カテゴリ:鞣し関連(テン)( 1 )

テンの毛皮なめしの開始

あけましておめでとうございます。
本年もどうかよろしくお願い申し上げます。


大晦日から、大掃除をしながら冷凍庫で眠っていたテンの解凍にかかった。

このテン、今回この雑記に書こうとして、いつ獲れたものだったかを調べてみた。すると2007年3月11日にタツさんから「道で死んでるのを見つけたけど、要る?」と電話がかかってきたことが書いてある。その後、タツさんの手が空いた時に解体をして送って頂き、以来、充分に気候が寒くなるまで冷凍庫で眠っていた。

最初外の日だまりに、下に網を敷いて水分を逃がす様にして置いていたのだけど、一向に溶け始める様子が無いので、匂いがまったく無いのを幸いに、工房に持って入った。
元旦の昼過ぎには完全に溶けたので、そこから足の小骨を外しにかかって毛を洗い、タオルドライの後、ドライヤーで毛を乾かしてバスタオルにくるみ、冷暗所で夜を越させた。
e0114922_15192233.jpg

小骨外しは、やりやすい様にタツさんが、人でいうところの膝から下の骨を残しておいてくれて、切り込みも入れておいてくれたので、骨を掴んで皮をメリメリと引っ張っていくと、簡単に指先近くまで皮を剥ぐ事が出来た。力を入れ過ぎて、一つだけ爪まで剥がしてしまったが、これは後からエポキシで接着が出来るだろう。

随分奇麗な毛皮だったので洗う必要も無いかと思ったのだが、人の顔等に住んでいるニキビダニを大きくした様な長細いダニが固まって死んでいた場所があったので洗った。
しかしながら未処理の毛皮は濡れている時間が長いと微生物による分解で脱毛が始まる。これは気温が高ければ高い程早く始まるのだが、冬だったのと、前に熊をやった時にそれほどシビアにならなくても大丈夫そうだったので、毛はかなり徹底的に乾かしたものの、Borax(ホウ砂)等、他の処理等はやらなかった。
e0114922_15201076.jpg

翌、1月2日、肉面の脂肪や肉を取り去る作業(フレッシング)にかかった。通常、小さな動物の場合、板にクギで打ち付けてナイフで取っていくのだが、鹿で慣れているビームの上で、スクレイパーを使ってやることにした。
最初は下に100円均一等で販売されている滑り止めを敷いたのだが、スクレイパーの力が分散されてしまって上手くいかないため、途中からは外した。
細かいところはさすがにスクレイパーでは難しかったが、それでも30分ほどで通常の鞣しをするのに支障の無いぐらいは奇麗に削ぐ事が出来た。
e0114922_15222663.jpg

厄介だったのは脂で、スクレイパーを押し付けると、皮自体の中からジワっとわき上がって来る様な出方をする。数十秒でスクレイパーに脂が回って使えなくなるので、ビームの横に洗剤を入れた水のバケツを置いておいて、頻繁にスポンジで擦りながらの作業だった。
しかし逆に言うとナイフでのフレッシングと違い、あらかたの脂を皮の中から絞り出してしまえたので、後の行程での脱脂が楽そうだ。
e0114922_1523034.jpg

さて、全体に奇麗に出来た後、この後の作業が楽になる様に、細かい部分のメンブレン等の除去をしていて、ふと気がつくと手に非常に小さな毛がついていた。脱毛が始まったのだ。少しなめて掛かり過ぎた様だ。慌てて塩蔵にかかる。
新聞紙等の上で肉面を上に皮を大きく開いて、その上に塩を厚く盛る。全体に盛れたら肉面と肉面を重ねて折り、次に巻き上げる。そして切れ目を下にして、通常は軽い傾斜の台の上に置いておく。こうやって余分な水分を塩の力で強制的に抜き取ってしまうのだ。2日ほどこの状態で置いておいた後、塩を払い落し、また新しい塩を盛り、同じ様に二日ほど置いておく。そしてまた古い塩を払い、新しい塩を盛る。このプロセスを経た皮は数年放っておいても大丈夫だ。
e0114922_15232828.jpg

塩蔵にはドライ法とウェット法があり、今回使ったのはドライ法だ。ウェット法は文字通り湿気た状態のまま保存する方法だ。ドライ技法は毛皮の製作に適しているのだが、半面ギンを固く締める効果があるので、バックスキンには向かない。
e0114922_1523524.jpg

何故すでにフレッシングが終わった皮を塩蔵にするのかだが、これには二つの訳がある。一つは毛根と表皮を塩で引き締める事で、脱毛が起こりにくくすること。そしてもう一つが、皮のpHを下げる事で鞣し液を浸透しやすくし、ソフトニングの作業を容易にするためだ。
通常、ニュートラル(中和状態)の皮はpHが7.0。理想はこれを6.0にもっていくことだ。僕も鹿のブレインタン(脳漿鞣し)の場合、鞣し液に浸透させる前に、塩では無く酢に漬け込んでpHを落としている。酢は塩に較べるとコントロールは難しいが、その分短時間でpHを下げる事が出来る。


ともかくこれで少しの期間塩蔵にして、脳漿で鞣すか、それともリッテルさんの鞣し剤を使うのかを検討しようと思う。脳漿の場合、かなり温かい温度の鞣し液を使うので、脱毛が心配だが、ソフトニングを何度か繰り返す事が出来る。リッテルさんの鞣し剤の場合、脱毛の心配は無いが、ソフトニングが一発勝負になるので、普段ブレインタンでワーキングを何度かしてからファイナル・ソフトニングにかかる僕としてはちょっと一度のソフトニングで柔らかさに満足出来るか不安だ。
あと、ブレインタンの場合、スモーキングをしないといけないが、この小さな革をどうやってスモーキングするのか、それもちょっと悩む事になりそうだ。
[PR]
by oglala-beads | 2008-01-06 15:24 | 鞣し関連(テン)