにつける。

また、ここがインディアン関係者なのだが、山から何かを持ってかえる時のために、ポケットにはタバコの葉を忍ばせた。
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ぱっと見、そうは見えないにしても、重装備の僕に対して、吉井さんは長靴こそ履いているものの軽装でちょっと恥ずかしくなる。そういえばタツさんも、ちょっと山に入る時はサンダルだって言ってた。まあさすがにマムシ獲りの時はサンダルでは無いだろうけど。

マムシが確かに居そうな気配があるのだけど、湿度と気温が上がり切っていない様で、結果的にマムシを見付ける事は出来なかった。その後も前に行った沢を上がってみたのだが、発見出来ず。
折角マムシ笛を作って呼び寄せようと思っていたのに、間抜けなことに、一番肝心なマムシ笛を持ってくるのを忘れてしまっていた。

まあ、リベンジせよとの事なのだろう。楽しみは長い方がいい。
それに、今回は実際に獲ることよりも重要なものを手に入れられたのだ。
それは、自分が狩人になるための第一歩とでもいえば良いのか。

今回のマムシとりの前夜、準備を整えて風呂に入っている時、ふと「俺は何故、マムシを殺すんだろう?」という疑問が湧き上がってきた。マムシの粉なら、自分で手を下さずとも購入する事も出来るし、その伝手を頼ると、おそらく皮も手に入るのではなかろうか。それでも自分で狩るのは何故?
そんなことを疑問に感じ出して、気が重くなってきた。

こちらは万全の準備をして彼らのフィールドに侵入する。そして一方的に殺戮を繰り広げる・・・・一方的?いや、それは違うな。彼らだって黙って殺される訳ではない。むしろ油断をすると、こちらが命を落とす事だって、あり得る。
そうだ、これは、こちらから仕掛けるものではあるが、命がけの戦いだ。命のやり取りを明日はマムシとするのだ。俺は必要だからマムシを殺して、皮をなめして身を薬にする。マムシは生存をかけて侵入者を倒しにくる。

異様に心が高揚してゆくのを感じた。「血」というのか、自分の中の本能に火がついたのか、熱いものが膨らんでゆくのを感じた。

風呂から上がり、タオルで身体を拭きながら、今後もう、自分が他の生き物の命を奪う事を、下手に正当化したり、その理由を探すのをやめようと思った。
理屈以上のものがあって、自分は今、狩人になろうとしている。

当日、車に乗り込んで出発する自分の勢いに、昨シーズン参加させていただいた水上の初猟の際の、地元のハンター達の鬼神の様な勢いを思い出さずにはいられず、密かに苦笑してしまった。この時点でもう、自分は獲れた獲れなかったに関係なく、大切な一歩を手にしたのだと分かっていた。


タツさんにしても、日記で狩猟関係の事が続くと、嫌な顔をする人も多いと言っていた。ただ、色々な考えをする人がいるから、あえてそういう人に反論をしようとは思わないと言っていた。分かってもらう必要は無いと。
しかし、それでもタツさんが一生懸命自分の経験をブログ等にしたためてくれるのは、やはり分かって欲しいからなのだと思う。そして、それはどう考えても人から理解出来ない事ではなく、ちょっと考えたら皆が理解出来る事だから、余計なのだと思う。

先日、タツさんから夜に、
「ヒロさん、雀の雛が温泉の横に落ちてて、濡れてるんだけど、どうしよう?」
とかなり慌てて電話があった。
「水のかからない所に置いてほっとけ」
というのが僕の最初の答えだったのだけど、タツさんがなんとかして助けたいと強く思っていた様だったので、
「まず乾かして、身体が冷えない様に保温して下さい。そして明日の朝、多分雛のいた辺りで親鳥が鳴いていると思うので、返してやって下さい。今は巣立ちの練習中なので落ちる事はよくあるんです」
とアドバイスしたことがあった。
結局次の朝、無事に親鳥の元に帰せたらしいんだけど、その時にタツさんが、
「ね、普段は命を奪う側なんだけど」
と言った。
その時、近くに居たら、タツさんにハイタッチしてにっこり笑いたかった。

今回も吉井さんが、
「命に関して考える授業なんかもしてるんだけどね。よくあるのが、生き物の命を奪うのはかわいそうっていうこと。そんな時に”でもね、そういって批判するのは、とっても卑怯なことなんだよ。だれかに殺してもらって、それを食べているんでしょう?あなたは誰かに罪を押し付けているんだよ”って言うの。パックになって売られている肉の姿からは命が想像しにくいから」
と仰っていた。

自分はそこから革の鞣しをスタートした。ウジがわいたり、臭いがしたり、血や肉を見たり。そういった仕事は絶対嫌だと思った。でも、そういう汚い仕事を人にやらせて、一番綺麗なところだけ得ようとしている。
そんな自分に気付いた時から、鞣しをせずにはいられなかった。そしてそれが出来る様になったものの、タツさんにずっと「次」を突きつけられていた。言葉にはしていないものの、そう、
「ヒロさん、まだ、きれいごとで済ましてることがあるよ」と。

タツさんがそれを匂わせるだけではっきりとは言わなかったのは、きっともう既に僕が気付いているし、遅かれ早かれ、僕が覚悟を決める事が分かっていたからだと思う。


今、自分には覚悟がある。それが「鞣しを自分でやる!」と決めた時と同じもので、揺るがないのも自分で分かっている。その覚悟、それを今回手に入れる事が出来たのだ。

また、実はこれが非常に大きかったのだが、吉井さんに色々と実際の狩りの部分、つまり「神戸に住んでいて狩りをおこなうことが可能か」という部分について色々とアドバイスを頂き、問題をすべて解決することが出来た。

マムシはもうすこし不快指数が上がってからまたリベンジしたいと思う。


帰り際、少し寄り道をして「糸井の大カツラ」という樹齢2000年の巨木を見に行った。
あまりにすごすぎて、なかなか直視出来ないぐらいに神々しい木だった。
しかし、どこか人懐っこいというか、寂しがりやさんの木の様な感じがして、
「また来ますので」
と約束して帰ってきた。
約束は果たさなければ。


最後に吉井さんの家にもう一度寄る前、ピアノのおけいこが終わる時間のおじょうさんを迎えに行く。
驚く程礼儀正しいおじょうさんで、しかも僕が「ん〜、これなんだろう?トビかな?クマタカにしてはバレルが不鮮明だけど・・・」と悩んでいた羽根を、見るなり「あ、これ、トビ」と有無を言わさなかった。素晴らしい。またしても尊敬出来る人の年齢層が、しかも今回は一気に広がってしまった。
小学生の女の子に山の事を色々と教わる。彼らの好奇心と注意力は凄い。絶対に面白いと思う。


家に住み着いているという白蛇の抜け殻と鹿肉のブロックをお土産に頂いて恐縮する。鹿肉はジャーキーにしたり、シチューにすることにした。蛇の抜け殻はタンパク質なので、なんとか壊さない様に鞣し剤を入れる方法を考えようと思う。


今回の事に関しては、配偶者(アシスタント)もアシスタント日記に書いていますので、良ければ見に行って下さい。
アシスタント日記へは、ホームページのトップからブログに進んで、アシスタント日記のバナーをクリックして下さい。
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by oglala-beads | 2008-06-22 16:28 | 狩猟関連

タツさんと丹波の山へ

4月1日から3日間、当ブログではお馴染みの、タツさん(群馬県水上温泉の熊猟師で、家族経営の料理旅館の板長。詳しくは横のリンクから”達也の日記”と”蛍雪の宿・尚文”を参照)が来神した。

考えてみたら不思議な縁で、その辺りの事は旧ブログの2006年8月9月頃のを読んで頂くと面白いのだけど、ともかく熊の足の裏の模様のポーチを作る事になって色々と熊について調べて行く過程で、熊と日本の熊ハンターの文化に興味を持ち(ちょうどその頃、理想の革を求めてアメリカ中のブレインタン作家の革を買い漁っていた)、ミクシのマタギのコミュニティーに入ったのが知り合ったキッカケ。
その後、熊の生皮を頂いて自分で鞣したり、自分で使う鹿革も結局自分で鞣すことになったり、水上の去年の初猟に呼んで頂いたり・・・と、少し前なら考えられない世界を体験させて頂いた。

今回の来神は仕事というわけではなく、休みを利用した観光っていうことだったのだけど、
「タツさん、山と街とどっちがいい?」
「山!・・・神戸に来てまでって感じなんだけど(笑)」
ってことで、一日目を神戸観光にして、大丸のオープンカフェでお茶を飲みながら神戸の人間ウォッチをして、六甲山頂から夜景を見た後に有馬温泉で身体を暖め、もっこすでラーメンを食べて家で酒盛りということに。その日は翌日の事もあり早々に就寝。
今回、何故か配偶者のコンパクトデジカメが壊れて、画像がこの調子。おまけに僕の一眼レフのレンズも一本故障してしまった。
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ところで、新神戸駅でピックアップしたんだけど、暑がりとは聞いていたけど、なんと短パンTシャツで現れて笑ってしまった。大丸のカフェでは横のおばさんにずっと見られているし、街を歩いていても、注目の的だった。
有馬の金泉に入っても、二人でずっと獲物の習性の話をしていて、多分他の客からしたら気味が悪かったと思う。しかもその声、隣の女湯まで聞こえていたらしい。

我が家の、しばらく研いでない包丁で、持参の肉を切ってくれる。これは水上の鹿の外ロースで、「特上に美味いから食べてもらおうと思って持って来た」という逸品。そしてタツさんお手製の生ハム。それにしても切り方次第で味って変わるものだ
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コロまでご相伴にあずかる
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二日目はいよいよ山へ。午前中、丹波姫もみじさんに向かう。運が良ければ鹿の解体が見れるはずだったのだけど、残念ながら午前の鹿の入荷は無し。タツさんに皮と肉の両方に傷をつけない解体方法を実演してもらいたかったのだけど、果たせなかった。でも、偶然一緒になった「先生」と呼ばれているお客さんに、猟に関する面白い話を沢山聞かせてもらえて本当に面白かった。僕はその中のマムシの話が特に面白かって、今年は絶対にマムシを捕りに行こうと思った。

午後になって、和田山で活動されているハンターの女性、吉井さんに案内を頼んで丹波の山へ入る。
吉井さんはテレビに出演されていたり、そのスジの機関誌なんかに文章を書かれていたりと、その世界では有名な方なんだけど、ゲームハンターではなく、自然の調和を保つ猟師さんで、思想的にとても尊敬出来る方だ。また、ヒーラーとしての顔も持って活動に励まれている(詳しくはこちらまで)。丹波鹿の有効活用のシンポジウムでお会いして名刺を頂き、以来メールを折々に交わしていた。
また、NPO法人を運営し、非常に面白い活動をされていて、僕個人的に今後をとても楽しみにしている。

まずは林道が高くまで続いている山に車で登り、周りを見渡して山の状況の説明を受けながらお弁当を頂く。
ふと気付くと、そこいらじゅうに鹿の糞が落ちている。風向きによって、どこからともなく鹿の匂いが漂って来る。

そこで聞いた話には興味深いものが沢山あった。
兵庫ではツキノワグマが凶暴化していて、子鹿を襲って補食していること。
スラッグ弾が至近距離なのに通らずに頭骨で止まってしまう強靭な猪が多い話。
ゲーム感覚ではなく、自然と真摯に向き合って、責任感をもって猟に入っている方の話は本当に面白い。なんて言うんだろう、手触りが良いというか、嘘が無いというか。
こういう手触りは、テレビや雑誌やネットなんかで得られるものではないだろう。
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食事後、山を下りて、今度は歩いて再び山に入る事になった。
熊と出くわさない様にというので吉井さんが連れていた「足元犬」に、どうせだったら鹿を追い出させて、程よい矢場でタツさんと僕とがおいたてられた鹿を待つ事にしようじゃないかということになった。

山へはスパイク付きの長靴を履く。そしてマダニが沢山出るということなので、ズボンに殺虫剤を振りかけておく。
吉井さんはよく着込まれたウールシャツ。タツさんは尚文トレーナー。僕はネルシャツという出で立ち。下は3人とも綿の迷彩だった。
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山自体は傾斜がかなり急だけど、高さが無いので登るの自体は楽だった。しかし粘土質のせいで、スパイクを履いていても踏ん張りが利かなくてずるずるとすべって難儀した。
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途中、何度も濃厚な鹿の匂いがして、糞も至る所で・・・というより、糞を踏まない様にして歩く方が難しい程だった。
これだけの量の鹿が、よくこんな狭い範囲で暮らしていけているものだ。完全に飽和状態なのだろう。それにまつわる鹿の習性の、不思議な話を吉井さんに教えてもらった。
本当に、人間が猟師として入って間引かないと、鹿どころかすべての動物の生存が危うくなるだろう。これは矛盾している様に聞こえるかもしれないが、ハンターが居ないと森は荒廃するのだ。
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杉林だが、適度に間引きされているのか、よく手入れされている様で、黒木にしては明るい山だった。
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30分程登って尾根沿いの矢場へ。谷を挟んで向こうを走る鹿がよく見渡せそうな場所だった。
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そこでタツさんが本タツ(本命の矢場)に入り、僕が自ら志願して捨ての方へ。吉井さんと犬が山を別コースで回して下り、勢子を開始する。
ほどなく、吉井さんの勢子声が時折聞こえ始める。

11月の群馬での初猟以来の感覚だ。適当な位置で、動かない様にじっとして目を広く配る。低い山なので短時間決戦だ。これだけ鹿の痕跡があるのだから、ここに入っている可能性は充分あるのだろう。
しかし、残念ながらこの日はこの場所には入っていなかった様で、しばらくして捨ての方の僕の方向から吉井さんと犬の姿を確認し、ほどなく二人の姿が見えてきた。

吉井さん、カッコいい〜
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鹿が見れなかったのは残念だけど、久々の木化けをしながら、緊張感と充足感に満たされた。狩猟民の血が僕の中には流れているのだろう。
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その後、同じコースを辿って下りるのも芸が無いというので、少し山を巻いて、沢沿いをワラビ畑に下りてきた。
沢沿いの林道を下りながら吉井さんが、
「ここね、もう少ししたら、車でないと通れないのよ」
「あ、マムシですか?」
「そうそう」
「歩けないくらいすごいんですか?」
「雨上がりの日に一度上がったんだけど、もう本当、数10センチに一匹っていう勢いで、本当にゾっとしたことがあって」
「え〜、それはまた・・・全部マムシなんですか」
「そう、全部」

それは嫌だなあ・・・でも、今年はマムシを捕まえて焼いて滋養強壮の薬にしようと思っていたので、じゃあ時期になったら何人かで来て(もしもの時の為に一人では危ない)捕獲したいと思った。とりあえず30匹も捕まえたらいいか。

その後、車に戻って、吉井さんのNPOでの活動について色々とお話を聞く。自分が「こういうのがあったらいいな」と思っていた事にピッタリ合致していたので驚いたと同時にとても嬉しかった。吉井さんのご活動については、また日を改めて、キチンと取材させて頂いてご紹介出来ればと思います。

その後、帰宅して酒盛り。海の無い群馬から来たタツさんに気を回して、配偶者がスズキの刺身とメイタガレイの煮付けを出してきた。購入していた灘の酒は、前日のタツさん持参の鹿肉には合わなかったけど、魚には非常に良い具合で、結局途中で酒を追加しに行く。これもタツさん持参の猪のスペアリブと配偶者のお好み焼きを食べながら、結局タツさん一人で一升呑んでしまっていた。前回の初猟の時にはそれほど呑んでなかったので、今回もそれぐらいだろうと思っていたのだけど、いやいや、とんでも無かった。やはり初猟の時はひかえていたのだろう。

3日目は本当は朝に僕がトレーニングで登っている山に一緒に登る予定だったのだけど、変更してギリギリまで寝ていてもらった。配偶者の朝食を頂いて、今度は電車で大阪へ。鶴橋のNALUさんに行く。
NALUさんから、僕がタツさんにもらって着けているツキノワグマの爪のペンダントトップを是非にと頼まれていたのだけど、じゃあまあ直接会ってみて・・・ってことになっていて、それが今回実現した訳だ。
僕自身もNALUの谷井さんなら大丈夫だろう・・・という思いはあったのだけど、やはりというか何と言うか、タツさんも僕が谷井さんに感じている”ある部分”を感じてくれた様で、殊の外気に入られたみたいで、ほっとした。
更には食事をごちそうになりながら、鶴橋の面白い話・・・おばさんが商店街で倒れているんだけど、倒れながら何かを売ってる話だとか、卓球のラケットで「ゴ〜、ストップ、ゴ〜、ストップ」と交通誘導をしているおじさんの話とか・・・さらには短い時間だったけど、食後に実際に鶴橋の商店街を歩いて、「今度は都会に来たいな」と言わしめたぐらい、街自体も気に入ったらしい。


「いや、実際にさ、山を見ておいたらね、ヒロさんが罠をかける時に、俺も少しは良いアドバイスが出来るんじゃないかなと思って」と言って来てくれたタツさん。

今回、吉井さんとタツさんと山に入って、何でかはよく分からないけど、自分が罠猟を始める日は、そう遠くない事を感じた。
自分の地元の山だったせいか、自分が猟に入る事が、上手く言い得ないが、他人事で無い感覚があって、眠っていた感覚の様なものが、疼き、昂り始めているのを感じる。

本当に今、忙しくて時間が無いのだけど、何とか時間を見つけて罠の試験勉強をしたいものだ。理想は、今年罠を取って、来年は空気銃。再来年に銃を取得出来たら嬉しいのだが。

なんてったって、最強の師匠がついてますからね(笑)
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by oglala-beads | 2008-04-06 00:07 | 狩猟関連